12話 元魔王は人助けをするようです
冒険者ギルドを出て数時間が経過した。
あの一件があったからなのか、Sランク冒険者と認定されたからなのか……すれ違う人間に様々な視線を送られるレイ。
(これはやばいな……Sランクってだけでこうなるなんて思わなかったな。早急にこの国から出た方がいいかな)
視線を逸らしながら駆け足で歩く。
と、そうこうしているとナリィの服装を思い出した。
確かフードがあったよな?
きっとここの国以外にもSランク冒険者が現れたという記事は書かれているはず。
だとすれば、このままのこのこと入国するのはやめた方がいいだろう。
そう思い、一つの服屋を通りかかり……その店の中に入っていく。
「いらっしゃい……って、噂のSランク冒険者さんじゃないですか!」
店主がそう声を上げ、レイは慌てるように辺りを見渡す。
生憎とこの店には客がいなかったので安心したレイはそっと胸をなでおろすように溜息を吐く。
「あの、フードがついてる服を買いたいのですが……」
「なるほど……まぁお前さんはここから有名になるだろうからな。おじさんに任せなさい!」
自分の腕をパチンと叩きながら筋肉を見せつけるようにいう店主。レイは苦笑しながら複数枚の服を持ってくる店主を見ていた。
「今うちにおいてあるのはこの四着だ!」
一つは青が主体の服。
二つ目は赤、三つめは白。そして四つ目は黒の服。どれも無地で着やすそうな服装をしていた。
レイは一つの服に指をさしながら店主に聞く。
「この黒色の服って……他の三つと少し違いますか?」
「お、やっぱりSランクにもなるとわかるか?そうなんだよ!これはな、服にもなるし、マントにもなるんだよ!」
「なるほど?」
「信じてないな?まぁみときなよ!」
店主がそう言うと、黒の服を手に取り……バサッと広げた。
すると、先程まで服だったのがマントに変わった。
「ほんとだ……魔力の送り方で形が変わるって事ですか」
「そういうことだ!まぁ俺は魔力量が多いわけじゃないからマントにしか買えられねぇが、お前さんなら様々な形に変えることもできるだろうな!」
こんな便利な服、買わない方がおかしい。
レイはすぐ購入するように手を伸ばすのだが、次の瞬間店主は思いがけない言葉を口にした。
「それ、お前さんにやるよ」
「え、タダでですか?」
「ああ、見てわかる通りうちはおんぼろだ。客もめったに来ねぇ。でもお前さんはSランクなのに来てくれた。これも何かの縁だ。受け取ってくれるとありがたい。」
少し視線を逸らし、頭を掻きながら言う店主を見てレイは最初断ろうとしていた。
でもそれと同時に……断るのも失礼という言葉も過った。
レイは数秒考えるそぶりを見せ、店主に言った。
「わかりました。ではこの服はありがたく貰っておきます。」
「ほんとか!ありがてぇ!」
「その代わりといっては何ですが、何かいい依頼ってないですか?ダンジョン系だと嬉しいのですが……」
レイは少し申し訳なさそうにいい、店主は口元に手を当てながら唸る。
「う~んそうだなぁ……隣の国のダンジョンなら確かあった気がするが、国のお偉いさん方が調査してるって噂もあったなぁ……わりぃな。こんぐらいしか情報はねぇや」
「大丈夫です。ありがとうございます」
そう言って、レイは服屋を出た。
(隣の国って事はここからすぐだから……えっと、ロスカ国か)
フードを被り、街を歩く。
先程より全然視線も感じず楽だ。多少の視線はあれど冒険者の人間だろう。
レイは魔力を抑えるようにしているが、強大すぎて抑えているように思っていても手練れの冒険者たちからしたらすぐに見抜かれてしまうらしい。
こればかりは仕方ない。この体になって十年しか経過していないのだから。
(つっても元魔王だからそういう言い訳はできねぇな)
そうしてレイはアクタビア王国を出て、隣国のロスカ国へと向かう。
◇
その道中、ものすごい数の兵士を目にするレイ。
「なんだあれ……戦争でもするのか?」
疲弊しきっている兵士。鎧もボロボロで装備している剣や盾もかなり傷が入って少しの衝撃で壊れそうだった。
一人の兵士の胸元を見ると、文様のものが入っており……それがロスカ国のものだとすぐにわかったレイは声をかけた。
「大丈夫ですか?」
「ハァ……ハァ……ハァ……大丈夫だ。坊主は下がってな」
レイはその言葉に耳を貸さず、神聖魔法で辺り一帯の兵たちを回復させた。
「……!?なんだこれ」
「力が……みなぎる!?」
「君は……一体……」
レイは少しだけ戸惑うが、こういう時にこそ冒険者ギルドで受け取った証明証を見せるべきだと思い、兵士にそれを見せた。
「……Sランク冒険者!?」
「嘘だろ……こんな子供が!?」
「でも、回復魔術は確かにものすごいものだった。それに、魔力も……」
「あの、よかったらあなたたちを仕切っている人に会わせてもらう事ってできますか?」
「あ、ああ……わかった。ついてきてくれ」
一人の兵士が立ち上がり、レイはその後ろをついていく。
すぐに先頭につき、ボロボロの兵士とは違いピカピカの鎧が目に入る。
こいつがトップだと、すぐにわかった。
そして兵士がトップの人に話しかける。
「ビーネ聖騎士長……あなたに会わせてほしいという冒険者がいらしています」
「お前か……ここに来るときに疲弊している兵士を回復させたという回復魔術師は」
「……そうです」
「なんだ、子供じゃないか」
鎧の兜を外すと、想像していた姿とは違う綺麗な女性が出てきてびっくりするレイ。
「まずは、礼を言う。助かった。それで……私、いや……ロスカ国に何の用かね」
「何か困っているようだったので力になれるかなと……」
「回復しか取り柄のない……いや、違うな。君、一体何者だ?」
「え?」
子供を見るような目から一転。
強者を見る目に変わるビーネ聖騎士長。
ゆっくりと近づき、まじまじと見つめる。
「なるほど……Sランク冒険者か」
「……ッ」
瞬間、レイはこの聖騎士長は強いと確信する。
一切隙のない佇まい。そして洗礼された魔力。かなりの剣術使いだ。
(俺ほどではないけど、マナと魔力が混ざり合おうとしてるな)
Sランク冒険者……といわれた途端レイはすぐにマナと魔力を混合させた魔魂を見せる。
「ほう……そこまでの領域の者か。面白い……手合わせを願いたいが今はそれどころじゃないのが残念だ。」
そう言うと、ビーネは軽く咳払いをしレイに頭を下げる。
「同じSランク冒険者として、君にお願いしたい。このロスカ国を、救ってほしい。」
その願いに少し驚きながらも、レイはすぐ頷いた。
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