Ⅲ
声がそろった瞬間、髪を結った男は、もう一人を睨み、茶髪の男は、狼のような視線をあっさり受け流した。
「けっ……契約っ?」
声が上ずる。
何だこいつらは。敵? 味方? 契約ってなんだ?
ジョルジュの頭の上に多数の疑問符が浮かぶ。
「俺が先に見つけた獲物だぞ、黙っていやがれ、サンダー」
「先に着いたのはオレでしょ」
サンダーと呼ばれたのは茶髪。
二人はしばらく言い合う、というよりかは黒髪の文句を茶髪がさらっと受け流しす。
そのやり取りが何度か繰り返された後、二人は同時にジョルジュを見た。
「お前、ヴァルハラを知ってるか?」
黒髪が問う。
ヴァルハラ……確か、同じ時に戦場へ送られた兵士から、チラリと聞いたことがある。
なんでも、選ばれた兵士のみが行くことのできる聖地だとか。
兵士は皆、その最期を迎えた後、ヴァルハラに行けることを願っているらしい。
彼らが自分に何を聞いているのか。
質問の意味がわからず、ジョルジュは黙る。
「……あー、めんどくせぇ。早く答えろッ!」
苛立たしそうに足でリズムを刻みながら、黒髪が再度問う。
「ま、まぁ、チラリと聞いたことはありますが……」
「そっか! じゃあ、自己紹介!」
ジョルジュが答えると、語尾に星がついていそうなくらいの軽い口調でサンダーが言った。
そういう性格なのであろう。
黒髪よりは扱いやすそうだ。
「俺からだ、馬鹿」
怒気のこもった声で黒髪が、前に出てきていた茶髪を押しのける。
「うーん……ま、いっか。いいよエド。先言って」
急にあらわれて、勝手に話を進めていく二人を、ジョルジュはただ唖然と見つめることしかできない。
こうしている間に、襲撃でもされたらどうするのだ、と内心では憤りさえ感じている。
んじゃあ、と黒髪が姿勢を整える。今さらか、と思うが、口には出さない。
「俺は、イーグニス・エドワード。ヴァルハラの戦士だ。
俺たちのことは、人間たちには余り知られていないみたいだからな、一応言っておこう。
ヴァルハラに行くには、俺たちヴァルハラの戦士と契約を結ぶことが第一条件だ。
ただ功績を残しただけじゃだめなんだ。
ヴァルハラ、ヴァルハラ、ってお前達は言うが、肝心の俺たちがいないと話にならないのを知らないらしいな。
……しかし、お前は運がいいな。
普通は、もっと功績を残した奴とかが選ばれるはずなんだが、最近は心持が重視されるらしい」
偉そうだ。凄く。
黒髪のエドワードは、ジョルジュの苦手なタイプだった。
俺は、昔の方針がいいと思うがな、などとぶつぶつ言っている。
それを押しのけて、茶髪が口を開いた。
「オレは、ヴィロンディ・サンダー。エドと同じで、ヴァルハラの戦士だよ。
オレ達は、ヴァルハラに来る魂と契約を結んで、ヴァルハラに連れてくるのが仕事なんだ。
別に、君たちの言う『お金』とかをもらってるわけじゃないから、仕事っていえるかどうかはわからないけどね。
とにかく、今日は運のいい君に、二人もヴァルハラの戦士が来ちゃったってわけだから、君は俺たちのどっちと契約を結ぶか、決めなきゃならないんだ」
どうやら運がいいらしい。
それにしても、こちらの話も聞かず、よく話す奴らだ。
当のジョルジュは、何も意味がわかっていなくて、二人の自己紹介、及びヴァルハラの説明は全くの無意味となっている。
解ることは、彼らの容姿は抜群だということだけだった。
「オイ、話を聞け」
苛立ちを隠し切れていないのか、隠していないのか。怒気を含んだ声で呼ばれ、ジョルジュは鳥肌が立つ。
エドワードのほうを見ると、背中から、人間にはあるはずのない物が生えていた。
短編じゃないですね。
なんだか長くなってしまうのです……;




