Ⅱ
ベルクール・ジョルジュの実家は農家である。終わりのない戦いのなか、田舎の彼の家は安全地帯ではあったが、軍に送る
ための多額の税金により、苦しい生活を送っていた。
ジョルジュの父は、彼が幼い頃に徴兵された。
初めのころは、電報が定期的に届いていたが、それも一年前に途絶え。
今では生死も解らない。
そのころから、母の身体が、更に脆くなっていった。
もともと体の弱い母は、持病が悪化。
手術をしなければならないが、そのための金がない。そんな時だった。
街の至る所に、兵士急募の張り紙が張り出された。なんでも、負傷者が多いため新しい法を導入したらしい。
兵士になることを希望した者には、褒美として金が手に入るのだ。
母の手術のためには持ってこいの法だった。
軍に入れば金が手に入る! しかも高額!
幼い時から女手一つで育てられてくれた母を、ジョルジュは心の底から大切に思っている。
それ故に軍に入ることに少しのためらいもなかった。
母の病が治せる!
即急に兵士が必要だったらしい。
ジョルジュはすぐに戦場へ送られた。
爆風、爆音、巻き上がる砂埃。砂埃。砂埃。
ジョルジュが派遣されたのは砂漠地帯だった。
初めてみる戦車、銃器、腐った死体。長らく戦場となっているそこは、腐った死体が所狭しと落ちていた。
四六時中考えているのは、病院に残してきた母、そして、同じ境遇にいるであろう父のことばかり。
病院へ、電報を何回送っただろうか。
ちゃんと届いているだろうのか。
待ちに待った母からの返事は、最後に手紙を送ってから二週間後に届いた。
『来週手術の予定です。ジョルジュ、くれぐれも気をつけて。お願い、無理はしないで。必ず帰ってきて』とのことだった。
砂まみれになって懐に入っている手紙を、ギュッと握りしめる。
手術は成功しただろうか。元気でやっているだろうか。母が心配でたまらない。
幸い、ジョルジュが派遣されたところは、余り人気がない。あるいは隠れているのか。どちらにしても、ここにいれば今は安全だった……はずだった。
少なくとも、二人のどこの軍とも見分けのつかぬ輩が、同時にこちらへ向かってくるまでは。
「ひぃッ!」
思わず後ずさる。並みの威圧感ではない。
こちらへ向かって走ってくるのは、髪を結った若い男と、先の男より少し若い濃い茶髪の男。
髪を結った男は、二丁の銃器を腰から下げているが、茶髪の男は武器を何も手にしていない。
この戦場でどうやって生きてきたのだろうか。不思議なことに、二人とも無傷だった。
彼らは、張り合っているかのように、お互いを見合いながらすごいスピードで走ってくる。
砂埃を上げて、同時に到着。まくしたてるように話し始めた。
「よぉ、お前が、ベルクール・ジョルジュだな? 俺と契約しろ」
「君、ベルクール・ジョルジュ? オレと契約しない? 悪いようにはしないからさ」
ここまで読んでくださっている方はいるのでしょうか…… ^^;




