Ⅰ
爆風が吹き荒れる戦場を、一人の青年が走っていた。歳は二十歳ほど。長い黒髪を後ろで束ねている。
何故か、首には枷がついていたが、先の鎖は綺麗にそぎ落とされ、ただの飾りと化している。
腰には二丁の連射式銃器が吊ってあり、どちらも軽量化されている。どこかに隠れていたのか、怪我一つしていない。
他の兵士たちとは違う、変わった服装をしていて、どこの兵士なのかはわからない。背中に銃でも所持しているのか、上着が不自然な膨らみを作っている。
なかなかのスピードで走っているようだが、息は全く切れていないようだ。
何か目的があるのか、瓦礫から煙が立ち上り、どこからともなく死臭が漂う荒れた道を、少しも迷うことなくただ淡々と走ってゆく。
突如真横を通過していった銃弾にも、青年は無関心。目を向けることなく、走り続ける。
そして、急に立ち止まった。
前に標的を見つけた獣の如く、細めた眼を、爛々と輝かせている。
その深く隈のできた眼の先、千メートルほど離れた常人では見えない標的を、青年は確かに見つめていた。鋭く細めた眼は、高き狼の双眼、堂々とした気迫は百獣の王ライオン、低く構えたその姿は、最速の獣チーターに等しい。
「やっと……見つけたッ!!」
絞り出すように吐き出された声は、講堂で話しているような、ワンワンとした響きを持っていて、爆音の絶えないこの場にはふさわしくない。
声とともに青年は先刻とは比べ物にならないほどの速さで走りだした。一気に距離を縮める。青年が口の端がニヤリと釣り上げたとき、逆の方向からも同じところに向かって走る人影が見えた。歳は青年と同じくらいか、少し若め。顔には少し幼さが残る
。青年がそちらを見たとき、人影は笑みを浮かべた。青年の笑みが一瞬のうちに消え去る。
「チッ……こんなところまで着やがって!」
少しドスの利いた声を絞り出し、加速。そのまま標的へと向かった。
全部で5つに分けています……
最後まで読んでくださる方はいるのか……?




