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元世界最強の俺が弟子を育てようと思う  作者: あいすに刺さる茶葉
序章

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第二話  『英雄』



 「冒険者、ラルク・アルカナムよ。そなたは世界を混沌に染めた魔の者───【魔王】を討ち、世界に平和をもたらした。よって、そなたに【英雄】の勲章を授けよう!!!」


 俺はこの国【メルステラ魔導大国】で叙勲式を執り行ってもらい、【英雄】という勲章を授かった。俺の左胸には小さい丸い形の金に、とても希少な赤のオリハルコンで作られた星が乗っていた。


 授かった瞬間、周囲からは歓声の嵐が飛び交った。式の後、俺は散々お礼をされ、少し困っていた。何せ数が数だ。数十なんてもんじゃない。数千、数万単位だったのだ。おそらくこの祭りが終わった後も礼をされるのだろう。


 うーん、どういう反応をすればいいんだろうか? 「いえいえ、当然のことです」……? なんか違う。


 「俺が勝手にやったことです」……? なんか違う。


 「えっへん! 俺が倒したんだ!」……うぜぇ。


 叙勲式の後、世界一規模の大きい祭りが開かれた。

 周囲にはボロボロの家々の前に明るく屋台が堂々と建っていた。

 人々はとても賑やかで、俺も自然と笑みが零れる。


 「世界はもう平和なんだよ!!! 戦いなんてしなくていいんだ!!!」


 「やっと……やっと平和が戻ってくるのね……うっ、うぅぅ……」


 「お母さん、やっとお兄ちゃんが帰ってくるの? じゃあ、また遊べるね!!」


 「メルア……アルス……勝ったんだ……! 俺達は勝ったんだよ!! お前達の死もこれで報われる……」


 「今まで、奴らと戦ってきた者達に敬意を……」


 「そうだな」


 彼等は死者達に黙祷を捧げた。

 周囲は急に静寂の空気と化し、誰一人として声を出さなかった。

 俺も同じように亡くなった者達へと黙祷を捧げる。


 暫くして黙祷を捧げ終え、活気が戻り始めた。


 「ラルクさんはすげえよ!! 今まで誰も倒せなかった【魔王】を、たった一人で倒したんだぜ?!」


 「じゃあ、【世界最強】ってことじゃね?!」


 「確かに!! 【英雄】でもあるしな!!」


 「【世界最強】の【英雄】……うん、世界平和を達成させた人にはそれくらいの称号が似合ってる!!!」


 「【世界最強】! 【世界最強】! 【世界最強】!!」


 「【英雄】! 【英雄】! 【英雄】!!」


 「ラルク! ラルク! ラルク! ラルク=アルカナム!!!!」



 なんか恥ずかしい気持ちだな。こうやって俺の名前を連呼されると……


 俺は誰もいない家の屋根へと登り、夜空を見上げた。


 たくさんの星々が光り輝き────流れていく。

 今日は確か流星群の日だったなと思い出した。


 儚い星の光は宇宙の時間からすれば、ほんの一瞬だけ輝いて消えていく。

 俺達のように。



 人間と、魔人の争いは終わったんだ。


 もう、戦いなんてしなくていい。


 争いなんて、もう起きてほしくない。


 だが、俺は薄っすらと気づいていた。

 争いが絶える事は絶対に無い。


 人と魔、もしくは人と人、魔と魔の意見が完全に一致することなどありえないのだ。ありえたとするならば、それは既に『心』という物を失っている。ただの機械なのだ。


 何も面白みが無い、全てが白黒にしか見えない世界。そんなものつまらない。でも、その面白さを得る為に、俺達は争い合う。いつだってそうなのだ。


 皆が、世界が一致団結すれば争いはまず起こらない。だが、そんな事は起きない。決して相容れない部分が必ず存在するからだ。

 それはヒトとして当たり前の事。人間の俺達や、魔人達がどうこう言っても変わることは無い。


 なぜなら、それは神が決めたことだから。俺達にはどうすることもできない。

 





⊂⊃<>⊂⊃<>⊂⊃<>






 ある日、俺の森の中の小屋に鳥が一通の手紙を運んできた。

 【魔王】を倒して平和を取り戻した後、俺は森の中にある古びた小屋を見つけ、そこを住処として二年過ごしていた。


 どこから家の場所を知ったんだと聞きたいところだが、まあ国からと書いてあるので、『魔法』か何かで特定したんだろう。


 封筒を開けると、そこにはこう書かれていた。



╺╺╺╺╺╺╺╺╺╺╺╺╺╺╺╺╺



『世界の危機』


【英雄】ラルク=アルカナムに至急話したいことがある。


【メルテスラ魔導大国】首都、【クリステル】の城へと急ぎで向かってほしい。




【メルステラ魔導大国】国王、カルステル・ノヴァ・メノアステリト



╺╺╺╺╺╺╺╺╺╺╺╺╺╺╺╺╺



 まさかの国王様からの手紙だった。

 『世界の危機』と言う言葉に俺は不安の心を抱く。


 すごい嫌な予感がするが、向かわないと色々とまずそうなので急いで俺は支度を整え、家を後にした。


 ここは【神聖国エルドランド】 の郊外。ここから【魔導大国】までだとだいぶ距離がある。馬車ですら一ヶ月かかる距離だ。

 ……まあ、俺の足だったら三日くらいで着くだろう。そう信じて俺は走り出すのであった。





 

 「よくぞ来てくれた。【英雄】ラルク」


 「いえ、当然のことです」


 第一に話しかけてくれたのはこの国の王メノアステリト陛下。

 彼はもう八十と言う高齢にも関わらず、世界最大の国【魔導大国】の王と言うだけあって、この中でも断トツで威厳を保っている。

 昔はたった一人で千の兵を相手にすることもあったのだとか。


 他にも各国の王達が揃っていた。

 俺は大きな円形のテーブルを挟み、大勢の王達と向き合った。

 叙勲式の前も何度かやったが、やっぱり慣れないな……


 「貴方はもう私達と同等……いや、既に上の立場と言っても過言では無いんです。だから、そこまでへりくだらなくてもよいのですよ?」


 「わ、分かりました」


 そう、優しく話しかけてくれたのは【神聖国エルドランド】の王、ムルストス陛下。見た目はとても若く、彼女は人々の平等を願っている王だと聞いている。


 敬語は苦手だからそう言ってもらえて助かった。王の作法とか知らないし。まあ最低限はするつもりだが。


 メノアステリト陛下は椅子から立ち上がり、俺の方を真剣に向いて口を開いた。


 「それでラルク。お主ほどの強者に頼みたいことがある」


 「頼み? 命ではなく?」


 「当たり前だろう? お主は【魔王】を倒すという偉業を成し遂げてくれた。それだけでも、充分なんだ。だから、この話は断ってくれても構わない」


 「………聞きましょう」


 とりあえず頼みというものを聞いてから考えようと思い、俺は耳を傾けた。だが、手紙に書いてあった『世界の危機』という言葉に不穏さを感じる。


 「……先日、我が国の兵が【魔帝国メラルド】で新たな『迷宮』を発見した」


 「迷宮ですか?」


 『迷宮』。古代の人々が創り上げたとされる場所。それは地下に根深く広がっていることが多い。内部にはたくさんの罠が散らばっており、時には即死級の物もある。


 迷宮の最深部には罠の動力源とも呼べる存在『魔導核(まどうかく)』が存在しており、それを取り外すか、破壊すれば迷宮内の全罠は機能を停止する。

 通路にはたくさんの珍しい鉱石や、財宝が散らばっている場合があるため『魔導核』を破壊した後、漁り回るのが冒険者達のセオリーだ。

 

 迷宮は世界各地に存在しており、おそらく未発見の迷宮もまだまだある。今回の迷宮もそうだろう。


 それにしてもなぜ迷宮というものは存在しているのだろうか? 長年この謎は学者達の間で話題になっている。

 古代の人々は罠まで作ってナ(・)ニ(・)から守ろうとしていたのか。

 戦争時に民間人を逃がすため、と言う意見や、兵器の実験をしていたという意見、『魔物』からを身を守るためという意見もある。まだまだ謎が多い場所だ。


 「ああ、数十名で迷宮の最深部へと向かわせたのだが、そこは他と一線を画すほど難易度が高かったらしい」


 「……だから、私に攻略を頼みたい……と?」


 「いや、我が国最強の騎士『メルト・アルストス』を向かわせた。彼は選別したメンバーを連れて、迷宮へと潜り、遂に最深部へと辿り着いた」


 メルト・アルストス。

 彼は今もメノアステリト陛下の椅子の後方でもう一人の騎士と共に護衛として構えている。今(・)の(・)俺だと、倒すには流石に少しは苦戦しそうだ。


 「辿り着いたんですか? なら、『魔導核』を破壊すれば……」


 「確かに辿り着いた。だが、彼等がそこで見たものは信じられない物だったのだ。メルト」


 「ハッ! お集まりの皆様、こちらの映像をご覧下さい」


 メルトはそう言って、『魔道具』を取り出し、テーブルの中心部へと置いた。

 その後、『魔道具』は輝き出して、真上へ一条の光を放った。

 光はそのまま枝分かれしていき、各国の王の目の前へとたどり着いて、留まる。

 先端を少しずつ変形させていき、最終的に皆の前に四角い画面が映し出された。


 「これは私達が記録した【魔帝国メラルド】の迷宮───ここを【胎動の迷宮】と名付けました」


 「胎動? どういう由来じゃ?」


 「今から流れる映像を見ていただきたい」


 【樹庭国サマーズオラトリオ】の国王、サウザスト陛下が問いかけるが、メルトは億さずに「画面を見ろ」と、ただそれだけを伝えた。


 俺も画面を覗いてみると、そこには信じられないものが映っていた。


 「む? これはただの『魔導核』では無いのか……?」


 「っ……、いえ、サウザスト陛下。これは───────生きています」


 『?!?!』


 俺の言葉にメノアステリト陛下とその護衛を除く全員が驚愕する。各国の王にはまだ説明はされていなかったのだなと気づいた。


 それにしても、これは異常だ。『魔導核』は『魔道具』に分類される道具であり、生き物では無い。機械兵器も存在するが、コレとは全く違う。

 生き物であるということを証明をするように、映像内では『魔導核』と呼ばれるクリスタルの形をした物の中(・)に、黒く蠢(うごめ)くナ(・)ニ(・)か(・)がそこにはあった。

 こんなこと前例がない。


 「私達が発見した『魔導核』……。この中に潜む謎の生物の『魔力』を測定したところ─────五千万はありました」


 「?!?! なんと?!」


 「流石に【魔王】より劣るが……それでも世界の脅威になりおる!!」


 「……」


 『魔力』。この世界に存在する力。魔力を使って人々は昔から生活を豊かにしていった。『魔道具』も、魔力を込めて使用する道具だ。

 魔力は様々なことに応用でき、汎用性は多岐にわたる。『魔法』を使うことだって出来るのだ。


 魔力は生まれた時から生物に備わる力であり、個体によって『魔力総量』は変わる。

 例えば一般人が十とすれば、冒険者達は百や、五百。中には千の魔力を持つ者もいる。


 ん? 俺はどのくらかだって? 

 うーん、少(・)し(・)ず(・)つ(・)減(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)から、正確な量は分からないけど、【魔王】と戦った時は二千万くらいだったか? 今はもう半分も残ってないと思うが。


 ちなみに【魔王】の魔力総量は大体五十億程度で、世界一位の総量を誇っていた。


 「そんなバケモノがなぜ『魔導核』に……」


 「私達の見立てでは、あれは封印のようなものかと。『魔導核』は経年劣化で壊れますから」


 迷宮内の『魔導核』は永遠に動くわけでは無い。

 数千年で壊れる物もあれば、数百年で壊れる物も存在する。


 「では、後何年でその封が解かれるのじゃ?!」


 「……およそ二十年後かと……」


 『二十年?!?!』


 二十年後に世界を脅かしかねない化け物が復活するとなると、大変だ。この二十年の間に『魔導核』を壊さないように、中の生物だけ殺すか、戦力を増強するしかないのだが……


 「くっ……あの戦争でどれだけの強者を失ったと思っておるっ……!!」

 

 そう、圧倒的に強者が少ないのだ。

 あの戦争で強いとされる者達の大半が魔人達によって儚く散っていった。

 この二十年の平(・)和(・)な(・)時(・)代(・)で生まれる強者などそうそういないだろう。

 あの時代は戦乱の中で、強くなるしかなかったからあそこまでの強者が生まれた。だが、今は平和ボケしていると言っても過言では無いほど弱い者達しか残っていない。


 「……そこで、ラルクお主の頼みだが……」


 「……二十年、そのバケモノを倒せ、と……?」


 「ああ。……やってくれるか?」


 「……」


 俺の本来の目的はまだ達成していない。だが、世界がまた危機となると話は別だ。奴(・)を(・)探(・)す(・)暇なんて無い。 

 ……二十年後か、その時の俺はどこまで弱く……


 やはり正直に言うしかない。


 「……申し上げますが、不可能です」


 「何を?! お前は王の頼みを断ると言うのかッ?!?! 一介の冒険者に過ぎぬ若造がッ!!」


 「グラリンツ王! 辞めぬか!!」


 「っ……、すみません、出すぎた真似を……」

 

 小国と呼ばれている【赤熱王国】の国王、グラリンツ陛下が俺に怒りを露わにするが、メノアステリト陛下がそれを制する。

 まあ、怒るのも無理はない。世界で一番偉いとも言える人の頼みを断ろうとしているのだから。

 だが、俺は曲げない。


 「……俺は、病(・)気(・)な(・)ん(・)で(・)す(・)よ(・)」


 『?!?!』


 「幼い頃から患っておりまして、『魔衰病(ますいびょう)』と言う奇病で、どんどんと身体が衰弱していくんです」


 俺の発言に全ての王が驚愕する。

 流石にこのことは誰も知らなかったみたいだ。

 

 「若い間はその衰弱速度を上回るほど速く身体を鍛えてきましたが、最近だと衰弱速度が上回ってしまい、力がどんどんと低下しています。おそらく【魔王】を倒したのが全盛期だったでしょう」


 『…………』


 「今の私ですら、その生物を倒せるか怪しいのに、更に二十年後ときたら私の年齢は四十五。力はどこまで低下しているか分かりません。もしかしたらもう、動けていないかもしれない」



 「…………そうか、すまなかった。無茶なことを─────」



 「ですが、育成なら出来ます」



 『!!!』 


 俺は椅子から立ち上がって告げた堅い言葉に皆が期待の目を寄せる。


 確かに俺だと、そのバケモノを倒すことは不可能。じゃあ、他の者に任せればいい。

 自意識過剰かもしれないが、【世界最強】の俺が見込みある者を指導すれば【最強】と言ってもいい。


 制限時間は二十年。世界的には短いかもしれないが、人間からしたら長い時間だ。充分に身体を鍛えられる!


 「俺がここから二十年の間に弟子を作り、鍛え上げ、その者にバケモノを討たせる……! これでどうでしょうか?」


 『…………』


 王達は沈黙し、全員が考え始めた。本当にそんな事ができるのか……と。

 だが、そんな空気を壊すように、【アルメズカ王国】の王、カバルク陛下が急に立ち上がって大袈裟に笑った。


 「ガッハッハ!!! 面白いじゃないか!!! お主は【英雄】であり、【世界最強】!! そんな奴の弟子など最強になるに決まっておる!!!」


 『!!!』


 「なぁ、各国の王よ!! 彼────ラルク・アルカナムに任せようぞ!! なんてったってあの【魔王】に単騎で勝利した男!! 今回も偉業を達してくれるじゃろうて!!!」


 「確かに、そうだなカバルク王。俺も希望に賭けてみよう」


 そう言ってメノアステリト陛下も立ち上がり、俺を見詰めてきた。


 「そうですね。貴方に全て託すのも少し後ろめたいですが……我々も全力でサポートさせていただきます!!」


 ムルストス陛下も表情を明るくして立ち上がった。


 「わ、儂もじゃ!!」


 「我も【英雄】殿に賭けるぞ!」


 「わ、私もです!!」


 「っ……先程は怒鳴って悪かったわい……。儂もお主に賭ける」


 他の王達も続々と立ち上がり、全員が俺に視線を向ける。

 グラリンツ王も俺に謝罪して、期待の眼差しを向けた。



 「……必ず、成し遂げます」


 俺はそう言って首に掛けてあるネックレスにぶら下がった宝石を掴む。

 それはとても暖かく、俺を覆ってくれる気がした。


 「では、【英雄】、ラルク・アルカナム。お主に王命を授ける」


 そう言って、俺の所までメノアステリト陛下は来た。



 「世界の危機を防ぐために、【最強】を育てろ!!! それが、全世界からの命である!!!」



 「ハッ!! 必ず期待に応えてみせます!!」



 その言葉を最後に『世界会議』は終わりを迎えたのであった。



最後まで読んでいただきありがとうございます!

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