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四話 熱をもって


「あァ、最高だなァ」


 湯船に浸かる私の口は、勝手にそう口走っていた。この村に来るまでに結構な距離を歩いて溜まっていた体の疲れが一気に取れていくのを感じる。


「だがこれは五右衛門風呂か。ちょっと怖いな」


 夜も遅いということで少年の家に泊まれることになった。そのついでにお風呂を借りたのだが、薪で温めているため、それに触れないように沈められた蓋から落ちると足を火傷してしまう。最初は勝手が難しく何度か危ない場面はあったが、慣れてくると案外いいもので、いつもよりもリラックスできている気がする。


「ハァ、田舎というのも案外いいものだな。引退したらこういう暮らしをするのもアリか?」


 まぁ、今はそんなことを考えている余裕はないのだが。この世界から怪異という存在がなくならない限

り、私たちが本当に引退することはないのだから。


「今回の任務のクリア条件を整理するか」


 田舎で暮らすスローライフを想像していた瑞稀だが、少ししてから仕事のほうに意識を向け始める。


「【お陰様】、祟り神信仰はまだ理解できる。だが、何か変だ。少なくとも、六年前の記録では何も異変はなかったとされている。ならあれはどこから来た?」


 私が見つけた通り、この村の神社には元々本殿が置かれており、そこに祀られていた神様がいたはずだ。ならば可能性として考えられるのは、あの【お陰様】が本来の神様とは別の存在であるケース。


「この村に関して、どうも匂うな。この六年の間に、何かが起きた」


 それが結界の弱体化に関連している、そんな気がした。


 それから少し経った後、瑞稀は木々の擦れる音の中にギターの音色が混ざっていることに気づいた。耳を澄ましてみると、少年が歌っているのも聞こえてくる。


「随分上手じゃないか」


 ギターの響きに負けないような透き通った歌声が浴室に反響している。自然にあふれたこの場所で奏でられたそれは全てが一体となって曲として完成していた。


 演奏はそれから十分以上続いた。ここ周辺には建物がないため、人目を気にしなくて済むのだろう。どれだけ聞いていても飽きないメロデイーに耳を傾けながら、私はひと時の休息を取るのだった。


「鉄は熱いうちに打て、少年」


 届くわけもない独り言ではあるが、それは応援だった。少年に心を動かされた確かな観客の一言は、風に乗って森へと消えていく。


「あッ⁉」


 同じ体勢に疲れた私が体を起き上がらせようとすると、油断して板から足を滑らせてしまった。


「これは熱すぎだッ!」


【本作のテーマ】

今回は夢というテーマで作品を制作したのですが、他にもいくつかの要素が含まれています。

『歌』『大人と子供』『煙草』の3つをもとにしました。


特に、大人と子供の対比を描きたくあったのですが、如何せん実力不足が目立ってしまい、悔しい限りです。


ですが、これまでで一番まとまりがある作品になっていると自負しているため、残りの話を今しばらくお待ちください。


なお、煙草もとい瑞稀の描写に関しては殆どが作者の癖で描いています。

やっぱり、こういう大人の女性がメインの作品が好きです。

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