第四話 エミリがバズった裏で
お待たせしました!
よろしくお願いします。
その日、一本の動画が動画投稿サイトの最大手『ミーチューブ』に投稿された。
動画のタイトルは『歌ってみた:甲本エミリ』に曲のタイトルを組み合わせた、とって付けた様なもの。サムネイルは黒背景に文字で『歌ってみた』と書かれているだけの雑さ加減。概要欄にはSNSへのリンクすら無い。
そんなお粗末な動画が、早々人の目に留まる訳も無いはずだった。
しかし――
「おっ。この曲の歌ってみた出てるじゃん。えっと――うそ! 今日投稿されたの!?」
彼はダンジョン系の配信をよく見ている男子大学生だった。
その日は、ある曲の音源を探していて、ミーチューブで曲のタイトルを検索にかけた。すると偶然そこにエミリの動画が表示された。投稿時刻は今日の日中。少し年代の古い曲なのに、まさか今これを歌う人間がいるなんて、と。
少し興味を引かれて、その動画を見てみることにした。
動画が開始すると録画らしき映像が流れる。芝生の上に立つ金髪の少女。背後にはテントが見える。キャンプに来て、暇つぶしにでも歌ったのか?などと邪推する。
そして「――エミリです。歌います」の宣言の後、すぐに歌が始まった。
「っ……!!」
それはアカペラだった。音源を流すことすらしていない。
だというのに。それなのに――
「なんつー迫力だよっ……!」
聞き始めた次の瞬間にはその歌に目を、いや耳を奪われていた。
音程は外れている。技術だってまだまだ。そこだけ見れば間違いなく素人の歌ってみた動画でしかない。すぐにブラウザバックして、本来の目的だった原曲を聞きに行くだろう。
だがしかし。
その歌には温度があった。
感情が籠っていた。
魂がのっていた。
まるでこう言ってるかのようだった――自分の歌を聞けっ。自分の歌で熱くなれっ。そして魂が震えるほどに盛り上がれっ、と。
そんな意志が込められているような、言葉を変えれば自分勝手な歌い方。
でも、だからこそ引き込まれる。彼女の歌をもっと聞いてみたいと思ってしまう。まるで自分の心も共鳴するように。
そんな聞いている方が気圧されるほどの迫力が、エミリの歌には込められていた。
画面にかじりつくようにその歌を聞いていると、映像に変化が現れた。
足元にリスが現れたのである。
「ん?……おいおい、こいつって!?」
そのリスには見覚えがあった。間違いない。あの特徴は『魔栗鼠』。ダンジョンに出現するモンスターの一種だ。
「まさかこの子っ、ダンジョンで歌ってるのか!?」
確かに魔栗鼠は強いモンスターではない。冒険者なりたての初心者でも倒せる。けれどもモンスターに囲まれた状況で歌えるなど、並の胆力ではない。
ただの勇気か、蛮勇か。
しかし再生数稼ぎにバカをやっているようにも見えない。あのサムネイルやタイトルもそうだし、何よりそんなことを考えた媚びた歌い方じゃない。
その疑問に答えが出ぬまま、曲はいよいよクライマックスに差し掛かる。
そしてその時が訪れる――
『ガンバレーーーーーーッッッッ!!!!!!!!』
最後のフレーズをここ一番の気勢で歌いきった直後のことだった。
『バンッッッ!!!』
「……はっ?!」
何故か分からない。何が起きたのかも分からない。
だが結果として――十体近くの魔栗鼠の群れが、一斉に弾け飛んだ。
「い、いやいやいや!! 何が起こったんだよ!? なんでいきなり魔栗鼠の身体が弾ける!? ていうか画面グロっ!? この子も地面も血まみれじゃん!!!」
あまりの状況に突っ込みが止まらない。画面の向こうの少女もあ然とした表情をしている。まるで自分がやったことを理解していないよう。まさかこれだけのことが偶然起こった、なんてあってたまるものかっ。
「も、もしかして『歌』で倒したのか……?」
さっきのシーンを何度か見直してみた結果、理由はそれしか思いつかなかった。歌の終わりと同時に、示し合わせたように魔栗鼠が爆散している。多かれ少なかれ、少女の歌が関係しているのは間違いないはずだった。
歌の技術は平凡。だけど歌そのものの才能は非凡。
そして何より、歌でモンスターを爆散し、血の雨を降らせる謎の技。
「……面白過ぎだろっ!! この子!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【今の】冒険者について語ろうpart4【注目は?】
1:名無しの一般人
ここは冒険者について語るスレです。
冒険者に関わる話題以外はご遠慮ください。
また他の人が推している冒険者を貶めるような発言はしないようにっ。
そんなことをしたら、即刻アク禁にするのであしからず。
みんな仲良く、楽しんで冒険者について話し合いましょう!
……………
………
…
141:名無しの一般人
最近は新規で話題になる冒険者って減ったよな~~
何か出尽くした感があるというか
142:名無しの一般人
それはお前の情報収集力が足りないだけだろww
ちゃんと調べれば期待の新人は次々と現れてるぞ。つい最近でいえば美少女剣士の千尋様がいただろうがっ
143:名無しの一般人
>>141
まあ言わんとしてることは分かる。昔に比べてこう、気付かないうちに話題になってたような爆発力を持った子が、少なくなった気もするな。
その点でいえば、最近だと千尋様ぐらいかもしれん。
144:名無しの一般人
懐古厨、乙
145:名無しの一般人
ちょっと! ヒロト様を忘れないでくれる!
146:名無しの一般人
ヒロトかぁ……あいつはなぁ……
147:名無しの一般人
>>146
ヒロト様がなんだ? 喧嘩なら買うぞ? お?
148:名無しの一般人
【速報】モンスターを歌で爆破する美少女シンガー現る!!
149:名無しの一般人
すみませんでした
150:名無しの一般人
分かればいい
151:名無しの一般人
それこそ国内の冒険者レベルが底上げされてきたってことで――うん?
152:名無しの一般人
美少女シンガーとな?
153:名無しの一般人
>>148
詳しく
154:名無しの一般人
ついさっき発見されたばかりのほやほやだぞ。
ほれURL( ・∀・)つ http:~~~
金髪の美少女が一人で歌ってるんだが、途中でモンスターが集まって来て最終的に爆散するんだ。見てみな、飛ぶぞ。
155:名無しの一般人
説明へたかよww
気になるから動画見てくるわ
156:名無しの一般人
歌で爆散、とは?
157:名無しの一般人
つまり、某小学五年生の音響兵器ガキ大将と同じってこと?
158:名無しの一般人
例えが酷すぎで草
159:名無しの一般人
美少女の歌を聞いて死ねるなら本望だっ!!!!!
……………
……………
200:名無しの一般人
本当にモンスターが爆散したwww
201:名無しの一般人
なんでやった本人が一番呆然としてるんだよww
202:名無しの一般人
金髪に血が滴る姿も、なかなか乙よの~~
203:名無しの一般人
この変態、逮捕された方がいいんじゃないか??
204:名無しの一般人
そんな変態どうでもいいわっ。
それよりなんだよあれ!? 歌が始まった瞬間、画面越しなのにぞわっと鳥肌立ったぞ!?
205:名無しの一般人
それな。別に特別上手いって訳じゃないんだけど、なんかこう……
206:名無しの一般人
魂に訴えてくるよな
207:名無しの一般人
そう、それ!!
208:名無しの一般人
確かにアレは技術じゃない何かが乗ってた。不思議と動画を途中で止めようって気にもならなくて、結局最後まで見ちゃったし。まさに魂が籠った歌声って表現がピッタリだと思う
209:名無しの一般人
そうして最後まで見た結果、例のシーンを目撃する訳ですね。
分かります
210:名無しの一般人
あんなの反則だろwww
211:名無しの一般人
なんで直前まで森の演奏会みたいな風情だったのがR-18になるんだよ!? あんなの不可避だって!!
212:名無しの一般人
歌も凄かったけど、そっちも凄かったなあ
まあグロも軽微だったらそっち方面では問題なかったけど。爆散も一瞬でほとんど身体の部位とかも見えなかったし
213:名無しの一般人
にしても……歌でモンスターを爆散か。
こりゃ話題性バッチリじゃね? 期待の新人候補キタコレ?
214:名無しの一般人
どうだろ? 見てる感じメインは歌っぽいし。モンスター爆散事件は本人の意図じゃなくて偶然だったみたいだし。冒険者として活動してくれるかは微妙なラインかも?
215:名無しの一般人
まさに爆殺歌姫www
216:名無しの一般人
素性がまるっきり謎だからな。せめてSNSでもやってれば分かるんだけど
217:名無しの一般人
爆殺歌姫は草
絶対不本意だろ
218:名無しの一般人
おいっ!! エミリちゃんのチャンネルに新しい動画が追加されてるぞ!!
219:名無しの一般人
お!
220:名無しの一般人
ちょっと見てきます
221:名無しの一般人
私も行ってくるわ
222:名無しの一般人
俺も
223:名無しの一般人
俺はとっくにチャンネル登録アンド通知オンにしてるからチェック済み。
今回の歌も良かったぁ……あのアニメの主題歌とは、やっぱりアップテンポの曲が好きっぽい?
なおラスト。
224:名無しの一般人
www
………………
………
……
いかがでしたでしょうか?
今回はエミリがバズった裏であった反応を書いてみました。いよいよエミリの知名度が上がってきました。この調子で次はどうなってしますのか!?
次は本編に戻るので、また次回! お楽しみに! 次の更新は明日の予定です!
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