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歌手志望のダンジョン暮らし―【爆殺歌姫】は今日も歌でモンスターを爆破するー  作者: ミジンコ
プロローグ 

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第二話 爆散のワケ

遅くなってしまってごめんなさい~!

 ダンジョンの外にある、ギルド。そこで魔石を始めとしたモンスターの素材の買い取りが行われている。


「わぁ……初めてにしては、随分頑張りましたね」

「あー、なんつーか。あはは……」


 ギルド職員の言葉を笑って誤魔化した。まさか歌ってたら、モンスターが爆発四散しましたなんて言えないよな……


 ――あの配信の後、私は落ちていた黒い石、『魔石』を拾い集めて、それを売りに来ていた。


「Fランクの魔石が十二個。買い取り金額は一万と二千円になります。こちらでよろしいですか?」

「あ、はい。お願いします」

「それにしても七級なのに凄いですね。少し前に入ったばっかりで、こんなに魔石を持ってくるなんて。やっぱり初期のスキルが良かったとかですか?」

「えっと、どうなんすかね?」

「ああ、ごめんなさいっ。スキルのことを聞くのはマナー違反でしたね。失礼しました――ですが無理は禁物ですよ? 初心者のうちは皆さん無理しがちですから。自分の命を最優先に考えてくださいね」

「……はい」


 別に無理なんてしていない。だって私はただ歌っただけなんだから。そしたら勝手に向こうが自爆しただけ。

 それよりもう一つの目的を果たさなきゃなんない。スキルのことを答えられなかったのは理由があるのだ。


「――あの。一つ聞いてもいいっすか?」

「はい。なんでしょうか?」

「自分のスキルの確かめ方なんですけど。私、今日が初めてで、いまいち自信無くて」

「ああ、なるほど……畏まりました。ちょうど空いてますから、このままやってしまいましょう」

「ありがとうございますっ」


 なぜこんなことを言い出したかと言えば、当然さっき見たあの現象を解明するため。


 確かに私は、歌で食べていきたいと思っている……だけど、こういうことじゃない!


 私がやりたかったのは、大きな箱でライブをやったりとか。CDとかMVとかを出したりとか。そういう方向で稼ぐこと。断じて歌でモンスターを爆殺することとは違うっ。


 そして原因の心当たりと言えば、アレしかないだろう。


 思い返すのは今日、代々木ダンジョンに入ったときのこと――


《スキル『歌焔熱唱(タマシイノウタ)』を獲得しました》

 

 そんな声が頭の中に聞こえてきた。


 ダンジョンに入ると、全ての人は最初に一つスキルを手に入れることが出来るらしい。私の場合、ここ代々木ダンジョンが人生初。地元では資格の取得だけをして、ダンジョンには入らなかった。


 とはいえ、私はあまりスキルに興味が無い。モンスターを倒し、生活費を稼げればそれでよかったからだ。だから、スキルの詳細も確認はしなかった。


 だけどこのままじゃダメだ。今の私は正直、危険すぎる。聞いた人が破裂したんじゃ目も当てられない。このままじゃ歌手になれなくなってしまうっ。


 あの怪しげなスキルを知ることは、私にとって最優先事項なのだっ!


「資格取得時の講習で教えてもらった事は覚えてますか?」

「たしか、自分の内面に意識を向ける、てやつですよね。どういう意味かはいまいち分かってないっすけど」

「言葉だけだとそうですよね。でも実際にやってみると案外簡単なんですよ」


 職員のお姉さんの言葉通りにスキルの確認をやってみる。


「まず目を瞑って。それから頭の中に、スキルを思い浮かべます。スキル名は覚えてますか? それを意識してください。それからスキルをより深く知りたい、と内側に意識を向けていきます――」


 すると、お姉さんが言っていた通り、するりとスキルのことが頭の中に浮かんできた。


「っ……出来ました」

「ね? 簡単だったでしょう? 他人に見せることは出来ませんけど、自分のスキルを確認するだけなら案外出来ちゃうんです。一度出来てしまえば、二度目からは徐々に楽にできるようになりますよ」

「面白いっすねっ!」

「初めては皆さん、そう仰います。その感覚を忘れないようにしてくださいね」

「はいっ!」


 そうして私は、付き合ってくれたお姉さんにお礼を言いつつ、冒険者として初の稼ぎとなる一万二千円を受け取りギルドを後にした。


 戻ってきたのは、当然ダンジョンにある私の拠点。


「ふぅー……」


 テントの傍に置いたアウトドアチェアに深く腰掛け、長い溜息を吐いた。


 目的だった魔石の買い取り、スキルの確認は達成。一万円もあれば昼食と夕食を多少豪華に食べたとしてお釣りがくる。一先ず今日の生活は心配しなくてよさそう――じゃないっ。


 こんなところで満足してる場合じゃなかった。


 歌手を目指すんだから、これからお金なんていくらあっても足りない。ボイストレーニング代。衣装代。場合によってはオーディションの受験料などなど。これからの為に貯金は必須である。


「その為にも……このスキルは、有用じゃん?」


 さっき確認したスキルの中身。それを思い返して思わず笑みが零れる。


 『歌焔熱唱』と名のついたあのスキル。


 その効果は、聞いた対象を爆破すること――ではない。そこは不幸中の幸いだった。私=無差別爆破音源では断じてない。


 このスキルの本当の効果。それは――

 一つ。私の歌を聞いた相手を陶酔させること。

 一つ。私の歌を聞いた相手に『熱』を蓄積させること。

 大まかには、この二種類だ。

 そして効果対象は任意。自分で選ぶことができる。


 だからあのモンスターが私の歌にノッていたように見えたのは、どうやらスキルの力らしい。そこは……少し、残念だ。

 

 いや、ちょっと自分の歌を過大評価し過ぎただけだ。


 言語の壁も、種族の壁も超えて私の魂を伝えるには、まだ何もかもが足りない。まだまだ修行中の身。むしろここで現実を知ったのはいいことだ。でもあの光景をスキルを使わず作れるようになれば――


 そのとき私は、歌手としてもっと成長できているはず。

 だからあれは、目指すべき姿の一つなのだ。


「――だけど。このスキルがあれば、効率良くモンスターを倒せるっ。つまり稼げるっ! それも発生練習をしながら出来るんだから、最っ高だ!」


 これぞ、やりたいことでお金を稼ぐということ。


 ただ一つ懸念点があるとすれば、それは――


「歌を兵器扱いしちまってる、てとこだな……」


 さっきまでのテンションはどこかへ消え、逆に背筋が凍るような寒さがやってくる。


 ――そう。このスキルは『歌』を兵器にする。


 もたらす結果は、あのモンスターたちが教えてくれた。体内に溜まった熱が、歌の終わりと同時に一気に開放される。熱はあっという間に小さなモンスターの体内を燃やし尽くし、血液を沸騰させ……あの爆発を起こした。


 都合がいいスキルでありながら。

 これは私が大好きで止まない歌を血で汚すものでもある。


 果たして私は、これを使い続けていいのだろうか?


 こんな物騒な歌を歌う私が、歌手を目指してもいいのだろうか……?


 地面の下なのに、天井に映る空を見て考える。


「……いや」


 ――そんなこと、関係無いっ


 じゃあ歌手には聖人君子しかなれないのか? 


 違うだろっ! 歌手ってのは、歌ってのはそんなもんじゃねえ!


 包丁と同じだ。本来は食材を切って調理し、人に美味しい料理を食べさせるための道具。しかし使い方によっては人を殺すことだって出来る危険な代物にもなる。


 悪意を持って使うか、善意を持って使うか……それだけの違いでしかない。


 だったら私も決めよう。私が歌手になるために、このスキルはおあつらえ向きで、必要不可欠な要素だと感じる。だから――


「だから……このスキルは、絶対に人には使わない」


 それが私が、私自身に課す絶対のルール。


 それを破った瞬間、私は歌手を目指すのを止める。


 こんな物騒なスキルを持ってしまった、それが私なりの覚悟だ。


 モンスターが相手ならば容赦はしない。せいぜい私の資金稼ぎの糧になってもらおう。だが人に聞かせる曲にこのスキルは必要無い。陶酔効果? それこそ必要ない。


 自分の力で私の歌に惚れさせなくて、何か歌手だ。スキルで人の感情を操ったところで何の意味も無い。


 もう一度、改めて心に誓う。

 このスキルを使うのはモンスターだけ。人には使わない。


 これは私の決定事項なのだから。


 そうと決まればもう二、三曲歌っておこう。周辺のモンスターを殲滅するのにもちょうどいいはずだ。

いかがでしたでしょうか?

今回はスキルとエミリの意志に視点を当てたお話でした。いよいよ次回はプロローグのクライマックスたる三話です! 果たしてどうなるのか!?


四でみて面白い、続きが読みたいと思ってくださったらブックマーク・評価・リアクションをしてくれると嬉しいです! 執筆の励みになります。よろしくお願いします!


次の更新は明日の予定です。お楽しみに!!

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