第十三話(前編) 甲本エミリは、歌で殴る
お待たせしました!
今日は二話投稿を行います。キリが良かったので、二話に分割したものを後ほど投稿します!
植物だろうが、モンスターだろうが関係ない。
「――なあ本当に それがお前の気持ちなのか」
私の歌を聞いてるヤツなら、人間じゃなかろうと。
「――不安から逃げて 意志を曲げちゃいないか」
歌を、喰らわせるッッッ!!!!!
「キィェェ……!!!」
さっきまでとは反応が違う。
そりゃあ当然だろう。何せアイツ一人のために歌ってるんだ。将来のスターの歌を一対一で聞けるなんて、早々ないぜ? たっぷりと味わってくれよ!!
「――どうせ出来ない? 違うそうじゃないだろ!」
「キャィイイーーー!!!!」
「――暗闇がきみを飲み込まないよう 明るく照らそう」
なんだろう……
これまで歌っていた時とは、違う何かを感じる。
声がよく伸びる。自然と抑揚がつけられる。歌い難さを感じていたところが、今ではすらっと出てくる。
強いて言うなら――そう。歌いやすいんだ。
さっきまでと変わったことと言えば、やはり対象意識だろうか。
ただ漠然と誰かに聞かせたいのではない。今はただアイツにだけ、私の歌声を届かせたいと思っている。たったそれだけの違い。けれど、その違いが今。歌声にはっきりと表れている。
――もしかして、これが……!
MEGUMIさんが言っていた、私の歌がぼやけて聞こえる理由。
それこそ、この対象意識だったんじゃないか?
確かにこれまで私は、聞かせたい相手を漠然と意識していた。録画をしている時だって、カメラの向こうの誰か、とだけ薄ぼんやりと。ある意味、自己完結と言えるかもしれない。
「――あきらめたら負けさ いつだって」
だけど今は違う。
目の前に聞かせたい相手がいる。
これほど絶好の機会は無い。
「――きみにしか出来ない いつの日も」
「キィェェ…………――キィイイイ!!!」
――来たッッッ!!!
「――たった一人しかない 元気をくれたのは君だけだ」
「キィエエ!! キィイイ!!」
ヤツの根っこが、歌にリズムに合わせて揺れ始めた。最初は小さく、気のせいと見間違えるぐらい。けれどそれは徐々に大きくなり「ジタンッ! バタンッ!」と根っこが地面を叩く音に変わる。
まるで数百人のオーディエンスが、地面を踏みしめているような感覚だ。
――ハハッ。こりゃいいぜ!!!
身体はボロボロで、疲労は限界を超えてる。
喉だって連続で使い過ぎたから、声を張ると鈍い痛みがある。
だというのに、今なら何時までも歌っていられる気さえした。
「――あきらめなければ いつだってッッ」
「キ、キィェエエエ!」
「――きみなら成し遂げるさ いつの日もッッッ」
「キィイイイイイイイイ!!!」
ヤツも大分ノッてきてるらしい。身振り手振りだけじゃなく、あの気味の悪い声も出して盛り上がっていた。
それに、私には分かっていた。
ヤツの身体の中に、さっきとは比べ物にならないぐらいの『熱』が溜まっていることに。これまでのことなんて分からない。けれど感覚的に、これまでで一番の熱が蓄積している気がする。
――どうやら、限界が近いらしい。
「――たった一人しかない」
こんなことを言うのも変だが、少し残念だ。
どうやら曲の二番以降は必要無いらしい。どうせなら最後まで聞いて行って欲しかったが……もう溜め込んでおくのは難しいように見える。容量、とでも言えばいいのか。ヤツの身体に溜め込める熱が、その限界を迎えようとしていた。
だったら最後は、ド派手に行かせてもらう……!!!!
「――輝いて見えたのは君だけだ」
そう歌いながら、私はモンスターに駆け寄った。
ふらふらだったはずなのに、不思議と足取りは軽かった。
そしてノリノリで身体を揺らし、奇声を上げるモンスターの足元にやって来た。
コイツは唯一のオーディエンスだが、同時に敵でもある。散々ぱら私のことを追いかけ回した。挙句、重い一撃を叩き込んできた……当然、私の中には怒りという感情が湧いて来る。
だが、私には武器が無い。
どうせあったとしても、コイツにまともなダメージを与えることだって出来ないだろう。
だから――
「――不安だったら この歌を聞けッッッッ!!!!!」
――私は……歌で、ぶっ飛ばす!!!!!
一番を歌いきると同時に、左腕で下から殴り上げる。
それは私の全力の拳だったが、「ボスッ」という情けない音しか鳴らなかった。
「……残念だが。お前に聞かせるのは、ここまでだ」
「キィイイエエエ?」
「最後まで聞きたかったら……もっと丈夫になって、出直してこい」
もっと聞きたかっただろうにな。だがこれは私の所為じゃねえ。私の歌に耐えられないぐらい燃え上がっちまった、自分の所為だぜ。ある意味、自業自得ってところだな。
そして、次の瞬間――
「――――キィヤアアアアアアアア!!!!!!??」
モンスターが――打ち上がった。
文字通り、その巨体が花火の玉のようにひゅー、と。
そして天高くまで上がったところで。
「ギギィイイイイイイイ!!!??」
――ドカンッッッッ!!!!!
燃え上がった身体が、燃える欠片となって爆発四散した。
「……不細工な花火だな」
昼間に見る花火ってのは、いまいち微妙だった。やっぱり花火は夜の空だからこそ、映えるってもんらしい。
モンスターが粉々になったのを見届けて、私は地面に倒れた。
まるでレイカさんと出会ったあの日のようだった。
けれど違うのは、もう私には意識を保っているだけの体力が無かったということ。このままここで意識を落としたら、別のモンスターに襲われるかもしれない。せめてキャンプに戻るまでは――
「――ん」
何か、聞こえる。
「――さーん!」
聞き覚えのある、誰かの声だ。
「――エミリさーん!!!!」
私の名を呼ぶ声だった。どうやら誰かが私を探しているらしい。
だったら……いいか。
そうして私は、何者かの足音を地面から感じつつ。
意識を失った。
いかがでしたでしょうか?
この章の山場的な見せ場でしたっ。ちゃんと熱の入った戦闘?シーンになってるかな? そう見えたなら、書きたいことがしっかり書けているようで嬉しいです!
おそらく次々回でこの一章は最後になると思います。気を失ったエミリを迎えに来たのは誰なのか? そしてまさかの出来事も!?
次の更新は夕方ごろを予定しています。お楽しみに~!
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