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歌手志望のダンジョン暮らし―【爆殺歌姫】は今日も歌でモンスターを爆破するー  作者: ミジンコ
第一章

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第十一話 気晴らしに出た先で

お待たせしました!

 それから私は、初回を含めMEGUMIさんから三度の指導を受けた。


 実力は、少しは上がった、と思う。


 自分で録音した歌を聞いてみると、何となく違いが分かった。ただし、まだ完全に理解できている訳じゃない。違いの理由が説明できない箇所もある。その辺りについては、これからの練習次第というところだろう。


 しかし――


「はぁー……」


 三度目の指導終わり。私は思わず溜息を吐いた。


 ダンジョンに戻る道すがら、コンビニで買った肉まんを食べながら。季節は冬から春への変わり目。まだ少し肌寒い。時間帯も夜に近いこともあり、いつもなら美味しく感じる……はずだった。


 けれど、今の私にはそれを楽しんでいる余裕は無い。


「マジで何なんだよ、歌がぼやけてるって! 分っかんねぇ~!!」


 そう……


 初回の指導で、MEGUMIさんに出された課題。

 私はそれに、今も悩まされ続けていた。


「せめてヒントぐらい出してくれてもいいだろっ!? な~にが『まだ分かってないの? おバカちゃん』だよっ!! やっぱりアイツ、ムカつく!!」


 分かってる。分かってはいるのだ。あれからまだ、たかだか一週間程度。それで答えが出なかったぐらいで聞きにいくのは、自分でも甘いと思う。


 私はどちらかと言えば、せっかちな性格をしている。だからすぐに答えを求めたがるし、答えが出ない現状に焦りを感じている。そう言われてしまえば、その通りだ。


 だけどなぁ。頭では分かっていても、納得できるかは別問題なんだよっ。それにMEGUMIさんもMEGUMIさんだぜっ! なんでわざわざ煽るような言葉を使いやがるんだ! わざとだろ? 絶対にわざとやってるだろ! 焚きつけようとしてるのかもしんないけど、余計にムカつくってんだっ!


「――たはぁー…………なんて。MEGUMIさんに当たってもしょうがねえんだけどさ。ほんと、自分が情けねえわ」


 やっぱ、自分で解決しねえとな! 文句言ったって始まんねえ!


 ――しかし。解決策も浮かんでこず、もやもやした気持ちも晴れなかった。


 そうして結局、私はダンジョン(マイホーム)に戻ってきた。住めば都、なんてよくいったものだ。最初はどうなるかと思ってたけど、意外と何とかなる。


「どうすっかなぁ。正直、考えも行き詰まってる気がする……」


 地べたに寝転がって上を見上げながら、そんなことを呟いた。


「気晴らしか。私の場合、それも歌だったんだよなあ。歌で悩んでる時に、歌で気晴らしってどうなんだ? いやそれもまあ、私らしいっちゃらしいけど。う~ん」


 そうして少し悩んでから、のんびり立ち上がった。


「散歩、いくか」


 散歩に行くことにした。


 拠点を出発して、ダンジョンの中をぷらぷら歩く。


 モンスターの影を見たらすぐに逃げた。向こうに見つけられた時は、全力で逃げた。これはこれで何だか面白い。まるでスパイごっこでもしているみたいだった。


 そうして第二階層の、あの丘までやって来る。


「ここも、ちっと懐かしいな。別に何ヶ月も前って訳じゃないのに……」


 ちなみに私はあの日以降、録音した歌を一度もチャンネルで公開していない。課題が分かってる状態で誰かに聞かせるなんて恥ずいからな。それに聞いてくれる人にも失礼だし。


 それと、もう一つ理由が無くもない。


 これはレイカさんからのアドバイスだが――目的は、私の話題の鎮静化だ。


 人の噂も七十五日、なんて言葉があるように。人気や噂というのは日々移り変わるもの。暫く話題の提供が無ければ、向こうの方が勝手に落ち着いてくれるという話だ。


 お陰で、私のチャンネル登録者数の伸びはほぼ落ち着いた。なんなら減っているすらある。一週間以上何も供給しなかった結果が、しっかりと出ているようだった。


 これが良いか悪いかは微妙なラインだけどな……


 歌手を目指す以上、知名度はあって損は無い。ただ今回は悪目立ちしたから、私としてはこれでいいと思っている。次は私の歌でしっかり知名度を取り返せばいい。それだけの話だ。


 そのまま私は、思い切って第三階層に足を踏み入れた。


 ここまで来るのは初めてだ。ここに住んでるのに、まともに探索するのなんてこれが初めてなんて、変な話かもしれないが。


「といっても、景色は代り映えしないんだな。他のダンジョンに行けばまた違うんだっけ? まあ早々行くこともないだろうけど。ここが私の、所謂ホームダンジョンってやつだからなっ」


 代り映えしないと言っても、やはり散歩は効果があったのかもしれない。


 歩いていると、何となく頭がすっきりしたような気分になる。周りの環境が草原など自然たっぷりなのが良いのかもしれない。地下空間のはずなのに、不思議と空気が澄んでる?気さえしてくる。


 それにさっきよりも、歌いたいって気持ちが大きくなってきたしな!


「どうせならここらで一発、歌っとくか! 第一階層、第二階層でも歌ったし。どうせなら、いつかこのダンジョンの全階層で歌ってみるのもありかもしれないなっ。一階層、一歌唱っつってな。ははっ!」


 適当な場所を探しつつ第三階層を彷徨っていると、良さそうな場所を見つけた。


 階層の端っこの方で、あまり人も寄って来なさそう。それに何故かその場所にだけ、花が咲いていた。真っ白で綺麗な花で、小さな花畑といった雰囲気。別にメルヘンな考えではないが、こういう場所で歌うのも一興だ。


 バックから三脚を取り出し、花畑の中央にそれを立てる。


 後で聞き直すために、録画だけはしなければならない。


 ――私は学んだ。録画しても、別に公開する必要が無いことを。動画を望んでいる視聴者には申し訳……別にどうでもいいか。特に爆殺を望んでる連中。とっとと飽きろっ。


 ああでも、歌を待ってる人達にはすまんっ。私が納得できるようになれば、必ず次の動画をあげるから待ってて欲しい。


「さて。選曲はどうするか……。開放的な場所だから、やっぱりそういう雰囲気の歌がいいよな。知ってるのだと――あれがいいかっ」


 地面に咲いた花を見てピンッときた。


 花といえばフラワー。フラワーといえば、あの有名バンド『フラワーマイスター』が思い浮かんだ。あのバンドは応援ソングとか、誰かの背中を押してくれる熱い曲が多いのだ。


 レッスン終わりで少し疲れてるけど、構いやしない。


 どうせ明日は休みなんだから、ここで歌ってスッキリして帰ろう。


「セット、オッケー。それじゃあ、行きますか――」


 曲をスタートさせる。


 ドラムから始まり、初っ端からノリのいいテンポが続く。


「――なあ本当に それがお前の気持ちなのか」


 最初はゆったりと、相手に語り掛けるようなペースで。


「――不安から逃げて 意志を曲げちゃいないか」


 そうして歌っていると。


 やはり、と言うべきか。モンスター共が現れた。第二階層ではゴブリン。第三階層では何が出るかと思っていれば、現れたのは獣だった。上にいたリスやウサギじゃない。


 ――狼かよっ!?


 大型犬ぐらいのサイズだが、間違いなく犬じゃない。狼に近いモンスターのようだった。それが一匹。向こうから近寄って来るのが視界に入った。


 でも、関係ないねっ!


「ちゃんと言えよ お前の本音を」

「どうせ出来ない? 違うそうじゃないだろ!」


 寄って来る狼は徐々に増える。だがいつも通り、襲い掛かってくる気配はなかった。


 分かっちゃいたけど、結局こうなるんだよなあ。スキルを使わなきゃいいじゃんって話だけど、そこがこのスキルの面倒なところ。


 コイツ、オンオフが出来ねえんだよ。


 いわゆるパッシブスキルって言うんだっけか? 常に発動してるタイプのスキルらしい。私が使いこなせてないだけの可能性もあるけど、今のところオフに出来る方法は見つかってない。対象を変更するぐらいが、いいとこだ。


 それすら出来なかったら、もう二度と歌えないところだったけどな。


「――不安だったら この歌を聞けっ!!!」

「「「「「……ッ!!」」」」」


 狼の表情は分からない。だが尻尾が振れている。私の歌にノッているみたいだ。


 このままいけば、いつも通り歌の終わりと同時に狼共が爆散して終わる。やはりこの動画もお蔵入りのようだ。仕方ないとはいえ、ダンジョンで動画を撮るのだけは簡単じゃない。


 そうして歌は進み――


「――たった一人しかない 輝いて見えたのは君だけだ」


 次がラスト。このまま全力で歌いきるぜ!


「――迷った時は この歌を聞けッッッ!!!!!!」

「「「「「ッッ……!!」」」」」


 ――パァアアアンッッッ!!!!


 想像通り、というべきか。


 やはり狼のモンスターたちは、歌の終わりと同時に爆散した。そうして飛び散った真っ赤な血は、地面に生えていた白い花を染め上げる。


「うわっ!? やっちまった!?」


 あれほど白くて綺麗だった花からは、どす黒い赤い液体が滴り落ちている。綺麗な赤ではなく、ホラー映画の装飾品として使えそうな暗い赤。メルヘンだった光景が、一気に惨劇の現場の様相になってしまった。


「歌う場所、完全に間違えたな……大丈夫だよな? これって時間が経てば、元に戻るよな? ダンジョンだもんな?」


 もし戻らなかったらどうしよう、と不安になっていたその時だった。


「はぁ~……――ん?」


 ――ズシンッ


 どこからか地響きのような音と振動が伝わって来た。


 最初は、どこかで別の冒険者が戦っているのかと思った。ここに来るときも何人か見かけたから、その誰かだろうと。


 しかし。


 変化は、私の足元に現れた。


 ――ズシンッ、ズシンッ!


 その振動と共に、地面がもこっと盛り上がったのだ。


「っ!?」


 慌ててその場から飛び退る。モグラのモンスターか?と思ったが……それにしては大きすぎる。盛り上がっている地面の範囲は、今は赤い花畑全体に及んでいた。広さにすれば半径五メートルほどの円。 


 それが振動に合わせて。規則的に「ボコッ! ボコッ!」と何かが出てこようとしているよう。


 そして遂に、ソイツが姿を現した。


「何だよ、コイツ……」

「――キィイイ!!!」


 花畑だったのは、どうやら頭の上だったらしい。頭部に赤い花を生やした、植物の集合体。根っこの化け物のようなモンスターが、そこに出現した。

いかがでしたか?

エミリは未だに課題を解決できていない様子でした。さてMEGUMIさんがエミリに伝えたいことは何なのか? 次でそれが判明する、かも?

それに最後に出てきた怪物は一体!? という所で次の更新もお楽しみに!


次回の更新は明日を予定しています! お楽しみに~!


また読んでみて、面白い・続きが読みたいと思ってくださったら、ブックマーク・評価・リアクション(あと感想とか!)をくれると嬉しいです! 執筆の励みになります!

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