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完璧令嬢の辺境開拓記〜私を捨てた王太子が国を傾けている間、私は辺境を世界一豊かな地にし、私は運命の人と世界一幸せになります〜  作者: 虹の箸
辺境伯流スローライフ

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パテントコントロール

万能薬、エリクサーの噂は、瞬く間に大陸中を駆け巡った。

それに目をつけたのが、大陸の医薬品流通を牛耳る悪徳商業カルテル「大陸医療ギルド」である。彼らは戦争特需でボロ儲けしたハゲタカ資本家たちだった。

ギルドの代表、豪商ゴルドが護衛の傭兵団を引き連れて辺境伯邸に乗り込んできた。

「辺境伯殿、その万能薬は『人類の財産』です。人類の医療に関わる管理を任されている権我々ギルドに製造法を無償公開し、流通も我々が独占することになります。ご了承いただけなくば、残念ですが我がギルドの権限と権利において辺境伯領は医療ギルドから外れる事となり、結果として医療物資の流通の輪から外れる事となります、そうなれば今後は医療物資が正規ルートでこの辺境伯領に入ってくる事はないでしょう」

表向きは人道支援を騙りながら、実態は医療の独占と制裁による恫喝。このエリクサーを弱った患者や、エシュリオン中毒者に法外な値段で薬を売りつける気なのは明白だった。

あまりの辺境伯を舐めた条件に、レオンハルトが巨大な剣の柄に手をかけようとしたその時、クロードがスッと前に出た。

「わかりました。喜んで製造法は公開しましょう。ただし、我が領と王国の法律に基づき、特許利用契約にサインをしていただきます」

「特許……ですか、まあいいでしょう」

ゴルドは内心で嘲笑った。(レシピさえ手に入れれば、契約などいくらでも法の抜け穴で破れる。辺境伯の田舎貴族どもが考えそうなことだ)


数週間後。大陸医療ギルドの巨大工場では、ゴルドが怒り狂っていた。

「なぜだ!? レシピ通りに作っているのに、ただの猛毒にしかならんぞ!!」

彼らが何度やっても、薬は完成しなかった。それもそのはずである。

クロードが渡したレシピの工程表には、極めて小さな文字でこう書かれていたのだ。

工程3:溶液に対し、秒速340メートル(音速)の撹拌を5分間連続で与え、分子結合を破壊すること。

工程4:衝撃波(最低でも山を一つ両断する威力)を用いて、不純物を分離すること。

「こんな真似ができる人間が、この世にいるわけがないだろうがァァッ!!」

「――呼んだか?」

工場の天井が突如として吹き飛び、陽光を背にしたジークと、大剣を担いだルイーザ、ミラの筋肉母娘が笑顔で舞い降りた。彼らの背後には、裏社会を牛耳るキースの部下たちが、工場を完全に包囲している。

「な、なんだ貴様らは!? 傭兵団! 奴らを殺せ!!」

ゴルドの命令で数百人の武装傭兵が飛びかかるが――ルイーザが「あらあら♪」と大剣を軽く一振りしただけで、暴風が巻き起こり傭兵たちは全員天井の穴から空の彼方へ消え去った。

圧倒的すぎる暴力に腰を抜かすゴルドの前に、王国の法務官を引き連れたクロードが、冷酷な足音を響かせて歩み寄る。

「ゴルド殿。あなたは契約書第48条『特許製法の無断改変の禁止』に違反しました。音速での撹拌を怠りましたね? これは重大な知的所有権の侵害です」

「ふ、ふざけるな! あんな無茶苦茶な製法、お前たち一家にしかできないじゃないか!」

「ええ、その通りです。つまり、この万能薬の特許と製造ラインは、我々辺境伯一家が独占するということです」

クロードは悪魔のような冷たい笑みを浮かべ、分厚い書類をゴルドに突きつけた。

「違約したペナルティとして、契約書にある通り、あなたのギルドが持つ全資産、物流網、そして各国への債権を没収します。オズワルド王の特別法廷で、すでに合法的な差し押さえ令状は出ていますよ」

法と契約のパテント・トロール、そして逆らう者には規格外の物理制裁。

ゴルドは白目を剥いてその場に崩れ落ちた。


こうして、辺境伯領は大陸最大の「巨大製薬ファンド」へと変貌を遂げた。

エリクサーの価格は辺境伯領の裁量一つ。周辺諸国は、もはや辺境伯領の顔色を伺うしかなくなった。もし辺境伯領の機嫌を損ねれば、即座に薬の輸出が止められ国中がパニックに陥るからだ。

「今や大陸の命を握りました。

これで諸外国は、我が領に絶対に逆らえません」

クロードは執務室で、優雅に紅茶を傾けた。

「お前の頭の中は、マオ・キンよりよっぽど恐ろしいな……」

レオンハルトは、武人の力など必要とせず、ペンと契約書だけで世界を支配していく次男を見て、少しだけ背筋を凍らせるのだった。

お読みいただきありがとうございました。

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