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完璧令嬢の辺境開拓記〜私を捨てた王太子が国を傾けている間、私は辺境を世界一豊かな地にし、私は運命の人と世界一幸せになります〜  作者: 虹の箸
王都で悪はもうタイパもコスパも悪い

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南蛮渡の菓子

王都の経済を裏から牛耳っていた悪徳札差から、新王オズワルドへの忠誠を誓う「御用商人」へと生まれ変わった男、コーネリアス。

ある日、彼は王都奉行キンズリーから、秘密裏に呼び出しを受けていた。

「――単刀直入に言うぜ、コーネリアス。お前に一つ、大芝居を打ってもらいてえ」

キンズリーは凄みのある笑顔で、机の上に一枚の調査書を放り投げた。

「関税局の局長を務める役人の野郎が、禁制品である幻覚薬の横流しをして裏金を作っているらしい。だが、非常に用心深くてな。はっきりとした尻尾を掴ませねえんだ」

「……なるほど。そこでこの私の出番というわけですな、その役人の元へ取り入れと」

「ご名答だ。お前が賄賂を渡して、その現場を押さえたい。おとり捜査に協力してくれるか?」

かつてであれば、真っ先に裏で役人と結託していた側のコーネリアスである。

だが、今の彼は違う。命を救ってくれた若き新王のため、そして王都の経済を正しく回すため、彼は悪党の顔を完璧に作り直して不敵に笑った。

「承知いたしました、奉行閣下。……悪徳商人の振る舞いなら、誰よりも手慣れておりますゆえ


決行の当日。深夜。

関税局長・バルボアの豪華な私邸に、コーネリアスは分厚い木箱を持参して訪問していた。

「夜分遅くに失礼いたします、バルボア局長殿。本日は、ぜひ局長殿にお納めいただきたい品があり、参上いたしました」

コーネリアスは揉み手を作りながら、いかにも卑屈な作り笑いを浮かべて木箱を差し出した。

「ほう? 御用商人として羽振りの良いコーネリアス殿からの贈り物とは、興味深い」

肥え太ったバルボア局長が、脂ぎった顔を歪めて笑う。

「これは、南方なんばん渡りの菓子にございます。局長殿の、お口にあいますかどうか……」

コーネリアスが恭しく木箱の蓋を開ける。

そこには、表向きは異国風の甘い焼き菓子が並んでいたが……バルボアが菓子の隙間を指で探ると、その底には、眩いばかりに光り輝く『大金貨』が敷き詰められていた。

「どれどれ、ん? ……ほう、ほう!」

バルボアの目が、金貨の輝きを反射していやらしく見開かれた。

「これはこれは、うまそうな南蛮菓子よのう! 夜目にもピカピカと、金色に輝いておるわ!」

「へっへっへ。局長殿のお気に召したようで、何よりでございます」

バルボアは金貨の一枚を手に取り、うっとりとした顔でコーネリアスを見た。

「全く。御用商人という堅い肩書きを持ちながら、このような美味い菓子の隠し味を知っておるとは。……コーネリアスよ、お主も悪よのう」

「いえいえ、局長殿には敵いません。……では、例の禁制品の港の通過の件、なにとぞ『お目溢し』を」

コーネリアスが深々と頭を下げる。

「ふむ。まあ、このような珍しいものを貰っては、嫌とはいえぬよの。……よかろう、明日の夜に港を開けておく。存分に運ぶがよい!」

バルボアが高笑いを上げた――まさに、その瞬間だった。

「――その甘ぇ菓子、俺にも一つ相伴に預からせてもらおうか!!」

ドガァァァン!!

部屋の重厚な扉が、蹴破られるようにして派手に吹き飛んだ。

「なっ!? 何者だ!!」

驚愕して腰を抜かすバルボアの前に現れたのは、抜き身の刀を肩に担ぎ、肉食獣のように獰猛な笑みを浮かべた王都奉行・キンズリーだった。

「王都奉行所だ! 禁制品横流し、ならびに賄賂収受の現行犯! ……てめえら、全員ひったてい!!」

キンズリーの号令と共に、窓ガラスを割って数十人の完全武装した奉行所の役人たちが雪崩れ込んできた。

あっという間にバルボアの私兵たちは制圧され、役人たちによってバルボア自身にも厳重に手縄がかけられる。

「き、貴様ぁっ! キンズリー奉行! なぜここが……っ!」

バルボアは血走った目で周囲を見渡し、そして平然と立ち上がって衣服の埃を払っているコーネリアスを指差した。

「コーネリアス貴様! 私をハメたな! 裏切ったかぁぁっ!!」

絶叫する悪徳役人に対し。

王都最大の財閥の長は、冷ややかな瞳で見下ろし、威厳に満ちた声でこう言い放った。

「裏切りも何も、お役人様。私どもは最初から、国王陛下に忠誠を誓い、真っ当な商売しかしておらぬ。……汚い裏金に目が眩んだ、自らを顧みるが宜かろう」

「き、きさまぁぁぁぁっ……!」

ぐうの音も出ない正論を叩きつけられ、バルボアは完全にうなだれ、役人たちに両脇を抱えられながら絶望の底へと連行されていった。

「いやぁ、見事な千両役者ぶりだったぜ、コーネリアス」

嵐が去った後の部屋で、キンズリーが刀を鞘に納めながらニヤリと笑う。

「光栄です、奉行閣下。……しかし、私がこのような事をする世になるとは、巡り合わせとは不思議なものですな」

コーネリアスもまた、自身が演じた大芝居に少しだけ肩を揺らして笑った。

「これで、市場の流通を邪魔するダニが一匹減った。オズワルド陛下も、さぞお喜びになるだろうよ」

「ええ。全ては、王都の健やかなる発展のために」

元悪党だからこそ、悪党の心理を完璧に読み切り、手玉に取る。

最強の遊び人奉行と、清濁併せ呑む御用商人の強力なタッグは、こうして王都の夜の闇を払うのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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