表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完璧令嬢の辺境開拓記〜私を捨てた王太子が国を傾けている間、私は辺境を世界一豊かな地にし、私は運命の人と世界一幸せになります〜  作者: 虹の箸
辺境の凄腕暗殺者は、不器用な大剣令嬢にだけは甘く微笑む〜王都の悪党はすべて【根切り】にしますが、隊長殿への愛も止まりません〜』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/46

舐めんなよ、俺たちゃ……『強い』ぜ

王都の裏社会において、最近まことしやかに囁かれている噂があった。

「王都撃滅隊で恐ろしいのは、あの大剣を振り回す規格外の公爵令嬢と、凄腕の暗殺者である副長だけだ。あの二人さえ引き離せば、他の連中など恐るるに足らん」

王都南区の廃教会。違法な魔石の密輸を取り仕切る『黒蛇商会』の幹部たちは、その噂を信じて密かに会合を開いていた。

今夜、撃滅隊のルイーザ隊長とキース副長は別の大型任務で王都の北側へ出向いている。その隙を突いて、溜め込んだ裏帳簿と資金を持ち逃げしようという算段だった。

「ひひっ、上手くいくぜ。あの化け物二人がいない今、残っているのはただの烏合の衆だ」

幹部が下劣な笑いを漏らした、まさにその時。

「――おいおい。俺たちも随分と舐められたもんじゃねえか」

教会のステンドグラスが盛大な音を立てて砕け散り、月明かりと共に三つの人影が内部へと舞い降りた。

月光に照らし出されたのは、撃滅隊の象徴である「だんだら模様」の制服。

「な、なんだ貴様ら! 撃滅隊か!」

「ご名答。だが安心しろ、お前らの恐れる隊長も副長もここにはいない」

先頭に立つ筋骨隆々の男が、腰に差した二振りの剣をゆっくりと引き抜いた。

第一部隊組長、ガルド。かつて王都騎士団で「剣鬼」と恐れられながらも、上層部の腐敗に愛想を尽かして撃滅隊へ下ってきた歴戦の猛者である。

「ただし――俺たちに斬られる方が、よっぽど地獄だぜ?」

「ふざけるな、たかが三人で何ができる! 殺せ!」

幹部の号令と共に、数十人の傭兵たちが一斉に武器を構えて襲いかかってきた。

「ああもう、数が多くて面倒ですね。手っ取り早く『お掃除』してしまいましょう」

ガルドの後ろから、丸眼鏡をかけた細身の少女が呆れたようにため息を吐いた。

特殊工作員、エルマー。宮廷魔術師の地位を「実験の制限が多すぎる」という理由で蹴り飛ばした、天才にして危険な爆発物マニアである。

エルマーが指先でパチンと弾いた小瓶が傭兵たちの足元で割れると、凄まじい閃光と共に小規模な爆発が巻き起こった。

「ぐわぁぁっ!? 目が、目がぁっ!」

「怯むな! 魔法使いを先に殺れ!」

混乱する傭兵たちがエルマーに狙いを定めた瞬間、今度は教会の天井の梁から、黒い影が音もなく飛び降りた。

「よそ見してる暇なんてないよ。おじさんたち」

幼さの残る声と共に、空中から銀色の軌跡が何本も走る。

隠密特化の若き隊員、シオン。スラムで育ち、キースから直接暗殺術と投擲の技術を叩き込まれた、撃滅隊随一の身軽さを誇る少年だった。

シオンの放った投げナイフは、傭兵たちの武器を持つ腕や急所を、一寸の狂いもなく次々と貫いていく。

魔法の爆発と神出鬼没の暗器によって、傭兵たちの陣形は瞬く間に崩壊した。

そこに、ガルドの苛烈な二刀流が襲いかかる。

「オラァッ! 隊長と副長の手を煩わせるまでもねえ! 俺の剣のサビになりな!」

鋼の激突音と悲鳴が教会に響き渡る。

元騎士の圧倒的な剣技、元魔術師の厄介な魔法罠、そしてスラム育ちの容赦ない暗器。出自も戦い方も全く違う彼らだが、その強さと連携は完全に完成されていた。


一方、ガルドたちが南区の廃教会を制圧していたのとほぼ同時刻。

王都の歓楽街の地下深くにある、黒蛇商会傘下の違法カジノ兼、裏帳簿の隠し金庫。ここには、教会の連中とは比べ物にならないほどの重武装の用心棒たちが数十人規模で配備されていた。

「南区の教会が撃滅隊に襲撃されただと!? ええい、ここも危ない! 金庫の中身をまとめて、さっさと裏口から馬車へ運べ!」

カジノの支配人が血相を変えて怒鳴り散らす。

しかし、彼らが金塊や書類の束を麻袋に詰め込もうとした、まさにその時だった。

ドォォォンッ!!

頑丈な鉄格子の扉が、破城槌のような丸太を抱えた二人の男によって豪快に打ち破られた。

もうもうと立ち込める土煙の中から、紺地に灰のだんだら模様の制服を着た男たちが、次々と地下室へ雪崩れ込んでくる。

その数、およそ十名。ガルドたちのような幹部クラスではない、いわゆる「平隊員」たちだ。

「なんだこいつら!? 隊長の女も、副長の暗殺者も、幹部連中もいねえぞ! ただの下っ端どもだ、やっちまえ!」

用心棒たちが一斉に抜刀し、怒号を上げて十人の隊員たちに殺到する。

しかし、撃滅隊の隊員たちは、多勢に無勢の状況でも誰一人として怯むことはなかった。

「一番隊、前衛! 盾を構えろ! 二番隊は遊撃、横へ散れ!」

隊員の一人――顔に大きな傷のある男が鋭く指示を飛ばす。

すると、前衛の三人が瞬時に分厚い大盾を構え、用心棒たちの凶刃をガキンッ! と完璧な連携で弾き返した。そして、相手の体勢が崩れた一瞬の隙を突き、盾の影から短い槍を正確に脚へと突き立てる。

「ぎゃあっ!?」

「ひぃっ、こ、こいつら……っ!」

「よそ見してんじゃねえぞ!」

前衛が作り出した隙を縫うように、今度は身軽な元狩人の隊員二人が壁を蹴って宙を舞い、手にした捕縛用の投網とボーラ(投げ縄)を放つ。

逃げようとしていた支配人と幹部たちは、あっという間に網に絡め取られ、床に無様に転がった。

「ちくしょう! ならば魔法で……っ!」

後方にいた魔術師が詠唱を始めようとするが、それより早く、後衛の隊員たちが放ったクロスボウの矢が、魔術師の杖を正確に撃ち落とす。

「詠唱が遅えよ。ウチのエルマーさんなら、お前が息を吸う間に三発は爆発させてるぜ」

クロスボウを構えた隊員が、ニヤリと笑って鼻を鳴らす。

ルイーザやキースのような「一騎当千の化け物」ではないかもしれない。

だが、この十人の平隊員たちもまた、キースの苛烈な暗殺訓練を生き抜き、ルイーザの背中を見て育った『だんだら模様の群狼』である。元傭兵、元騎士、スラムの用心棒、裏社会から足を洗った者……彼らの連携は一個の軍隊のように完成されていた。

「よし、制圧完了! 刃向かう奴は峰打ちにして縛り上げろ! 殺すなよ、隊長殿に怒られるからな!」

「分かってるよ。だが手加減して逃がしでもしたら、今度はキース副長から『特別訓練』という名の地獄のしごきを受ける羽目になる。……あっちの方が何倍も恐ろしいからな」

隊員たちは冗談口を叩き合いながらも、手際よくロープを使って数十人の用心棒を次々と芋虫のように縛り上げていく。彼らの動きには一切の無駄がなく、違法カジノの制圧はわずか数分で完璧に完了してしまった。


「おーい、お前ら! 終わったかー!」

そこへ、南区での『お掃除』を終えたガルド、エルマー、シオンの三人が、呑気に手を振りながらカジノの地下へ合流してきた。

「お疲れ様です、ガルド組長。こちらのネズミは全員捕縛済みです。帳簿と金塊もきっちり押さえましたよ」

顔に傷のある隊員が、縛り上げた支配人を足下に転がしながら報告する。

「おう、相変わらず手際がいいじゃねえか! さすがは俺の見込んだ野郎どもだ!」

ガルドが満足げに隊員たちの肩をバンバンと叩く。

「当然です。俺たちだって、いつまでも隊長と副長の後ろに隠れているわけにはいきませんからね」

「ああ。あの気高い隊長殿に安心して背中を預けてもらえるように、俺たちも腕を磨かなきゃならねえ。……それに、あの副長から『使えない』と判断されたら、いつ夜道で消されるか分かったもんじゃないですしね」

隊員の一人が肩をすくめて笑うと、他の十人も「違いない」「副長が一番おっかない」とどっと声を上げて笑い合った。

突出した個の力を持つ幹部たちと、それを完璧にサポートし、単独でも任務を遂行できる精鋭の平隊員たち。

身分の違いや過去の罪を超え、「王都の浄化」という一つの目的のもとに集ったこの最強の集団がいる限り、悪党たちが抱いていた、あの『二人』さえいなければ、という淡い期待は永遠に叶うことはない。

王都撃滅隊の牙は、その末端に至るまで研ぎ澄まされた鋭さを誇り、今夜も容赦なく悪の喉元へと食らいつくのである。


お読みいただきありがとうございました。

もし「面白かった!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、ページ下部にある【ブックマークに追加】や、【☆☆☆☆☆】の評価を押して応援していただけると、今後の執筆の何よりの励みになります!

次回もどうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ