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完璧令嬢の辺境開拓記〜私を捨てた王太子が国を傾けている間、私は辺境を世界一豊かな地にし、私は運命の人と世界一幸せになります〜  作者: 虹の箸
辺境の凄腕暗殺者は、不器用な大剣令嬢にだけは甘く微笑む〜王都の悪党はすべて【根切り】にしますが、隊長殿への愛も止まりません〜』

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辺境からの粋な計らい?関係ないぜ、今日も元気に悪を斬る

王都から遠く離れた、北の最果て。

今や王国で最も豊かで平和な地となった辺境伯領の執務室で、セレスティアは王都から届いた分厚い報告書に目を通し、ふわりと微笑んだ。

「王都撃滅隊の活躍、凄まじいようですわね。ルイーザもキースも、見事に王都の掃除をこなしてくれていますわ」

「ああ。俺の部下で一番腕と頭が立つ男と、君の妹君が組んだんだ。負ける要素がない」

向かいのソファでコーヒーを飲んでいたレオンハルトが、誇らしげに目を細める。

しかし、セレスティアは報告書を机に置くと、少しだけ真面目な顔つきになった。

「ええ、実力については何の心配もしておりません。……ですがレオンハルト様、一つだけ『政治的』な問題がありますわ」

「政治的な問題?」

「はい。撃滅隊の隊長は、グランチェスター公爵家の次女であるルイーザです。対して、実質的に部隊の指揮と汚れ仕事を一手に引き受けている副長のキースは、平民の……しかも元暗殺者という無爵の身。王都の貴族社会において、公爵令嬢の隣に立つ男が無位無冠というのは、不要な反発や侮りを生みかねませんわ」

セレスティアの完璧な頭脳は、彼らが現場で余計な苦労をしないよう、すでに先を見据えていた。

「それに、これほどの働きをしてくれているのですから、相応の『褒美』が必要です。……お父様に手紙を書きましょう。キースの身分の件、お父様ならば最高の手回しをしてくださるはずですわ」


数日後。王都の公爵邸、執務室。

セレスティアからの手紙を読み終えたグランチェスター公爵は豪快な笑い声を上げた。

「わっはっは! 相変わらずセレスティアの奴は、恐ろしいほど気が回るわい! だが、確かにあやつの言う通りだ」

公爵は手紙を机に置き、窓の外――王都の街並みを見下ろした。

ルイーザとキースが率いる撃滅隊のおかげで、街の治安は劇的に回復している。特に、裏の仕事を完璧にこなすキースの腕と知力には、公爵自身も舌を巻いていた。

「身分違い、か。……まあ、ルイーザのやつも、あの男を随分と『特別』な目で見始めているようだからな。親としては、娘の隣に立つ男の箔付けくらいはしてやらねばなるまい」

公爵はニヤリと笑うと、羽ペンを手に取り、新たな叙爵の書類にサインを書き殴った。

「よし。撃滅隊副長キースに、王都の治安維持の多大な功績を讃え、一代限りの『男爵位』と、公爵家直属の『特務騎士』の称号を与えることとする。……これで、文句を言う貴族の口も物理的・政治的に塞げるというものだ」

辺境の完璧令嬢と王都の公爵による政治的根回し。

これによってキースは、晴れて公爵令嬢の隣に立っても恥じぬ「貴族」としての地位を約束されたのである。

――だが。

そんな上層部の粋な計らいや政治的な事情など、現場で血と泥にまみれる当人たちにとっては、「今はそれどころではない」のだった。

そして今日も悪党どもは宙を舞うのだった。


「そこまでですわ、悪党ども! 貴方たちの悪事も今日で年貢の納め時ですわよ!!」

**ドガァァァァァンッ!!**

王都西区の違法カジノ兼、密輸組織のアジト。

堅牢な樫の木の扉が、ルイーザの放った大剣の一撃によって木っ端微塵に粉砕された。

「ひぃぃっ! 王都撃滅隊だぁっ!!」

「逃げろ! あの女の剣に当たったらミンチにされるぞ!」

阿鼻叫喚の悲鳴が響き渡る中、だんだら模様の制服を着た隊員たちが次々とアジトに雪崩れ込み、抵抗する悪党たちを容赦なく叩きのめしていく。

「逃がしませんわ! 峰打ちにして差し上げますから、大人しく縛られなさい!」

ルイーザが涼しい顔で大剣の腹を振るうたびに、大の大人が数人まとめて宙を舞い、壁にめり込んで気絶していく。(※なお、彼女は峰打ちのつもりだが、大剣の質量ゆえに悪党たちは全員大怪我している)。

「ははっ、相変わらず隊長殿の『峰打ち』は豪快だねぇ。こっちの仕事が減って助かるよ」

その混乱の只中、将校服を着たキースが、逃げようとする組織の幹部の足を暗器で正確に撃ち抜きながら、飄々と笑っていた。

「キース副長! 雑談をしていないで、そっちの裏口を塞いでくださいませ! 一匹たりとも逃がしませんわよ!」

「はいはい、仰せのままにお姫様」

「っ……! お、お姫様と呼ぶなと言っていますでしょう! 私は隊長です!」

戦闘のど真ん中だというのに、キースにからかわれたルイーザは顔を真っ赤にして怒鳴り返す。そのやり取りを見慣れている隊員たちは、「またやってるよ」と苦笑しながら悪党の縛り上げ作業を淡々と進めていた。

身分がどうだとか、貴族の体面がどうだとか。

そんな小難しいことは、今の彼らには一切関係がない。

「さあ、全員捕縛しましたわね! キース副長、屯所へ戻って尋問の続きですわよ!」

「了解。終わったら、美味い茶でも淹れてやるよ、隊長殿」

「……お、お茶くらい、わたくしが自分で淹れられますわ!」

プイッと顔を背けながらも、その耳まで赤く染まっているルイーザを、キースは愛おしそうに細めた切れ長の目で見つめながら、後に続く。

辺境の姉夫婦からの温かい計らい(叙爵の知らせ)が彼らの屯所に届くのは、もう少しだけ先の話。

今日も今日とて、王都撃滅隊の面々は元気に、そして超法規的かつ物理的に、王都の悪を粉砕し続けるのであった。


お読みいただきありがとうございました。

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