同士としての…
津波のように吹き荒れる漆黒の魔力を肌で直接受けながら、ジークは微塵も怯むことなく、むしろ最高に愉快そうに快活な笑い声を上げた。
「ふむ……これは少しまずいことになったな。どうやら俺は、目覚めさせてはならないものを目覚めさせてしまったかもしれない!」
物理最強のバケモノすら戦慄し、歓喜するほどの圧倒的な力。
しかし、その力の中心に立つ
カナタの表情は、どこまでも凪いでいた。
「いや、まだ相手をしてもらわねば困ります」
カナタは静かに魔力剣を構え直し、ジークを真っ直ぐに見据えた。
「今の僕がどこまで強くなったのか。どんな敵が相手なら倒せるのか。そして……この特区の、大切な仲間たちを確実に守り抜けるのか。トップとして、己の戦力の限界値を正確に把握しておかなければならない」
それはもう、闘技場の修繕費に怯える経理官の顔ではなかった。
自らの力で全てを背負い、守り抜く覚悟を決めた者の顔だった。
「だから――もう少しだけ、僕にお付き合い願います」
その堂々たる魔王の宣言に、闘技場は熱狂すら忘れて息を呑んだ。
『……王というものには、一個の「自分」があってはならない』
熱狂から一歩引いた実況席で、凄まじい魔力風に純白のマントを揺らしながら、新王オズワルドが静かに唇を開いた。
「個人の感情や、目先の小さな事象で右往左往することなど許されない。王とは、人のため……いや、国家という巨大なシステムを過たず稼働させるための、ひとつの『機関』に過ぎないからだ」
隣で息を呑むチャチャとゴードンに視線を向けることもなく、オズワルドは闘技場の中央で覚醒した魔王を、どこか同志を見るような、優しくも鋭い目で見つめていた。
「あの青年は、その真理に辿り着いたのだ。小さな自我を手放し、全てを統べる王という機関になる覚悟をね。……ふふ、今後のこの特区の発展が、実に楽しみだよ」
一国の主であるオズワルドのその言葉は、カナタが真の王として完成したことへの、何よりの賛辞であった。
「ふははははッ! 良い顔になった! やはり俺の見込んだ男だッ!」
ジークが嬉しそうに吠え、黒鋼の大槍を大上段に構える。
「来い、魔王カナタ! お前のその覚悟がどれほどの重さか、俺の全力をもって測ってやろうッ!」
「……行きます!」
大地が爆発し、二つの規格外の力が再び激突する。
己の全てを出し切る歓喜に燃える最強の武人と、守るべき者のために己の力の底を測ろうとする魔の王。
特設闘技場を揺るがす大将戦は、誰の目にも見えない神速の領域のままフィナーレへと向かって加速していった。
お読みいただきありがとうございました。
もし「面白かった!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、ページ下部にある【ブックマークに追加】や、【☆☆☆☆☆】の評価を押して応援していただけると、今後の執筆の何よりの励みになります!
次回もどうぞよろしくお願いいたします。




