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 「お二人が、その、恋人関係になられたきっかけは?」

 

 聞きにくそうに切り出したリュカに、待ってましたとばかりに手を叩くカリン。


 「やっぱそこ気になるよなぁ!どっちが最初に言い出したと思う?」


 「今のステラ様を見る限り、あまり積極性はなさそうですから…。やはりカリン様から?」


 にっ、と歯をむき出して笑い、カリンは首を横に振った。


 「それが違うんだよなあ。正直言って、私はこいつのこと可愛い妹くらいにしか思ってなかった。何言っても大人しく従うし、やたらと世話焼きなんだよ。朝は早起きして、私が寝坊しないように起こしてくる。で、起きたらもう朝食ができてんだよ。しかもそれが、美味いのなんのって」


 「う、嘘だ。私が起こすまでぐうたら寝てるステラ様が早起きなんて」

 

 ミアたちと旅を始めてから、ステラが真っ先に目を覚ましたのは今朝が初めてのことだった。早起きというより、深夜から徹夜していただけだが。

 

 「甲斐甲斐しいやつだろ、ステラは。そうそう、ご飯作ってくれるだけじゃない。何かと私の身の回りの世話もやってくれて、一緒に旅してる時は楽だったなあ。で、そんな姉妹みたいな関係が続いてたんだけどさ。ある満月の夜のことだよ。川辺で野宿してた時、ステラがうなされてたんだ。悪い夢を見たんだろうな。ずっと苦しそうに呻いてたから、起こしてやったんだよ。その時訊いた。どんな夢だったんだって」

  

 あの時の夢ははっきり覚えている。二人で旅をして一年くらい経った時のことなので、今からもう4年近く前だが、夢の内容はつぶさに思い出せる。


 「なあ、どんな夢だっけ?ステラ」


 「…なんでまた訊くの。知ってるくせに」


 「忘れちまったから、もっかい教えてくれよ」

 

 カリンがニタニタと笑い、アーモンドミルクを飲み干した。よくもまあ、あんなまずい飲み物が飲めるものだ。


 「…なくなる夢」


 「ん?」


 「カリンが、いなくなる夢」


 夢の中で、カリンは戦死した。魔物の攻撃からステラを守って、その命を散らした。息も絶え絶えにカリンが言った言葉は聞き取れなかったが、夢でステラは泣いていた。実際の戦場で泣きじゃくっていては、格好の的にされて終わりだ。だがステラは、動かなくなったカリンの体を抱きしめて嗚咽を漏らしていた。目が覚めた瞬間、滝のような汗が吹き出ていたのを覚えている。


 「こいつさ、目覚めたあとも泣いてたんだ。ただの夢だぞ?しかも大人の女が、悪い夢くらいで情けない。ま、可愛い泣き顔が見れたからよかったんだけど。そのあといきなりステラが抱きついてきたんだよ」


 「カリン、もうそのへんに…」


 「続けてください。ステラ様の過去、知れば知るほどイメージとの乖離がすごいですが、非常に興味深いです」


 ミアが鼻息を荒くした。


 「すげえ強い力で抱きしめられたよ。そして言ったんだ。どこにも行かないで、って」


 「ほぉ…、なんというか…、へえ…ステラ様もなかなか…」


 ミアはしばらく言葉を選ぼうとしていたが、適切な感想が見つからず、「へへっ」と含み笑いを漏らした。

 

 火照った体を冷まそうと、まずいミルクを一気に飲んだ。喉に引っかかるような不愉快な甘さ。ほかの客が飲んでいる酒が、心底美味そうに見える。

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