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ステラに対する生意気な態度はどこへやら、カリンに威圧されて縮み上がったミアは、すっかり腰が抜けてしまっていた。
「あなた、ミア様に失礼じゃありませんか。こんなに怯えて、可哀そうに」
震えるミアを庇い、リュカが間に割って入った。
「ああん?」
カリンに睨み上げられて、身が竦まない人間のほうが珍しい。隙を見せれば喉元を切り裂いてきそうな獰猛さ。出会ったばかりの人間に向けるにはあまりに強すぎる威圧感に、リュカもたじろいでいた。
「そ、そんな睨まないでいいじゃないですか」
「お前もステラの仲間か?パーティーに男入れてんのかよ」
「女ですけど!」
リュカの抗議を興味無さそうに聞き流したカリンが、ステラの頭をわしゃわしゃと撫でてきた。
「にしてもお前、今までどこにいたんだよ。あっちこっち探し回ったんだぞ?そのついでにいくらか魔王の配下も倒しちゃったよ。ほんといあいつら、たいしたことねえよな」
「なんだか最近、妙に魔王の軍勢が大人しいと思ってたんだけど、まさか」
「ああ、私が駆逐して回ってたからじゃね?でもそんなのついでだよ、ついで!ステラに会いたくて国中駆けずり回ってたんだから。なあ、なんで急にいなくなったんだよ。何も言わずに去るなんてお前らしくない」
「あー…、その、うん」
言葉につっかえているステラが、さぞかし新鮮だったのだろう。ようやく足腰に力が戻ったミアが、目を丸くしている。
「ど、どうしたんですかステラ様。なんだかいつもと雰囲気が違いすぎますよ。不気味です。災厄の前兆ですか」
言い返してやりたいが、今のステラにはそれができない。代わりにミアにだけ見える角度で、眉を吊り上げて睨んでおいた。
「なんだよ、ちっこいの。いつも通りのステラだろ?こいつは昔から大人しいやつだった。話しかけても全然心を開かないし、ずっとうじうじしてやがんの。ま、それが可愛いんだけどさ」
カリンが肩を抱き寄せ、動物を愛でるように顎の下を撫でてきた。
「あのステラ様が…顎を撫でられて無抵抗…?あ、なにちょっと気持ちよさそうにしてるんですか。そうか、これは夢ですね。私はまだ宿で寝てるんだ。リュカ様と一緒のベッドですやすやと。そうに決まってます。こんなのステラ様じゃないもん」
現実逃避を始めたミアの横で、リュカも化け物を見るような目をしている。
「失礼ですが、カリン様、でしたっけ。あなたの知っているステラ様とこちらの方は、おそらく別人かと思われます。そちらのステラ様は、私たちのパーティーを率いるリーダー。そんな愛玩動物みたいな扱いを受けて、甘えた顔をしてるような人じゃありません」
「お前が知らないだけだろ?ステラはこういうやつだよ。なあ?」
カリンが右の頬を、ステラの左頬にくっつけた。
「ていうか髪型変えた?後ろでまとめてるのも似合ってるけど、昔みたいに前髪下ろしてるほうがかわいいぞ」
「ちょ、やめ…」
束ねていた髪を解かれ、勝手に前髪で額を隠された。ミアたちには初めて見せる姿だ。
ミアとリュカは、前髪を下ろしたステラを前にして固まった。
「誰ですか」
「ここまで雰囲気変わるのですね」
「ステラ様のガサツな感じが…だいぶ薄れましたね。なんか普通に女の子みたい」
ミアの失礼な発言に、いつものように噛みつけないのが悔しい。
「やっぱお前はそっちのほうがいいな。久々の再会なんだ。ゆっくり食事でもしようぜ」
ステラの腰に手をまわして歩き出したカリン。その後ろを、ミアとリュカが付いてくる。
「なんで付いてくんだよ!しっ、しっ!」
「私たち3人パーティーなので。ステラ様に変なことしないか、私が監視します」
ミアの威勢はいいが、リュカの後ろに隠れながら言っているので、まだカリンへの恐怖心は薄れていないらしい。




