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 宿に帰っても二度寝はできなかった。気づけばもう朝日が昇っている。別室で寝ている2人はもう起きているだろうか。


 「おはよう、起きてるか?おーい、ミア、リュカ?」

 

 扉をノックしても返事がない。鍵はかかっておらず、ノブを回すと扉が開いた。

 

 「寝てるのか?もう起きる時間だ、入るぞ」

 

 許可なく入ればミアが怒りそうだが、返事がないということは寝ているのだろう。放っておいたらいつ起きてくるか分からない。いつもは早起きなミアにステラが起こされているが、今日は珍しく立場が逆転した。


 「げっ」

 

 部屋に置かれたベッドは、ステラが寝ていたものと同じ大きさだ。一人で寝るのにちょうどいいサイズで、二人で使うとかなり狭いはず。だがミアとリュカは、二人で一つのベッドを使っていた。


 「朝からなんてもんを見せられてるんだ、私は…」

 

 ベッドの面積の大半は、ミアが占領していた。中心に陣取り、仰向けに寝転がっている。小さな胸が呼吸に合わせて上下しており、ステラの入室に気づく様子もなく眠り続けていた。残り2割程度の面積で細くなっているのがリュカだ。体を横向きにして、壁とミアとの間に空いたわずかなスペースに収まっている。

 

 「あ…おはようございます、ステラ様…」

 

 さすがにその寝相は苦しく、眠りが浅かったらしい。目を覚ましたリュカが、上半身を起こして、手の甲で目をこすった。妙に仕草が猫っぽいのは、呪いの影響だろう。


 「君はもっと文句を言ったほうがいい。なんて不公平なベッドの使い方をしてるんだ」


 「ミア様がゆっくり眠れるなら、それで…」

 

 「私を別室に追いやって、昨夜はさぞかしお楽しみだったのか?」


 「なっ、誤解です!」

 

 リュカがベッドの上で跳ねると、その振動でミアも目を覚ました。

 

 「うぅー…、もう朝ですか。おはようございます、リュカ様。え、なんでステラ様もいるんですか」


 「朝一番のセリフがそれか。ミアに追い出されて、寂しい夜を過ごしていたよ」

 

 「やはり別室だと静かでいいですね。いびきも歯ぎしりも聞こえなかったので、ぐっすり眠れました」


 ミアは姿見の前で簡単に髪を整えると、ベッドに座りなおした。膝をそろえて座り、ぽんと自分の太ももあたりを叩く。


 「リュカ様。どうぞ」

 

 「え?」

 

 「ここに頭を乗せてください」

 

 「な、何をするつもりなんですか?」

 

 「なにって毛繕い…あっ」


 ミアが慌てて立ち上がった。

 

 「す、すいません。昨日猫ちゃん状態のリュカ様と遊んでいたので、つい!あの子、膝枕で毛繕いしてあげると喜ぶんですよ」


 ミアはすっかり呪いの獣人を手懐けているようだ。窮地を救ってくれたミアに懐いていたのは知っていたが、大人しく毛繕いされるほどとは。もはやミアが飼い主のようになっている。

 

 「わ、私ミア様に膝枕されて…?」

 

 「気にしないでください!あれはほら、リュカ様じゃありませんから。な、なんですかステラ様、その顔」


 「いや、朝から見せつけてくるなと思ってさ。いいから朝食食べに行くぞ。顔洗って着替えてきなさい」


 窓から差し込む朝日が照らす二人の顔が赤いのは、光のせいなのだろうか。

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