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 眉目秀麗の王子がそこにいた。眩しくて目が開けていられないのは、男装したリュカがあまりに輝かしいからか、それともミアが繕った衣装が煌びやかすぎるからか。おそらくどっちの理由でもある気がする。

 

 「どうですか、私のコーディネートは!」

 

 「うん…素材はいいんだけどさ、衣装がギラギラすぎないか?」

 

 体の前面に並んだ大きなボタンに閉じられ、腰のラインがぴっちりと強調されたスタイル。鍛え上げられた筋肉の中に、女性的な曲線もちらりと覗くリュカの体形の良さが、これでもかというくらいに主張させられている。腰に巻かれたベルトには金細工が施されており、青い服の生地に対して赤の宝石が差し色として埋め込まれていた。


 「あ、あんまりジロジロ見ないでくださいよ」

 

 リュカにとって鎧は、身だけでなく心も守る防具だ。それを脱がされた今、見た目は男に寄ったが、中身はずいぶんとしおらしくなってしまった。まるで身ぐるみをすべて剥がされたみたいに、恥ずかし気にもじもじとしている。


 「こんなの歩いてたら見るだろ」

 

 「いやぁ、かなり悩んだんですよ。リュカ様に似合うのはどんな衣装か。色と装飾品の選定にも時間がかかりました。でも私的には満足の出来栄えなんですが、ダミアン様はどう思われますか?」

 

 自分のために犠牲になったリュカを前に、ダミアンはなにを思うのだろう。屈辱に耐えるリュカに同情心を抱き、やっぱりやめようと言い出す。そんな可能性もステラは考えた。リュカもそれを期待しているのか、すがる様な視線をダミアンに向けていたが…。

 

 「素晴らしいです、リュカさん!僕の直感は間違ってなかったんだ。あなたなら僕の代わりになれる。ジェイドを口説き落とせるに違いありません!」

 

 「ぁぁぁ…」

 

 失望の声がリュカの口から漏れた。

 

 「では決まりですね。案内してください、ダミアン様。ジェイドさんのところへ。ほらリュカ様、行きますよ」

 

 異様なほどに浮足立っているミアは、浮遊魔法を覚えていないはずなのに、地面からわずかに浮いているようにさえ見えた。

 

 道行く人は、この奇妙な4人組を見てなんと思うのだろうか。凛と咲く大輪の花のような王子、もといリュカ。その横にべったりとくっつき、蕩けた笑みを浮かべているミア。最後尾を歩くステラは、王子の護衛か何かだと思われているかもしれない。ステラとミアの間に挟まれたダミアンは、正体を隠すためにフードを目深に被っている。ダミアンがいるせいで、一層パーティーの怪しさが増してしまう気がする。


 街の住民の近くを通るたび、ひそひそと囁く声が聞こえてきた。

 

 「ほら、絶対目立ってるんだって。男装させるにしても、もう少し自然な感じにするとかさぁ。ほかにもやりようがあっただろ」

 

 「なにが不満なんですか。こんなに麗しいのに」

 

 「悪目立ちして良いことなんてないって」

 

 「悪目立ちなんかじゃありません。忘れたんですかステラ様。これからリュカ様はジェイドさんを口説きに行くんですよ。こうしてリュカ様を見せびらかすように歩いていれば、勝手に街の人が噂をしてくれます。ジェイドさんに謁見する前に、その噂が本人の耳に届いたほうが、事がうまく進むと思うんです。どこかの国からやってきた王子様が、行き遅れたクラレーヌのお嬢さんを嫁にもらいにきたぞって」


 ミアの計算高さには驚かされる。ダミアンの提案を受けてからまだ数時間だというのに、ジェイドに取りいる算段まで立てていたようだ。パーティーの中で最年少でありながら、その頭の回転の速さは侮れない。

 

 「いいのかリュカ。ミアに振り回されっぱなしだぞ」

 

 「あ、はい…。もう好きにしてください」

 

 「リュカ様、もっと堂々と胸を張って歩いてください。あなたは今、女戦士ではなく王子様なんですから!」

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