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 仕立て屋に持ち込む素材選びは、ミアに一任された。

 

 「リュカ様にはこのシルク素材が…、うーん、いやでもこっちのベルベッドも捨てがたいんですよね。自然な雰囲気を出すか、思い切って高貴な感じでいくか。やはりリュカ様のカッコよさを引き立てるには、ベルベット生地のほうがいいかな。だとすると次は色ですよね。リュカ様が前にお召になってた青いドレス。あれ素敵でしたし、今度も青で。いや、そこをあえて赤というのも…。ステラ様はどう思いますか!」

 

 「何色でもいいんじゃないか。リュカなら何着ても様になるだろ」

 

 「真面目に考えてください」

 

 シルクで叩かれたが、痛みはなかった。柔らかい生地がさらりと肌を撫でていく。


 「だって私が着る服じゃないし、おまけに男装だろ?知らないよ男のファッションなんて」

 

 「女らしい格好もしてないくせに」

 

 「鎧が勇者の正装なんだ」

 

 買出しに来てから口数が増えたミアとは対照的に、露骨に元気がなくなっているのがリュカだった。

 

 「私、ほんとに男装するんですか。ミア様、今からでも考え直してくれたり…」

 

 ミアは首を横にゆっくり振った。

 

 「…しませんよね」

 

 無言の圧に、リュカも観念した様子だ。

 

 長い時間をかけて選んだ生地を仕立て屋に持ち込んだミアは、店主に対してあれこれと注文を付けている。ステラとダミアンの2人は店の外で待たされ、店内から漏れてくるやり取りを聞き流していた。店主とミアがデザインについて相談する声しか聞こえてこないので、店内に連れていかれたリュカが黙りこくっているのが想像できる。

 

 「急なお願いを聞いていただいてありがとうございます。皆さんにはなんと感謝すればいいか」


 「なあに、気にするなって。あの通りミアも楽しそうにしてるしな。男装させられる本人は乗り気じゃないみたいだが」

 

 「一目見た時に思ったんです。リュカさんなら僕の代わりになれる。ジェイドの好みにぴったりだって」

 

 「確かに似てるよなあ、君とリュカは」


 傾国の美女ならぬ、傾国の美男。ダミアンにお似合いの称号だ。その美貌で国一つが傾いたとしても不思議ではない。

 

 「作戦が成功したとして、そのあとのプランは考えてるのか?」

 

 「具体的なことは何も。リュカさんがジェイドを口説き落として僕のことを忘れてくれたら、クラレーヌ家の影響力が届かない、どこか離れた土地で暮らそうかと」

 

 「よっぽどジェイドと関わりたくないんだな。なんだかどんなやつか気になってきたよ」

 

 ジェイドの話題になると、ダミアンの目に影が落ちる。あまり触れないでおこう。

 

 「お待たせしました!いやはや、すごいですよこれは。ステラ様とダミアン様、心の準備はよろしいですか?」

 

 顔を上気させたミアが仕立て屋から出てきた。肌寒い季節だというのに、額に汗が浮かび、前髪が張り付いている。

 

 「いいから早くお披露目してくれよ。男装したリュカが奥にいるんだろ」

 

 「えー、どうしましょうね。一気に見せるのも勿体ないですし」

 

 背後にいるリュカとステラを交互に見て、だらしない笑みを浮かべるミア。酒に酔った時のリュカといい、このパーティーの人間にはどうも面倒くさい一面がある。

 

 「それじゃどうぞリュカ様、出てきてください」

 

 「は、はい…」

 

 ミアの後ろから出てきたリュカの姿に、ステラは思わず感嘆の声を漏らした。

 

 「おぉ…」

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