表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/109

53

 ミアを生贄にして侍女を復活させるというラミアの計画は、どういうわけか中止となった。何がラミアの心を変えたのだろう。リュカは安堵の息を吐いて構えた剣を下げたが、ステラはまだ気を緩めていなかった。

 

 「生贄が必要ないからミアを返してもらおうか。しっかり呪いは解いた上でな」

 

 「あら、それは無理。誰が返してあげるって言った?」

 

 ほら見たことか。どうせなにか思惑があるに違いない。

  

 「殺すのはやめると言っただけ。考えが変わったの。私の可愛い侍女、フィオナの魂はまだここに残ってる。それを移してあげるのよ。僧侶ちゃんにね」

 

 フィオナというのが、ラミアを慕っていた侍女の名前らしい。その名前を口にした時のラミアの声は、愛おしい過去の日々を思い返すように甘い響きを孕んでいた。


 「肉体は滅びても魂はずっと残り続けてるからね。フィオナそっくりの僧侶ちゃんの魂と入れ替えちゃおうってわけ」

 

 「ふざけるな!」

 

 ラミアに斬りかかろうとしたリュカを押しとどめる。

 

 「落ち着け。ラミア、お前の言ってることはおかしいぞ。フィオナという侍女を復活させたいんだろう?だったらなぜミアを生贄にせず、魂を移すなんてことするんだ。ミアにソフィアの魂が乗り移ったとしても、それはソフィア本人と言えないだろ」

 

 「ああ、そんなこと。僧侶ちゃんの肉体を使う理由は単純」

 

 ラミアが棺を蹴とばした。あんなに大事そうにしていたソフィアのミイラが転がり出て、バラバラに砕けた。

 

 「こっちのほうが可愛いからよ」

 

 ラミアの舌は、蛇と同じく先が二つに分かれていた。人間のものとは形状の違うその舌で、ミアの首筋を、耳を、鼻を舐めていく。 

 

 「…っ」

 

 身じろぎするミアを後ろから抱きしめて動きを封じ、丁寧に手入れされた栗色の髪に顔を埋めるラミア。

  

 「ミアのほうが可愛いから、ソフィアの魂だけ移して肉体はポイってか。自分を慕っていた侍女をごみのように捨てるなんて、お前の倫理観どうなってるんだ」

 

 「だって今の子のほうが顔もスタイルもいいでしょ。私の時代は食べ物も今ほど栄養あるものじゃなかったし、ソフィアの肉体も貧相だった。僧侶ちゃんと顔がそっくりって言ったけど、よく見たらこの子のほうが断然かわいいわ。あ、でも僧侶ちゃんの魂は消しちゃうから、そこはよろしく」


 魂が消えるということはつまり、ミアという人格はこの世に存在しなくなる。ラミアはミアを魂の入れ物として扱うつもりだ。そんな勝手なこと、許せるはずがない。


 「リュカ、2人で攻撃するぞ。左右から挟み撃ちだ。いいか、冷静になれよ。一歩間違えればミアとは二度と会えなくなる。呪いを解くためにも、殺してはだめだ」

 

 「承知しました。必ずミア様を取り戻してみせます。あの下劣な蛇女から!」

 

 ステラとリュカが臨戦態勢に入っても、ラミアの余裕は崩れなかった。それどころか、ミアの耳の中に舌を入れる始末。

 

 「ぅ…ぁぁ…」

 

 ミアの抵抗は激しくなるが、ラミアの力強い束縛からは逃れられない。

 

 「すみませんステラ様。やっぱり殺してしまってもいいですか」

 

 「お楽しみは呪いを解いたあとに取っておこう。煮るなり焼くなり、爪剥がすなり脳みそ引きずり出すなり、リュカの好きにすればいいさ」


 ミアを危険に晒されたことへの、リュカの怒りは相当なものだ。戦いに勝った暁には、ラミアが一体どんな無残な姿にされてしまうのか、想像するのも恐ろしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ