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敵意むき出しの動物以外まったく生命の息吹を感じなかった村で、初めて生きた植物に出会った。家も建物もくすんだ色の場所で、緑がいやに神々しく見える。
「あれが探してた植物の葉じゃないのか?」
「おお、まさに!街の薬草屋さんが言ってたのは間違いじゃ無かったんですね。しかしこんな奥まった場所にあるとは…。チロルが誤って教会を破壊しなかったら見つからないところでしたよ」
「教会を壊すなんて罰当たりめ。呪われるならお前一人にしてくれよ」
「ステラ様がビビッてたから悪いんでしょ。ねえチロル」
「まったくもってその通りですとも」
普段はいがみ合っているミアとチロルが手を組むのは、往々にしてステラの非を責めたてる時だ。
「とっとと採取して帰るぞ。こんな気味の悪い村、一刻も早く出ていきたい」
「じゃあ採ってきますので、そこで待ってて下さい」
ミアが葉っぱにそっと手を触れて一枚千切った刹那、土の中から現れた腕がミアの頬を撫でた。
「ぴっ…」
小鳥のさえずりみたいな声を出してミアが気を失った。
「こら、ウチの子に汚い手で触るな!」
腐乱臭を放つ膿だらけの手をステラが蹴り飛ばす。
「ステラお姉さま、よく平気ですね。チロルはさっきの幽霊的なやつより、死人の腕が生えてきたほうが怖いのですが」
「だって実体あるからな」
「ミアちゃん、大丈夫ですか?起きてください。ここで寝られても街まで運べませんよ?」
気絶したミアの頬をぺちぺち叩くチロル。十回ほど叩いたところでミアが目を覚ました。
「ん…なんだか悪い夢を見たような。薬草を採取しようと思ったらいきなり気持ち悪い手が、私の顔に…」
「気のせいだ。ミアが寝てる間に目的のブツは入手したから、早くずらかろう。この村はどうにもおかしい」
襲い来る蛇、ひとりでに奏でられるオルガン、なぜか意思を持って動く腐った腕。村人は一人もいないが、この村には確実に恐ろしいなにかが潜んでいる。
「なにか悪いものを連れ帰ったりしてないだろうな。聞いた話じゃ、幽霊ってその土地から動けないやつと、人に乗り移って移動するタイプがいるらしい。もし私に憑りついてたら…」
悪い予感は得てして当たるものだ。
街へ戻るまでの道中、歩き疲れたので木陰で休憩していると、トントンと肩を叩かれた。
「ん?」
振り返っても誰もいない。ミアとチロルは少し離れた場所で、野ウサギを撫でて遊んでいる。
冷たい汗が背中を伝い、膝が震える。
宿に帰りつくまでステラは一言も喋らなかった。




