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「ミアちゃんから凄まじい殺気を感じますよ。恐ろしくて近づけません」
「そっとしておこう。今のミアになにを言っても逆効果だ」
幸せな夢の中にいるリュカを宿に残し、三人は呪いの特効薬を探しに街を出ていた。
普段四人で歩くときは、ステラが先頭、リュカがしんがりを務め、真ん中にミアとチロルを挟む形で行動している。武闘派二人が前と後ろにいれば安全だろうと考え出された陣形だったのだが、今日はミアが先頭をずんずん歩いていた。
「そんなに怒ることか?リュカは夢の中で昔の…いや関係性は分からんが、クローディアとかいう女とまぐわってるだけじゃないか」
「そうです、あくまで夢ですよ。あの呪いは最も幸せだった瞬間に記憶と意識を引き戻すものですから。聞いてますかミアちゃん。夢なんです、ただの夢!」
ミアは振り向こうともせず、大股で歩を進めていく。
「しかし呪いは呪いだから、解いてやらないといけないよな。というかリュカのやつ、どこで呪われたんだよ」
「おそらくですが魔王城じゃないでしょうか。あそこは呪いの宝庫みたいな場所ですし、逃げる時にもらっちゃったんでしょ」
「あいつほんと不幸な体質だな」
「天は二物を与えずといいますが、リュカお姉さまは美貌と強さを与えられてますから、呪われ体質くらいのペナルティがあってようやくトントンですよ」
チロルいわく、呪いの特効薬を作るには特殊な聖水で育てられた植物の葉が必要らしい。街の薬草売りに尋ねてみたところ、ここから三時間ほど西に歩けば、目的の植物が生えている村があると教えてくれた。
ステラたちはその村を目指しているわけだが、出発してからミアがずっと膨れている。
「ミア、そろそろ休憩にしないか?早朝に起こされたせいで眠たいんだよ」
深夜からずっとリュカの看病をしていたミアはもっと疲れているはずだ。気を遣って休憩を提案したのだが…。
「結構です。私はしんどくありませんから」
「私が辛いんだって」
「チロルもステラお姉さまに賛成です。そんなに急がなくてもいいじゃないですか」
「なに?」
歩みを止めて地面に腰を下ろしたチロルを見下し、ミアが圧をかける。
「急ぐに決まってるでしょ。こうしてる間にも、リュカ様は私の知らない人と…」
「いやだからあ、夢ですって」
「夢だろうが嫌なものは嫌なの!誰ですか、クローディアって!一度もそんな人の話してくれなかった!」
ミアに理不尽に怒鳴られたチロルは、体を丸くして縮こまっている。
「休んでる暇はないです。ステラ様も立って下さい。行きますよ!」
ステラとチロルは、膝の骨をパキパキ鳴らしながら立ち上がった。
「リュカお姉さまが起きたら起きたで面倒なことになりそうですね」
「クローディアとかいう女について一晩中問い詰められるだろうな」
「まったくリュカお姉さま、余計な問題を持ち込んでくれたものですよ」
「そうだそうだ。今頃ベッドの上でさぞかし気持ちよくなってるだろうよ」
呪われた仲間への同情心が薄れ切ったころ、目的の村に到着した。聖水で育った植物が生えていると聞いて緑豊かでのどかな村を想像していたが、そこには一切の温かみさえなかった。




