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「あぁぁぁぁ…」
三日ぶり、念願の入浴を果たしたミアが獣のうめき声のような音を出した。
「そんな低い声出るんだな」
「最上級にリラックスした人間なんて、みんな汚い声を出すでしょ。ステラ様だってお酒飲んでるときこんな感じですよ」
豪華な石造りの浴場がある街で良かった。散々我慢したあとにボロボロの木桶みたいな風呂しかなかったら、ミアはいよいよ爆発していただろう。
「ステラ様、ちょっと痩せました?」
「ん、そうか?ネラに殺されたとき何度も肉を切り裂かれたりしたから、そのせいかもな」
「聞かなきゃよかった」
隣に並んで浴槽に浸かるミアは、相変わらず細くて小さい体をしている。ステラの視線に気づいたミアが、体を手で隠して背中を向けた。
「なんですか、ジロジロ見て」
「いや、無駄のない体つきをしてるなって」
「嫌味ですか。ステラ様だってスタイルは悪くないですけど、あの二人に比べたら見劣りしますからね!」
浴場に入ってきたリュカとチロルは、確かにミアの言う通りの肉体美だ。リュカは筋肉質だが女性的な丸みもしっかり帯びており、決して無骨な印象は与えない。チロルは太っているわけではないが、全体的にふっくらとしている。いかにも男が好きそうな体形だ。
「珍しくミアがこっちに来ると思ったら、リュカたちのスタイルに気おくれしてたんだな」
「まだステラ様のほうがマシだと思いまして」
「私だって、下衆な男や魔物どもの劣情をかき立てるくらいの魅力はあるがな」
服を着替えて前髪を下ろし、大人しくしていれば男どもはわんさか寄ってくる。所詮そんなものだ。
「妹さんはステラ様に顔がそっくりでしたけど、あっちのほうが断然可愛かったですよ。ステラ様も髪のお手入れとかお化粧とか、もう少し気を使ってみては?」
「余計なお世話だ。私は私として生きていく」
「もったいない。素材は悪くないのに」
「私はミアが大人になった時、どんな女性に成長してるのか楽しみだよ。レディになった君を見届けるまでは死ねないな」
すでにネラに殺されているが、あれはステラの中では死にカウントしていない。
「しかしミアが大人になるくらいには、リュカも私くらいの年齢か。脂が乗り始める頃合いだ」
「きっと今よりもっと美しくなられてますよ」
「分からんぞ。意外と老けやすいタイプかも」
ミアがお湯を両手ですくってかけてきた。
「失礼なこと言わないでください。それにリュカ様がどんなお姿になっても、私の愛は変わりませんから」
「ほんとにそうかねえ」
ステラはファリナの最期を思い出した。操り人形にされた挙句、ドロドロに溶けて無くなったファリナ。かつての駆け落ち相手であるシャルロは、形も尊厳も失った彼女をゴミのように扱っていた。
「なんのお話ですか?」
ミアの隣にリュカがやってきて、ぴったりと体をくっ付けた。肌と肌が湯船の中で直接触れ合う感触に、ミアが飛び上がる。
「リュカが老化に勝てるかって話」
「ほんとに何の話なんですか」
「いやはや、リュカお姉さま。年齢ってのはね、急に感じるものなんですよ。かくいうチロルは三十を越えておりますが、前までは平気だった運動がきつく感じ始めました。これが老化ってやつですか」
「お前は一気に十五年分老けたから例外だよ」
スタイルの良い二人に挟まれて、ミアは居心地の悪そうに肩をすぼめていた。




