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三人分の足音が部屋の前で止まった。口を割らないステラに腹を立てて頭を搔きむしっていたネラも、その気配に気づいた様子だ。
「こんな時間に誰よ」
殺されては時を戻されるのを繰り返したため、今が何時なのかさっぱりだ。ネラの迷惑そうな口調からして、客が来るには常識はずれな時間帯なのだろう。
扉がコンコンと軽くノックされた。
「今取り込み中。あとにして!」
魔王城の主が不機嫌に叫んだにも関わらず、二度目のノック。
「聞こえなかったの?下がれって言ってるでしょ!」
青筋を立てて怒る顔は、酒場で下衆な男に絡まれた時のステラにそっくりだ。
ノックは止んだが、足音が遠ざかる気配はない。
「拷問するのに気が散る!お姉ちゃんはそこで待ってて。誰か知らないけど追い払ってくる」
ベッドから腰を浮かせたネラが扉のほうへと歩いていくのが、霞んだ視界に映る。
「あのねえ、そこにいたら邪魔なの。とっとと立ち去りなさ…」
不用心に扉を開けたネラを光の魔法陣が取り囲んだ。
「は?ちょ、なにこれ!」
四方を魔法陣に包囲されたネラの顔に焦りが浮かんだが、その表情は瞬く間に光にかき消されて見えなくなった。轟音とともに放たれた眩い光には、どこか見覚えがあるような気がする。
部屋の壁が吹き飛び、大きな風穴が開いた。
「あ…咄嗟に吹き飛ばしちゃいましたけど、今の人ステラ様っぽかったような」
花のように愛らしいその顔を見た途端、消えかけていたステラの意識が覚醒した。
「…ミア?」
何日ぶり、いや、何年かぶりに再会したような気分だ。いつもは生意気なことばかり言うその声が、耳朶にじんわりと染みわたっていく。
「ステラ様、無事だったんですね!ああ良かった。さっき間違って吹き飛ばしたかと」
「不注意すぎますよ、ミアちゃんは。それにまだまだ魔法の使い方がなってませんねえ」
開いた穴から入り込む風にまぎれて、チロルの先輩風も一緒に吹いてきた。
「ステラ様、随分とやつれてしまって…。大丈夫ですか、立てますか?」
リュカが片膝をつき、ステラを覗き込んできた。
三人の視線を浴びて、頬を大粒の涙が伝う。顔を覆って涙を泣き顔を隠すこともせず、ステラは勇者であることも忘れて泣いた。




