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「話の分からんやつだな!私はなにも知らないって言ってるだろ。何度殺されてもお前の欲しがる情報なんて吐けんぞ」
「せいぜい強がってれば?すぐに口を割らせてやるから」
「…それはどっちの意味だ」
「んー?両方!」
ネラの手には、真っ赤に熱せられた金属棒が握られていた。魔王だからといって熱に強いわけではないらしく、持ち手の部分は分厚い布で覆われている。
「はい、あーんして」
「嘘だろ⁉やめろ、やっぱり口を割るってそういう…」
ステラの口に金属棒が突っ込まれ、舌が棒から離れなくなる。顔の皮膚はみるみるうちに溶けてゆき、地獄のような熱さに息絶える直前に例の鐘の音が響いた。
時が戻っても、顔にはまだ熱が残っている気がする。下あごが顔から分離して文字通り口を割られたが、そんなことをされてもネラの欲する情報を話すことは出来ない。知らないものは知らないのだから。
「ちょっと趣向を変えてみようか?」
ネラが小さなボトルに入った透明の液体を口に含み、ステラに口移ししてきた。
「んぅ…」
「それは巨大なドラゴンでも一瞬であの世行きの猛毒。人間が飲んだらどうなるか試してみたかったんだよね」
舌がぴりぴりしてきたと思った次の瞬間、体中が針で刺されたような激痛に襲われた。血管が生き物のように暴れだし、腕、足、首から血が噴き出る。
意識が戻ると、元通り血の一滴もついていないベッドで寝ていた。確かにあの毒なら、ドラゴンだろうがオークだろうが耐えられないだろう。
「結構持ちこたえたね。二秒くらいで死ぬかと思ってた」
「三十秒くらいは耐えてたか?」
「いや二分。ドラゴンに使ったときは四十秒で死んだんだけどなあ。お姉ちゃんってほんとにただの人間?タフすぎない?」
毒を盛られるのは初めてだったが、どうやら並みのモンスターよりは耐性がついているらしい。
「うーんと、次はどうしよ」
「やっ…」
「なに?」
「もうやめてくれないか。知らない情報は吐けないんだから、諦めてくれよ」
どうすればこの頑固な妹を説得できるのか。いくら否定しても、ステラをこの時間軸に送った方法、もしくはその能力を持つ人物について聞きだす事に執着している。
「やめないよ。命はいくらでもあるんだから、殺し放題。お姉ちゃんが素直になるまで、生死の境を行き来してもらう」
宣言通り、ネラは拷問を続けた。本来の拷問であれば、死なない程度に痛めつけるのが基本だ。しかしネラの場合は痛めつけた挙句に殺し、時を戻してまた拷問。その繰り返しだった。
一体何時間が経ったのだろう。いや、正確には一時間も経っていない。死ぬたびに生きていた時の時間に戻されているのだから、時計の針は進んでいないも同然だ。
「喋る気になった?」
「う…」
もともと喋る気はないし、喋れる内容も何もない。だがそれ以上に、際限なく行われる拷問にステラの精神も限界を迎えており、まともに言葉を発する気力さえ失われてしまった。
「唸ってるだけじゃ分かんないよ。自白する気になったかって聞いてんの」
「…ん…ぅ…」
ネラが舌打ちをして、ステラが寝かされているベッドに座り込んだ。
「なに壊れちゃってんの。これじゃ拷問しても意味ないじゃん。あー、イライラする!」
嫌悪感たっぷりの目で見下ろしてくるネラの顔も、視界がぼやけてよく見えない。脳が半分夢の中のような状態で、今なら何をされても痛みを感じない気がする。
どうせまた殺される。そう思って目を閉じた時、部屋の外から足音が聞こえてきた。一人じゃない。二人、いや三人分の足音だ。一人はコツコツと軽く、もう一人はガシャンという鎧の音が混じっている。最後の一人は体が大きいのか、一歩歩くたびにボスボスと体重がかかる音がしていた。




