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「まーじで物分かり悪すぎ。この頭すっからかん!」
実際に頭をかち割られて小さい脳みそを見られた後だったので、ネラの言葉に反論できない。
「バカなお姉ちゃんのために説明してあげる。よく聞きな」
「話が長くなりそうなら先に拘束を解いてくれないか。この体勢で聞くのきついんだよ」
「…逃げ出すつもりじゃないでしょうね」
「私は今丸腰だぞ。武器もないしお前と戦う気もない。どうせ逃げたってすぐ捕まるだろ」
言葉通り、ステラに逃げる気は無かった。ここは魔王城、敵の本拠地だ。逃走を図るには分が悪すぎる。
ネラはステラの真意を図るかのように顔を覗き込んできたが、逃げるのは無理と判断したらしく、拘束を解いてくれた。久しぶりに自由になった手足を動かすと、骨がポキポキと鳴った。
「どこから話そうかな。まず私が魔王の娘として生まれたところから…」
「待った待った。ってことはやっぱりお前、魔族の生まれじゃないか」
「聞けよ!口挟むな!」
ネラに頬を引っかかれ、目の下に赤い線が二本走る。
「お前、私より気が短いな。すぐに手を出すのはよくないぞ」
「黙って。私だって無から生まれたわけじゃなくて、前の魔王の一人娘として生まれたのよ。前の魔王、つまりは私の母ね。私を産んだのとほぼ同時に、当時勢力を振るってた魔法使いの連合によって殺された。あの時も城はボロボロにされたわ」
「何回壊れてんだよ、魔王城」
「母は命が尽きるその寸前、私を下界に逃がしたの。その時に私は魔力のほとんどを失って、衰弱した状態で人間界をさまよい歩いた。あの頃の私は犬一匹にすら勝てないほどの雑魚だったわ」
その時に死んでおいてくれればよかったのに。
「なんとか体を引きずって、人の気配がするほうへと歩いて行ったのよ。そこでたどり着いたのが、お姉ちゃんの住んでた村。ほんとなんもない場所よね」
「失礼な。あそこのブドウは名産なんだぞ」
「行き倒れた私を親切にも介抱してくれたのが、あなたの母親だったのよ。ちょうどお姉ちゃんを身ごもってた頃の話ね。で、それからすぐにお姉ちゃんが生まれた。それはそれは愛らしい赤ちゃんだったわ。今じゃこんなになっちゃったけど」
「お前も同じ顔してるくせに」
「私ね、お姉ちゃんが憎かった。村のみんなからちやほやされてさ。一時的に拾われたとはいえ、所詮私はよそ者。誰も魔族だとは気づいてなかったけど、みんなの愛情はお姉ちゃんにばっかり注がれた。だから私、やっちゃったの」
ステラの背中に冷汗が一筋流れた。
「やっちゃったって、なにを」
ネラが親指で自分の首を掻ききる仕草をする。
「…殺した?」
「そう。殺した。生まれて間もないお姉ちゃんをね」
「だったらなぜ私はここにいる!」
「だからー、順を追って説明してあげてんでしょ。黙って聞け!」
ネラが蹴りを繰り出してきたが、体の自由を取り戻したステラはその足を掴んで捻り上げた。
「いだだだだだ!」
「続きを話せ」
「この体勢で⁉」
「いいから」
「あ、あの時の私は魔力を失くしてほぼ空っぽの存在だったの。放っておけばそのうち消えてなくなる。だから人間の器が必要だったのよ。私の魂を入れて、自由に動くための器だね」
「それで?」
「私はあなたになりたかった。あんなに愛情注がれて、妬ましかったのよ」
「じゃあなおさら殺すなよ!」
「私があなたに成り代わるためには殺さないとダメだったの。まず私はお姉ちゃんを殺したあと、この時間を操る能力を使って過去に戻ったわ。ギリギリ残ってた最後の魔力を振り絞って、お姉ちゃんが生まれる前に遡った。そして、母のお腹の中に命が宿った瞬間、それを器として魂ごと入り込んだのよ」
「寄生虫めぇ…」
「その時点でお姉ちゃんの肉体は私のものになった。そして生まれたのが私ってわけ」
「待て。その説明だと私という人間は生まれていないことになるぞ。お前が過去に遡って私の人生を奪ったんだから」
母は子供を一人しか産んでいないのだから、ネラが産まれたあとの世界にステラは存在しないはずだ。
「そうよ」
「そうよって」
「だから私はお姉ちゃんを探してた。真相を問い詰めるためにね」
「は?さっぱり意味が…」
ネラがステラをベッドの上で押し倒し、両腕を押さえつけてきた。
「誰なの?」
「え?」
「お姉ちゃんは誰?一つの世界に同じ人間が二人存在するはずがない。私がオリジナルなの。ねえ、お姉ちゃんは何者?」
「何者って…そんなの私に聞かれても」
「この時間軸の人間じゃないよね。どこから、どうやってやって来たの」




