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時間を巻き戻したなんてにわかには信じられないが、傷一つなく元通りになった指が何よりの証拠だ。
「信じる気になった?」
「ふん、どうせお前たち魔族のことだ。インチキに決まってる」
「は?今のでまだ疑ってるとかどんだけ頑固なの?もーいい、分かった。信じるっていうまで、体に叩き込んでやる」
ネラが部屋を出ていき、バタバタとうるさい足音が遠ざかっていく。時が戻ってもステラは拘束されたままなので、せっかくの逃げ出すチャンスなのに大人しく待つしかなかった。
ネラが戻ってきたのは数分後。手には巨大な包丁が握られている。まさかここで料理を始めるわけがない。その切っ先はステラの腹に向けられた。
「私の肉を裁いて食べるつもりか?さっきまずいって言ってし、オススメはしないな」
「余裕ぶってんのウザイよ。お姉ちゃんが私の能力を疑うっていうんなら、何度も傷つけて時を戻して、嫌でも信じ込ませるだけ」
「ずいぶんと猟奇的な妹を持ったもんだ」
「はい、いくよ。息吸ってー」
ナイフが腹に食い込み、一気に内臓まで貫通した。
「がっ…」
さっきと同じ鐘の音が鳴る。一回、二回。どうやら三回目の鐘の音が、時が巻き戻る合図らしい。再び視界が暗くなり、目が覚めると腹の痛みは消えていた。
「お姉ちゃんの内臓、やばい臭いしたんだけど。ほんとろくなもん食ってないんだね」
あまり食事の質にこだわりがないステラにとって、酒のつまみになれば何でも良かった。一方でミアはやたらとこだわりが強く、新しい街に着いてまず調査するのは、決まっていい店がどこにあるかだった。リュカもリュカで、野菜の製法や産地を妙に気にしたりする。ステラが買ってきた野菜の産地を聞いて、あそこの山は土壌が悪いからと嫌な顔をしてきた時は喧嘩になった。
ミアたちは無事だろうか、と考えていると、ネラに頬をぶたれた。
「なにボケっとしてんの。私の能力が本物だって、内臓抉られて理解した?」
「なにも抉らなくても良かっただろ」
「ねえ、その目。まだインチキだろって目してる。同じ人間だから分かるんだよ。物分かりの悪いバカなお姉ちゃんには、教育が足りないみたいだね」
ネラが銀製の釘を取り出し、ステラの額に先端をくっ付けた。もう片方の手で金槌を振り上げる。
「ちょ、お前の倫理観どうなって…」
ステラの意識はそこで途絶えた。釘を額に打ち込まれたのだろうが、脳まで一瞬で到達したせいで即死だったのだろう。
「おかえり、お姉ちゃん。思ったより脳みそスカスカなんだね」
「悪かったな」
「いや待って?お姉ちゃんがあのサイズの脳ってことは、私も同じってことじゃん。うわ最悪。なんでもっと賢く生まれなかったの」
こんな理不尽な怒られ方があるだろうか。
その後もネラによる猟奇殺人は続いた。何度も何度も殺されては、死ぬ前の時間に戻ってくる。一体何度目の死を迎えたか分からなくなってきた頃、ネラのほうが先に音を上げた。
「もー限界、この分からずや!こんだけやればさすがに信じるしかないでしょ!毎回グロいの見せられるこっちの身にもなってよ!」
「そっちが殺したんだろうが!」
「いいよもう。私と同じ親から生まれたってのがそんなに信じられないんだね?」
「時間を巻き戻すっていっても、話の辻褄が合わないんだよ。母は私を産んだあと、死ぬまで誰も身ごもってないんだ。時間を操ったところでどうこうなる問題じゃない」
はあ、とネラがわざとらしいため息をついた。




