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ネラの指から伝わってくる体温までもがステラと同じだった。そのせいだろうか。敵に襲われているという状況にも関わらず、妙な居心地の良さを感じてしまうのは。まるで二つに分かれたものが、再び一つに戻ろうとしているかのような…。
ネラがステラの薬指を口に含む。彼女の舌は、今まで出会った誰よりも熱を帯びていた。温かいを通り越して熱い。氷くらいなら一瞬で溶かしてしまいそうだ。
「その汚い口を放せ」
悪態をつくステラを上目遣いで見上げたネラは、意地悪そうに目を細めた。
そして口を大きく開けて、ステラの薬指を噛みちぎった。
痛みに絶叫し、拘束された体を震えさせるステラを見下ろして、ネラは可笑しそうに手を叩く。
「なにもう、うっさいな。根本からいったわけじゃないのに大げさだって」
第二関節より上を失ったステラの薬指。もともとそこにあったはずの部位は、今はネラの口の中だ。もごもごとステラの指を舌で転がし、血と肉を味わうネラ。
「まずっ。普段ろくなもん食ってないでしょ。いっぱい人間食ってきたから分かるんだけど、お姉ちゃんの肉質最悪。そのへんの魔物のほうがまだマシじゃね?」
ぺっ、と吐きだされた指がステラの顔の横に落ちた。
ネラのいう通り、これまで経験してきた痛みに比べれば指の一本くらい大したことはない。だが激痛であることには変わらず、歯を食いしばって耐えるステラの額には大量の脂汗が浮かんでいる。
「安心してよ、指は元通りになるから。食いちぎったのは、私の能力が本物だって証明するためのパフォーマンスだよ。見てて」
ごおん、という鐘を突く音が聞こえてきた。一回、二回、そして三回目の鐘の音が鳴った時、ステラの視界は真っ白い霧に包まれた。
糸が切れたように意識が途絶え、次に目が覚めるとまた同じ場所。魔王城の中にある一室に、四肢を拘束された状態で寝かされていた。
「お帰り、お姉ちゃん」
ネラの口元には、指を食いちぎった時に付着したはずの血がない。
「お帰り、だと?私はどこかに飛ばされてたのか」
「どこっていうか、いつ、って行ったほうが正しいかな。まー細かい説明するよりも、自分の指見たほうが早いよ」
欠損したはずのステラの薬指が、元通りに生えていた。
「…五本全部揃ってる」
「ねー、よかったね」
「治癒魔法で治したのか」
「残念だけど私、そういうの使えないんだよね。魔王がチマチマ回復してたらダサいじゃん。私たちのモットーは、攻めて攻めて攻めまくる。攻撃は最大の防御。まあ、その代わり守りが雑魚すぎて何度か滅ぼされかけたんだけど」
ロメオたちの勇者パーティーと戦い、壊滅状態に追い込まれたのもそのせいか。
「学べよ」
「うっさい!そんなことより指!なんで治ったかまだ分からないの?」
「治癒魔法じゃないならなんだっていうんだ」
「あのさあ、私時間を操れるって話したよね。で、私はさっきお姉ちゃんになんて言った?お帰りって、そう言ったでしょ」
「つまり…どういうことだ」
「え、もしかしてバカ?私のお姉ちゃんって頭悪いの?」
連行されて暴行された挙句バカにされるとは、なんてひどい仕打ちなんだろう。
「つまり…戻ってきたの。私がお姉ちゃんの指を食いちぎる前の時間にね」




