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「お前と私が同じ親から生まれたって、そんな冗談を信じると思うか?」
「信じないの?こんなに顔そっくりなのに。それに顔だけじゃない。声も、目の色も…」
羽毛が触れたような柔らかな指使いで、ネラがステラの脇をくすぐる。
「ひっ…ぁ…」
「脇が弱いってとこまで同じ。ねー、お姉ちゃん。あなたの妹が、世界を恐怖に陥れた魔王ネラだって、どうすれば信じてくれる?」
脇への攻撃に涙を浮かべて身をよじるステラ。敵を目の前にして、意思とは関係なく笑いが漏れているその顔を拝もうと、顔を近づけてきたのが間違いだった。手足は拘束されているが、唯一自由だった頭を振り上げてネラに思いきり頭突きをかました。
「うがっ!なにすんの、バカ!」
ステラの頭は岩のように固い。ネラの額を割るつもりで渾身の一撃を叩き込んだが、さすがは魔王、そう簡単にはいかないようだ。
「まじ最悪。血出てんだけど」
「へっ、ざまみろ」
「よくその状況で歯向かえるね。自分の立場分かってる?」
ネラの額から流れ出た血がステラの頬に垂れてくる。
「私の妹なんてバカげた嘘をつくからそうなる。大体あり得ないんだよ。母親は私が幼い頃に、村を襲った魔族に殺された。母の最期の瞬間までずっと一緒にいたんだ。2人目を身ごもっていれば、私がそれを知らないはずないだろ」
「あー、やっぱそういう発想になっちゃうか。頭が固いよね。二重の意味で」
早くもネラの傷口は塞がっており、額に走った裂傷は跡形もなく消えていた。
「他にもおかしな点があるぞ。お前が魔王っていうんなら、私が産まれるよりもずっと前から存在していないとおかしい。さっきお前は言ったよな。産まれた順番は自分のほうが後だと。なぜ私よりも年下なのに、何十年も前から魔王として君臨しているんだ」
ロメオたちが魔王軍と戦ったのが10年前。さらにヘルガが魔王を追い詰めたのはもっと昔に遡る。その時点で人間と戦火を交えていたネラが、ステラよりもあとに産まれたというのには矛盾が生じる。
「ようは時間の流れ的にあり得ないってことが言いたいわけ?…お姉ちゃんさあ、これまでの旅で色んなやつらと戦ってきたんでしょ。人間の常識じゃ説明つかないような魔法とか、自然の摂理を無視した魔族の能力とかさ。そういうのたくさん見てきたんじゃないの?」
「…なにが言いたい」
「だからー、それだけ経験しといてまだ発想が人間のレベルを出てないんだって、ちょっとガッカリ。お姉ちゃんをここに連れてきたシャルロだって、あんなんおかしいでしょ?いや私もやばいと思うもん。死体を操るとかキモ過ぎ」
一度駆け落ちで逃げ出したとはいえ、直属の部下に対してひどい言いようだ。
「まー、死体を操れるやつがいるなら、時間を操れるやつがいても変じゃない。そこまで考えられなかった?」
「じ、時間だと?」
「あー、信じてないって顔してる。いいよ、証明してあげる」
ステラとは似てもつかない繊細そうな細い指を、ネラがゆっくりと手に絡めてきた。




