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一体何時間眠っていたのだろう。目を覚ましたステラは、二日酔いの時のような酷い頭痛に襲われた。喉の渇きと吐き気、それに倦怠感。酔いつぶれた日の翌日は、いつまでもだらだら寝ているとミアに叩き起こされる。早くしないとまたミアの怒号が…。
そこまで考えて、この嫌な疲れの原因が酒ではないことを思い出した。シャルロと、彼が操るヘルガにやられて気を失ったのだった。
ヘルガに刺されたチロルは無事か。あの場にいなかったミアとリュカは?
ステラが連行されたのは、まるで貴族の寝室のような豪勢な部屋だった。体が沈み込むふかふかのベッドに寝かされ、枕元にはキャンドルライトが灯されている。ただしライトの火は毒々しい紫色で、それが人間世界のものではない事が伺えた。
寝室の扉がノックもなしに開けられる。廊下から顔をのぞかせたのは、ステラと同じ銀色の髪をした若い女だった。
「あ、起きてるじゃん。おはよ」
女が手に持っている盆には、水の入ったグラスが載せられている。
「そのベッド、めちゃくちゃ寝心地いいっしょ。私なんて、それじゃないと眠れない体になっちゃった」
まるで毎日顔を合わせているかのように親し気に話しかけてくるが、ステラはこの女など知らない。差し出されたグラスを押し返して、ひりつく喉から声を出す。
「…誰だ、お前は」
「もー、声ガッサガサじゃん。まずは水飲みな?大丈夫、変なもの入れてないから」
気絶させられる直前、シャルロは魔王城にステラを連れていくと言っていた。ということは、ここは魔王城の中と考えて間違いないだろう。想像していたのは地下の牢獄みたいな場所だったが、思ったよりも快適そうだ。
だがここにいる相手は十中八九、魔王側だ。そんな相手から差し出された水など飲めるわけがない。
「質問に答えろ。お前は何者だ」
「え、知らないで今まで魔王討伐とか言ってたの?なにそれ、ウケる。そっかー、私のこと知らないのか」
もったいぶって答えない女にしびれを切らして掴みかかろうとしたが、ステラの腕はベッドに拘束されていた。
「暴れない暴れない。ケガは治療してあげたけど、快復するまでは大人しくしときなって。あー、なんだっけ。そうそう、私が誰か知らないって話か。名前言えば分かるかな」
女がベッドに上がり、這うようにして近づいてくる。四肢を拘束されたステラが動けずにもがいていると、耳元に顔を寄せて、そして生暖かい息とともに囁いた。
「ネラ」
全身の毛が総毛だった。ロメオとファリナから聞いたその名前を有するのは、ただ一人。魔王、ネラである。
「あはは、今の顔いいね。びっくりと恐怖でいっぱいの表情。てか汗すごいよ。あとでお風呂入れてあげるね」
ネラがステラの鼻をつまんで、開いた口から無理やり水を流し込んだ。
確かに変なものは入っていないようだが、水は生ぬるく、喉の渇きを癒すには物足りなかった。




