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感動の再開が果たされるまでにずいぶんと時間がかかったものだ。ステラに手足を折られ、ファリナに風穴を開けられ、満身創痍になった末に駆け落ち相手との熱い抱擁。ロマンティックのかけらもあったものじゃない。現にシャルロの怪我はまだ回復しておらず、腹に空いた穴を通してファリナの姿が見える。
「なんですかあの二人。さっきまでいがみ合ってたのに、急にハグをし始めましたよ。チロルにはなにがなんだか分かりません」
「本人たちに聞くのが一番だが、邪魔できる雰囲気でもないしなあ」
シャルロがこすり付けていた頭を離して、ファリナを見上げる。
「さっきは老けたなんて言ってごめんね。ファリナは年をとっても綺麗だよ」
「年取ったってところを否定してくれないんだ」
「大人っぽくなったってこと。昔のファリナはまだまだ女の子って感じだったけど、今は大人のレディになったね」
要はもう若くないということなのだが、物は言いようだ。ファリナもまんざらでもなさそうなので、これが二人なりのコミュニケーションなのだろう。
「何も言わずいきなり姿を消すなんて、この薄情者。私がどれだけあなたのこと探したと思ってるの?」
「しょうがないじゃん。僕たちは魔王、ネラ様の側近なんだし、命令には絶対服従。国を滅ぼせと言われれば滅ぼすし、恋人と別れろと言われれば別れるしかないの」
ネラ。その名前は、オルタナからステラを救い出した際に、ロメオも口にしていた。それも妙に親し気に。
「ネラがそう言ったの?私と別れて行方を眩ませろって?」
「僕たちを半分壊滅状態に追い込んだパーティーの一員だからね。そりゃネラ様も危険視するよ」
「壊滅させかけたのはロメオさんと、あとはあの馬鹿二人でしょ」
たしかロメオの話だと、炎と水の魔法使いが魔王城の前で仲間割れを起こして、互いの魔法を衝突させた結果、城がボロボロになったと言っていた。そして相打ちで二人とも死んだらしい。
「ほんとあの時は焦ったよ。所詮人間だって舐めてたら、ものすごい魔法が襲ってきたんだもん」
「あなたたちを狙ったわけじゃないんだけどね」
「あの爆発と洪水のせいでこっちの軍勢は一気に削られて、僕も正直パニックだったんだから」
仲間割れの結果でそれなら、炎と水の魔法使いが力を合わせて魔王軍を攻撃していれば、今頃世界は平和だったかもしれない。
「あの、お二人さん。思い出話に花を咲かせてるところ悪いんだけど、ちょっといいかな?」
「あ、勇者さん。さっきはよくも手足を折ってくれたね。まだ骨がグラグラするんだけど」
「それはお前が私の脇をくすぐったからだ。謝罪なんてしないぞ」
「それでステラちゃん、なにか聞きたいことが?」
「あるに決まってる。お前らの過去は駆け落ちという事しか聞いてないんだが、なんで敵同士が駆け落ちしたんだよ」
ファリナとシャルロが顔を見合わせて、ほぼ同時にくすりと笑った。
「まだまだ若いわね、ステラちゃんは」
「そうそう、恋に落ちるのに理由なんていらないんだよ」
なんだか馬鹿にされている気分だ。いや、実際馬鹿にされているのだろう。
「私だって恋人くらいいたが?」
その恋人は、今はもう土の下。必ず魔王を倒すと、カリンの墓に誓ってきた。
その憎き魔王の側近であるシャルロが、こちらに危害を加えずへらへらと笑っているのは妙な気分だ。初めは美少年のように思えたが、よく見ると男か女か分からない顔つきをしている。
「うーん、どこから話そうかしら?」
「長くなりそうなら、駆け落ちした部分だけでいい」
しかしステラが止めるよりも早く、ファリナは愛おしそうな表情で語り始めた。




