表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
190/221

190

 「この辺にいるんですかね…?」


 気絶した見えない相手の体を、ミアが恐る恐る杖で突く。


 「腕と足を一本ずつ折ったから簡単には動けないと思うが、気を付けろよ。あまり不用意に近づくと危ない」


 「ちょっといたずらしただけなのに二本も折られるなんて、可哀そう。ステラ様に手を出したばかりに」


 「姿も見せずに人の脇をくすぐってきたんだぞ。それくらいの報復を受けて当然だ」


 チロルとファリナが見ている前で、涙を流して悶絶させられた事は屈辱的だ。むしろあと二本を折らずに残しておいただけ良心的である。


 「こいつさあ、なんか気になる事言ってたんだよ。前の勇者が弱かったとか、確かそんなふうなことを…」


 「ステラちゃん、それ本当?」

 

 ステラが襲われている間、微塵も助けようとしなかったファリナが食い気味に聞いてきた。


 「前の勇者。確かにそう言ったのね?」


 「ああ、耳元でそう囁かれたよ。ビビりで弱い男だったとか」


 「…勘違いかと思いたいけど、どうやらそうもいかないみたい」


 ファリナががっくりと項垂れ、深いため息をつく。


 「こいつに心当たりがあるのか?」


 「前の勇者ってつまり、私とロメオさんが入ってたパーティーのことよ。ロメオさんから聞いたんでしょ?私たちのリーダーは、とんでもない臆病者の役立たずだったって」

 

 「ロメオが酒を飲みながら愚痴ってたよ。勇者とは名ばかりで、戦闘の時は前線に立たない。とにかく臆病で心配性なもんだから、自分を守ってくれる仲間をスカウトしすぎた結果、パーティーがすごい数になったって」


 「ほんとろくでもない男だったわ。あいつが敵倒してるところ、ほとんど見たことないもの」


 ロメオと同じく、ファリナも相当鬱憤が堪っているのだろう。かつての魔王との戦いから十年近くが経過しているが、まるで昨日のことのように怒っている。


 「私を襲った透明のこいつは、当時の勇者パーティーを知ってるみたいだが」


 「知ってるも何も、直接戦った相手だからね」


 ファリナが屈みこみ、何もない空間に手をそっと置いた。どうやらそこが相手の頭らしく、ファリナはぽんぽんと優しく頭を叩く。姿が見えないのに、正確に頭の位置が分かるのはなぜだろう。

 

 「ねえステラちゃん。私が魔王軍の相手と駆け落ちしたって話、したじゃない?」


 「最初にロメオから聞いた時はそりゃもう笑ったよ。クソみたいな僧侶もいるもんだなって」


 その後は改心したのか飽きたのか知らないが、相手とは縁を切り、人間側に戻ってきたとファリナ自身が語っていた。


 「駆け落ちした相手と再会するって、どんな気分だと思う?」


 「は?なにを言ってるんだ」


 ファリナは唇をわなわなと震わせながら、ぽつりと言った。


 「この子なの、私の駆け落ち相手。人形遣いのシャルロ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ