表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
189/222

189

 「あー、いけないんだ。まだその人息あるのに、埋めようとしてる。悪い勇者さんたち!」


 老婆のまま復活したヘルガを、用済みとばかりに埋葬しようとしていたステラたち。どうせ瀕死状態なので、放っておいても死ぬ。それなら魔物や動物に食い荒らされないように、地面深くに埋めてやるのがせめてもの弔いだ。そう言って自分たちを正当化しながら土を掘っていた時、幼い子供のような声が聞こえてきた。


 「まずい、見つかったか!?」


 ステラは周囲を見まわしたが、声の主がどこにいるのか見当がつかない。崩れた洞窟の跡地に隠れる場所は少なく、すぐに見つかりそうなものなのだが。

 

 いがみ合っていた僧侶二人も、ヘルガの生き埋めがバレるとまずいという思いから、示し合わせたように背中合わせになって杖を構え、魔法陣を展開する。抜群のコンビネーションだ。


 ステラとリュカも同じく背中を合わせて剣を構える。余ったチロルは、少し離れた場所で体に雷を纏わせ、臨戦態勢を取っていた。

 

 声変わり前の少年を思わせる透き通った声が、ステラの耳元で囁く。


 「今度の勇者さんは、可愛いお姉さんなんだね。前の男はビビりでよわよわだったからつまんなかったけど、今回はちょっと楽しめそう」


 「どこだ、どこにいる!」


 耳元で声はするのに、姿が見えない。


 「こっちだよ、勇者のお姉さん」


 見えない指が、ステラの額を弾いた。


 「いっ…卑怯だぞ、姿を見せろ!」


 「やだ」


 相手の声は聞こえるし、確かにそこにいる。だがその姿は目には映らず、無暗に剣を振り回しても当たる気配がない。

 

 「えい」


 「ひっ!?や、やめ…、はっ、あはは、やめろぉ…」


 ステラは脇をくすぐられて身もだえした。


 「リュカちゃんの耳といい、このパーティー弱点多くない?」


 「それが良いのではないですか。悶えるステラお姉さまは何度見ても飽きません」


 「ひ、ひひ…、へんな事言ってないで助け…んぅ…」


 「助けたいのは山々ですが、姿が見えないんじゃ仕方がありませんねえ。いやはや、チロルは無念でございます」


 「お前っ…見えてても助けないだろ!」


 涙を流して身をよじるステラ。見えない何かをステラから引き離そうと、ミアが手当たり次第に宙を叩く。


 「こら、どこの誰か知りませんが、ステラ様から離れなさい!」


 はたから見れば、ミアが一人でジタバタしている様子はずいぶんと滑稽だった。自分のために必死になっていると分かっていながらも、ステラはくすぐったさとは別に笑いそうになる。


 手を振り回すのに疲れたミアは、ぜえぜえと息を吐きながら杖を構えた。


 「いっそのことステラ様ごと魔法で撃っていいですか」


 「いいわけないだろ!」


 「冗談ですよ」


 少しかわいいと思ったらすぐにこれだ。


 このまま見えない相手にいいように弄ばれるわけにはいかない。視界に捉えられないだけで実体はあるのだから、攻撃できない事はないはずだ。


 ステラは全神経を集中させ、相手の息遣い、気配から居場所を特定しようとした。右から左へと声が流れていく。相手が手を振り上げた時のかすかな風の動きを読み…


 「捕まえた!」


 ステラはついに、見えざる手を掴んだ。


 「うわっ、放してよ!」


 「放すかバカ!私をこんな目にあわせて、ただで済むと思うな!」


 掴んだ腕はとても細く、声から想像する少年のような体そのものだった。だがいくら細かろうが、少年だろうが、容赦するステラではない。


 メキッという乾いた音に続き、甲高い悲鳴が上がった。

 

 「ステラ様、もしかして折りました?」

 「折った」


 ミアが引いている。


 「得体のしれない相手の腕を…?」


 「悪いか」


 「せめて正体掴んでからじゃないですか、そういうの」

 

 「とりあえず折っとけば逃げられないだろ」


 腕だけでは心もとないので、相手が人間の姿をしていると仮定して、大体このへんが足だろうという場所を踏みつけた。


 一段と高い悲鳴が上がり、それから何も聞こえなくなった。どうやら気を失ったらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ