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紅水晶が粉砕され、辺りに赤い破片が転がっている。かつて伝説と崇められ、魔王をも震え上がらせたという女戦士ヘルガ。その雄姿を現代に復活させ、再び訪れる魔王軍との決戦に力を貸してもらう。そういう計画だったはずだ。
「…どうしましょうか、これ」
チロルの問いに、誰も答えない。
封印を不完全な状態で解かれたヘルガは、エネルギーを吸われて衰えた老婆の姿のまま地面に放り出されている。死んでいるわけではないようで、ステラがつま先で突いてみると、若干の反応はあった。だが息は絶え絶えで、死にかけといってもいい状態だ。
「やっちゃったわね」
「お前のせいだろ、ファリナ」
「私一人に責任を押し付けるのはおかしくない?せめてミアちゃんとチロルちゃんは連帯責任でしょうよ」
「ああ、チロルには責任がある。けどミアは悪くないだろ。お前らが挑発しなけりゃこんな事は起きなかったんだ」
「お姉さま方、喧嘩をしている場合じゃございませんよ。ヘルガさんが打倒魔王軍の頼みの綱だったのに、こんなよぼよぼのおばあさんじゃ使い物になりませんよ。戦えないどころか、立つことすら出来てないじゃありませんか」
自分に向いた矛先を逸らすため、チロルは全員の注意を床に伸びているヘルガに集めた。
「ミア、どうすればいいと思う?」
「え、知りませんよ。こうなっちゃったものは取り返しが付かなくないですか」
「若返りの魔法とかないのかよ」
「そういうのはあっちのおばさんに聞いてください」
おばさん呼ばわりにいちいち突っかかることをやめたファリナは、ゆっくり首を横に振った。
「あるにはあるけど、根本的な解決にはならないわ。エテルノクス以外の方法で封印解除しちゃったんだから、吸われたエネルギーもそのまま。たとえ見た目だけ若返らせたとしても、まったく役に立たないわよ」
パーティーに沈黙が落ちた。
「う…ぅぅ…」
まだギリギリ息はあるヘルガが、苦しそうなうめき声を上げる。
五人は顔を見合わせ、誰かがこの老婆の処遇を言い出すのを待った。心の中ではみんな同じことを考えていただろう。今のヘルガはただの老人で、頼れるところなど何もない。そのうえ全盛期の力を復活させる手段は絶たれたのだから、もう利用価値はゼロ。わざわざ殺す必要はないが、別に助ける義理もないというのが総意だった。
そんな冷酷な意見を誰が最初に言い出すか、という緊張感がパーティー内に走る。
「どうしましょうね…」
「ね」
「ほんと困ったな」
そんな意味もないやり取りが続くこと数分、ついに意見を切り出したのはリュカだった。
「こうなった以上、この方のお力を借りることはできません。それならせめて安らかに眠って頂けるよう、埋葬して差し上げませんか?」
リュカ以外の四人が、それだ、という顔で彼女を見た。役に立たないから捨てていくという冷酷な判断を、自分たちを正当化できる言い分に変えている。真に清らかな心を持つのは僧侶の二人ではなく、やはり戦士のリュカだろう。
かくして始まった埋葬準備だが、すぐにそれは中断される事となる。




