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封印が解けたヘルガを魔王が利用するかも、とファリナに急かされて、ステラたち一行は駆け足で洞窟へ向かった。その道すがら、ヘルガの伝説と封印を解く愛の魔法について話したが、走りながらなので息切れがひどい。何度もミアに「え?」と聞き返された。
「だからっ…紅水晶に閉じ込めてて…!そんで、エテルノクスが出ただろ?」
「リュカ様と抱き合ったときに出た、あの光のことですか。確かにすごい魔力でした」
ステラがぜえぜえ言っているのにミアが余裕なのは、ステラにおんぶされているからだ。パーティーの中でミアが一番鈍足なので、背負って走ったほうが早いという判断だったが、いくら体の小さいミアでもそれなりに重たい。
「リュカにおんぶしてもらえば…いいのに…はぁ、はぁ…」
「ステラ様のほうが体が大きいですから、乗りやすいんですよ。それにリュカ様に負担をかけるわけにはいきません」
まったく、損な役回りばかりだ。洞窟までまだ距離がある。体の大きさでいえば、チロルもミアを背負うのに適しているではないか。
「チロル、交代」
「嫌です。まだリュカお姉さまにやられた目が痛いのですよ」
チロルはわざとらしく目を押さえながらリュカを振り返った。
「本当にすみませんでした、チロルさん」
「別に怒ってませんよ。あとで揉ませてくれればチャラにします」
「ダメです。私が許しません」
ステラの頭上からミアの声が飛んできた。
駆け足で山道を登ること約一時間、ようやく洞窟の最奥部に到着した。
「あら、封印解けてないわね」
紅水晶は以前に見た時よりかなり小さくなっており、大部分が削られていた。ミアとリュカの愛によって発動したエテルノクスのおかげで、ヘルガの封印解除が一気に現実味を帯びたようだ。
「急いで来て損した。ファリナの早とちりじゃないか」
「最悪の場合を想定しての行動よ。それにしてもすごいわ。さすがミアちゃんとリュカちゃん。この調子だと、あと少しで封印を解くことができそうね」
「どうだミア。これがさっき話した伝説の戦士だ」
ステラもその存在を聞かされたばかりだが、まるで昔から知っていたかのような口ぶりで、紅水晶の中のヘルガを指さした。
「おばあさんじゃないですか」
「封印されてる間にエネルギーを吸われてるって説明しただろ?全盛期の状態で復活させる唯一の方法が、君たちも使ったあのエテルノクスなんだよ」
「この方が伝説の…」
リュカは同じ戦士として、ヘルガの事を畏怖の念を込めた視線で見ている。
「ねえステラちゃん。もう一回あの二人でエテルノクス出せないかしら。多分それで封印解けるわよ」
「さっきのはお膳立てされた状況で生まれた魔法だからなあ。あの規模の魔力をもう一回生み出すのは難しいんじゃないか?」
「試してみましょうよ。ミアちゃん、リュカちゃん。ここでキスして」
「は!?」
ミアが素っ頓狂な声をあげた。
「何恥ずかしがってるのよ。さっき散々してたんでしょ」
「人に言われてやるもんじゃないんですよ!それにこんな、みんな見てる前でなんて、恥ずかしくて出来るわけないでしょ!」
「ですって、チロルちゃん。どう思う?」
「チロルはミアちゃんのほんとの気持ち知ってますよ。今すぐにでもしたいんです。接吻を。そりゃもう舌を絡ませて、ねっとりと、ディープなやつをね。顔を見れば分かります。そう書いてありますから」
「チロルは黙って!」
「図星ですか、そうですか」
図体がでかくなっても、チロルの精神は成長していない。ミアとギャーギャー言いあう場面を見る機会は、まるで減らなかった。
「そうだファリナお姉さま。チロルは素晴らしいアイデアを思いつきましたよ。これで封印が解けるかもしれません」
「なになに、聞かせてよ。そのグッドアイデア」
「それはですね…」
魔法使い二人がこそこそと話し始めてから数分後、チロルが杖を振り上げた。
「か、体が動かない!?」
ステラも一度かけられた事があるから分かる。あれはチロルの拘束魔法だ。そして今回の被害者は、華々しい活躍を見せたばかりのリュカだった。




