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続けて。魔王は私が倒すから  作者: 遠海 流


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 リュカとファリナの戦闘が始まった。かぎ爪で地面を踏みしめ、炎を吐き出すファリナ。多少暴れても被害は抑えられるだろうと踏んで作戦の舞台に平原を選んだが、すでに甚大な被害が出ていた。先ほどまで緑一色だったはずが、草木は一瞬で灰と化し、見渡す限りの焼け野原。ファリナに作戦が伝わっていないのではないかと不安になってきた。


 リュカは炎を搔い潜り、ファリナとの間合いを一気に詰めた。あれだけの巨体を前にしても臆さないくせに、ステラが少し強く出ると萎縮するのはなぜだろう。まさかドラゴンよりもステラが怖いなんてことはあるまい。


 リュカの斬撃がファリナの胴体にさく裂し、地面が割れそうな唸り声が上がる。見るからに固そうな黒い鱗が、リュカの攻撃によって一部剥がれ落ちた。見た目はドラゴンでも所詮は変身魔法なので、耐久性が本物に及ばないのか。それともリュカの一撃がそれだけ強力なのか。


 「やべえなあいつ。あんまり怒らさないでおこう」


 実際に剣を交えたステラだから分かる。リュカは並大抵の戦士が束になっても勝てる相手じゃない。ミアが絡むとだらしないという最大の弱点を除けば、魔王軍の騎士とも対等かそれ以上に渡り合えるだろう。


 「チロル、お前も気をつけろよ。体触ったり好き放題やってるけど、いつか痛い目に合わされるぞ」

 

 チロルは返事の代わりに鼻息を吐いた。


 リュカはささくれ立った鱗を足掛かりにして、ファリナの体を登っていく。振り落とそうとファリナが体を震わせたが、それは無駄な抵抗だった。


 翼を失ったドラゴンなど巨大な蛇と変わらない。ドラゴンにとってのアイデンティティであり、空の支配者である事の証でもある。その翼を、リュカは切り裂いた。

 

 「うわ、痛そう」


 ファリナが感じた激痛を想像すると、翼の生えていないステラまで背中がちくちくと痛んだ。この調子では、リュカがファリナを圧倒してしまう。作戦を立てた段階ではもっと苦戦してくれるはずだったが、思うようにいかないものだ。


 ファリナは大粒の涙を流しながら、リュカから距離を取ろうともがいている。もはや翼は使い物にならず、情けなく這うようにして逃げていた。


 「チロル、早くミアを攫え!」


 ステラの命令を受け、チロルがミアに飛び掛かった。


 「ひっ、来ないで!」

 

 ミアは防御魔法を展開したが、ドラゴンの全体重を乗せた体当たりに耐えきれず、あっけなく吹き飛ばされた。


 「うぅ…いたぁ…」


 魔力が途切れて防御魔法が消えた瞬間を狙い、チロルがミアの僧侶服の端を咥えた。体には傷をつけないようにという配慮だが、ミアからすればどのみち恐怖でしかないだろう。


 「は、放せ、化け物!リュカ様、リュカ様助けて!」


 ファリナを退散させたリュカが、まさに今ミアを攫おうとしているドラゴンを睨みつけた。チロルの目に恐怖の色が浮かぶ。ファリナが手も足も出ずに翼を切り裂かれたのを見たばかりだ。次の被害者は自分だと嫌でも分かる。


 チロルはミアを咥えたまま、上空に飛び上がった。さすがに空の上まではリュカでも追うことはできない。


 「うぁぁぁぁぁ…」


 ミアの悲鳴が遠ざかっていく。よほどチロルは怯えているのか、必要以上に天高く舞い上がっている。すでにここから見るミアは豆粒サイズだ。


 しかしこれこそ、三人が立てた作戦の理想。ようやくミアがピンチに陥ってくれた。ここからリュカが華麗な救出劇を演じてくれれば、強力な愛の魔法を生み出すことができるはず。


 悪のドラゴンにさらわれたお姫様を、王子様はどう助けるのか見ものだ。


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