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ミアとリュカは互いに身の危険を顧みず、これまでも命を賭して支え合ってきた。両者の間には確固たる愛情があり、どんな魔法でも揺らぐことのない関係がそこに存在すると、ステラはそう確信していた。
しかしどうにも煮え切らない部分がある。あと一歩踏み込めばいいのに、と思う場面に何度も遭遇してきた。特にリュカの態度には問題が多すぎる。魔物にも臆さず立ち向かう勇気ある戦士のくせに、変なところで意気地がない。
「私がこの前、ミアちゃんの背中を押してあげたじゃない?それで関係は進展したと思うんだけど…」
「猫耳生やして、ミアをけしかけたやつな」
「あの二人をうまく利用すれば、エテルノクスを効率的に発動させることができると思うのよ」
「少なくとも私たちが疑似恋愛を続けるよりはマシだろうよ」
「問題はどうやって二人をいい感じにするかよね」
「私としてはリュカに頑張ってもらいたいな。ミアが改めてほれ込むようなきっかけを作れればいいんだが」
見た目が王子様のようなリュカには、ナイトとしてミアを守る立ち位置にいてほしい。そのためにはミアが守られるような状況が必要だが、まさかそのへんの山賊をけしかけて襲わせるわけにもいかない。どうしたものかと考えていると、ファリナがぽんと手を叩いた。
「ステラちゃんの仲間にもう一人魔法使いがいたでしょ。なんだっけ、あの子。ほら、やたら胸のでかい」
「チロルのことか」
「あの子からはロメオさんに似た強い魔力を感じたわ。相当な使い手なんじゃない?」
「魔法のセンスは目を見張るものがあるな。ロメオには及ばないが、優れた魔法使いだと思う」
原動力が性欲であることを除けばであるが。
「私とそのチロルちゃんが力を合わせれば、うまい具合にお膳立てができるかも。ミアちゃんをピンチに陥らせて、そこをリュカちゃんが華麗に守る、みたいな」
「そんなことができるのか?」
「ええ、きっと成功するわ。チロルちゃんを呼びに行きましょう」
宿を探してもチロルの姿がなかった。いつもは呼んでもないのに寄ってくるくせに、こちらから探すといなくなるとはどういう事だ。
「ほかに行きそうな場所はないの?」
「さあ、飯でも食ってるんじゃないか?」
「そこにあるパブは?」
「あいつは酒を飲まないはずだが…」
いや、寿命を削って十五歳老けこんだせいで味覚が変わっているかもしれない。念のためパブを覗いてみると、そこには顔を真っ赤にしたチロルがいた。
「おやおやおや、お二人さんお揃いで。綺麗なお姉さまが並んでいると、こりゃまた壮観でございますね。ちょうどいい酒のつまみになりますよ、ええ。あ、マスター。お代わり!同じので。え、何飲んでたかって?知りませんよ、同じので!」
「チロル、お前も悪い酔い方をするタイプか」
「酔ってませんよ。チロルは酒になんて負けません。魔法使いですから」
ミアなら酔いを一瞬で冷ます魔法を知っているが、あいにくこの場にはいない。あの魔法はステラのためにミアが考え出したオリジナルなので、ファリナにも使えないらしい。
「とりあえず冷や水でも浴びせとけばいいかしら」
ファリナが杖を振ると、バケツ一杯分くらいの水がチロルに降りそそいだ。
「ぎゃっ、つめたっ!」
「酔いは覚めた?」
「なんですか、人がせっかく気持ちよく飲んでるってのに。邪魔するなんて無粋ですよ!」
髪から水を滴らせたチロルがファリナに向かって吠えている。
「チロルちゃんに協力してもらいたいことがあるの」
「チロルは女の子がらみのことでしか動きませんよ。そう簡単に協力すると思ったら大間違いです」
「ミアちゃんとリュカちゃんをいい感じにして、愛の魔法を」
「やりましょう」
「まだ最後まで言ってないんだけど」
「協力しますとも。今のですっかり酔いも覚めました。二人になにをさせるんですか?どんな過激なことでも承りますよ!」




