176
封印を解くことにかけるファリナの情熱は凄まじかった。それほどまでに復活させる価値がヘルガにはある、という事なのだろうが、それにしてもだ。
「げ、なんだその格好」
ファリナが着ているのは、踊り子の衣装だが、それは普通のものよりも格段に露出が多かった。体の一部を隠しているのは、布というより紐に近い。
「こういうのが好きなんでしょう?リュカちゃんから聞いたわ。前に一度キャバレーに連れて行ってもらった時、露出の多い踊り子を穴が開くほど見つめていたって」
「あいつ、そんなことバラすなよ」
「それで、どう?妙齢の踊り子姿は」
ファリナの実年齢を正確には知らないが、ミアの倍はありそうだ。その割には肌艶もよく、見た目だけは上品で楚々とした雰囲気があるので、若く見えることは確かである。
だがそれを加味しても、踊り子衣装に身を包んだファリナを直視するのは辛かった。そもそもそんな露出の多い衣装、どこで見つけてきたんだろう。
「やめろよ、はしたない!」
「こっちだってやりたくてやってるわけじゃないっての。ステラちゃんがとっとと惚れないのが悪いんでしょ」
「淫乱女に惚れるやつだと思われてるのか?心外だな」
愛を深めるどころか、二人の言い合いは激しさを増していった。どんどん仲が悪くなっている気さえする。
「ほら、こんなに胸出してるのよ。ドキッとしなさい」
「ときめきを強要するな。私はそんなちょろい女じゃ…」
「ああもう、じれったい!」
ファリナがいきなり顔を掴んできた。近くで見ても皺ひとつなく、若さを保っている肌が目前に迫る。何をされるのか理解した時には、もう遅かった。
「んぅっ…!」
キスで口をふさがれたステラは、必死にファリナを押し返そうとした。しかしこの僧侶、身長が高ければ力も強い。もしかしたら魔法で身体能力を強化している可能性がある。そうでないと、鍛え抜かれたステラの腕力でびくともしない事に説明がつかない。
「あ、出たわ。エテルノクスよ!」
「嘘だろ…」
無理やりキスされただけなのに、愛の魔法が発動した。一度目よりも大きな火の玉が浮かび上がっている。
「この魔法作ったやつ、愛をなんだと思ってるんだ。体が触れあえばそれが愛だとでも?」
「エテルノクスが生み出されたのは太古の昔だからね。今と当時じゃ価値観が違うんじゃない?」
「魔法って結構適当だよな」
「魔法なんてそんなもんよ。明確な定義もないし、使ってる側からしてもよく分からないわ」
無理やりキスされたことへの腹いせに、ステラはファリナの目の前でゴシゴシと口を拭った。
「ちょっと傷つくんだけど」
「二度とするなよ。分かったか」
「ええ?せっかく手っ取り早い方法を見つけたっていうのに」
封印を解くためにずっとキスをされていては堪らない。他の方法を探さないと。
「あのさあ、私たちが疑似恋愛をしなくてもいいんじゃないか?」
「どういうことよ」
「本物の恋人同士がいるじゃないか。私たちのすぐそばに」




