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 戦闘能力が皆無のミアは、啖呵を切るだけ切ってすぐに後ろに下がった。代わりに獣人姿のリュカを前線に押し出し、倒れるステラに駆け寄る。


 「立ってくださいステラ様。猫ちゃんが時間を稼いでる間に逃げますよ」


 「待って、立てない。足に力が入らなくて…」


 「膝ガクガクじゃないですか。よほどさっきのキスが気持ちよかったんでしょうね!はしたないったらないですよ、もう」


 ミアの肩を借りてなんとか立ち上がったが、ステラとの身長差が大きいせいで、二人ともバランスを崩して倒れてしまった。


 「あー、もー!しっかりしてくださいよ!自分で歩いてもらわないと困ります。私じゃステラ様をおんぶなんてできないんですからね」


 「すまない、もう大丈夫だ。一人で立てる」

 

 「よし、逃げますよ。猫ちゃん、撤収です!」


 斬撃を器用にかわしながら攻撃の隙を狙っていたリュカに、ミアが号令をかけた。


 「ここで仕留めておかないのかにゃあ」


 「勝てる相手じゃありませんよ。リュカ様が一騎打ちで呆気なくやられたくらいです。数はこっちのほうが多くても、力じゃその人には及びません」


 ミアの言う通り、オルタナが擬態したカリンの力は相当なものだ。ステラとリュカの二人がかりでも互角に戦える気がしない。


 だがステラに撤退という選択肢はなかった。


 「私は逃げない。ここで倒さないとダメなんだ」


 「そんなフラフラの状態で言われても説得力ありませんよ。一体あの人との間に何があったか知りませんけど、今は逃げるのが最善策です。恋人と早めに決着つけたい気持ちは分かりますが…」

 

 「違う。あいつはカリンじゃなかったんだ!」


 「カリン様じゃ、ない?」


 オルタナがカリンに擬態していること。そして、カリンがすでに殺されていたことを聞かされたミアは、呆然と口を開けていた。

 

 「それじゃあ、私たちと一緒にいたカリン様は、最初からオルタナという魔物が化けた姿だったと。信じがたい話ですが、それだと辻褄があいます。昨日の晩にステラ様が会ったという私は、オルタナが化けていたわけですね」

 

 「そういうことになるな。ミアのふりをして私を唆し、カリンを選ぶように仕向けたんだろう。ミアが怒って愛想を尽かし、私と二人きりになるまで全部、あいつの想定したシナリオだったんだよ」


 「くぅ…、してやられたって感じですね」


 ミアは心底悔しそうに奥歯を噛み締めた。パーティーの中で頭脳派を気取ってきた分、見事に騙されたことでプライドが傷つけられたようだ。


 「あれ、じゃあ私が正しかったじゃないですか。ステラ様は昨晩私に会ったと言ってましたけど、実際には違ったんですから」


 「いやそれはおかしいだろ。ミアに擬態したオルタナに会ったのは事実なんだし、当時は何も知らなかった。私の主張だって嘘じゃない」


 「世の中にはねえ、正解が二つもある事なんてないんですよ」


 「なにそれ、私に謝れって?」


 「そうは言ってませんが、そう言いたい気分ではあります」


 互いに一歩も引かず、二人は睨み合った。


 「喧嘩してないで戦ってほしいんだけどにゃあ」


 しばらくオルタナと交戦していたリュカの腕には、斬撃による傷がいくつも出来ていた。


 「あいつ、かなり強い。ステラ様の言いたいことは分かるけど、ここは撤退したほうが良さそうだにゃ」


 「これ以上キミたちを戦いに巻き込むつもりはない。決着は私一人で付けるよ」


 「無茶ですステラ様!リュカ様がこてんぱんにやられたのを見てなかったんですか!?」


 あれはあまりにも呆気ない勝負だった。剣技ではステラを凌駕するリュカでさえもあの体たらく。正直勝てる気はしない。


 「助けに来てくれただけでも嬉しいよ。誤解だったとはいえ、ミアを傷付けてしまったことは謝る。リュカもすまなかったな。もし私が殺されたら、二人で仲良く旅を続けてくれ。それから…」

 

 二人との最後の会話になるかもしれないのに、ステラの言葉は最後まで言わせてもらえなかった。


 「ぐあっ…」


オルタナの剣が、ステラの脇腹を斬りつけた。

 

 「ごちゃごちゃ喋ってんじゃねえよ。なんだステラ、その口調。カリンって女の真似か?この女の記憶を覗いたが、ステラはお淑やかで可愛い子って印象しかないみたいなんだが。そうか、猫被ってたってことだな。これだから人間は、つまらん事をするねえ。…おっと」


 だみ声で威嚇しながら飛び掛かったリュカを、片腕で弾き飛ばすオルタナ。


 「んみゃっ!」

 

 頭を岩にぶつけ、リュカは脱力した。 

 

 あっという間にステラもリュカも戦闘不能になり、残るはミア一人だ。


 「ミア、逃げろ!」


 「殺されちゃうにゃ!」


 ミアの耳に声は届いているだろうか。たとえ届いていたとしても、恐怖で足が竦んで動けないのでは意味がない。


 「ひっ…ひぃっ…」


 「おい、ちっこいの。散々生意気なこと言ってくれたな。お前だけは楽に死なせないぞ。さて、どうしてやろうかなあ」

 

 ミアはその場にへたり込み、カリンの姿をしたオルタナを見上げる事しかできなかった。

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