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 「往生際が悪いぞ。ステラが決めたことに口出しするんじゃねえよ。ステラだってお前らが嫌いになったわけじゃない。ただ私といることを選んだ。それだけだ」


 カリンの太い腕が、狼狽するステラを落ち着かせるように強く抱きしめた。


 「違うの、私…そんなつもりじゃ…」


 「いいよ、分かってる。ステラは悪くない。ほらちっこいの。お前もいつまでめそめそしてんだ。みっともない」


 涙と鼻水で汚れた顔を上げ、ミアはカリンではなく、ステラを見た。


 「ミア…」


 「ステラ様が私のこと嫌いじゃなくても…」


 鼻をすすり上げ、ぷいっと顔を背ける。


 「私はステラ様のこと、嫌いです」


 ステラの世界から音が消えた。視界が揺らぐのは二日酔いのせいじゃない。ミアに突き放されたことが、自分の中で受け入れられなかった。


 「おい、そんな言い方はねえだろ。ステラだって悩んで出した答えなんだ。納得いかないからって八つ当たりか?」


 「変な言い訳に使われたことに怒ってるんですよ!私の知ってるステラ様は…、いや確かに言い逃ればっかりしようとする人でしたけど、それでもこんなのずるい」


 言い訳じゃない。昨晩、ミアと会ったのは確かだ。だがなにを言っても今のミアは聞いてくれないだろう。無言を貫くステラに向けられるリュカの目は、美しささえ感じるほどに冷たかった。


 「今すぐにお別れってわけでもないんだからさ、まあなんだ、泣くなよ。出会いがあれば別れもある。それが人生ってもんだ」


 「うるさい、野獣!」


 「獣からレベルアップしてんじゃねえか」


 「もういいです。行きましょう、リュカ様」


 向こうを向いたミアの小さな背中からは、ステラへの強い拒絶を感じた。もう二度と振り返ってくれない。少し憎たらしくも、花のように愛らしいミアの笑顔が向けられることは、永遠にないように思えた。


 リュカが何かを言いかけたが、中途半端に開いた口を閉じて、無言のまま去っていった。


 「いや、私、こんなの望んでない。カリンと一緒にいたかっただけなのに、なんで」


 「人間同士、うまくいかないことも時にはあるさ。ステラ、お前の目的は魔王討伐だろ?あいつらと仲良く旅することじゃないはずだ。せっかくできた仲間とあんな形で終わってショックかもしれないが、元気出せよ」


 カリンといられることは嬉しいはずなのに、慰めの言葉すら空虚に聞こえてくる。マナーや金遣いに口うるさいミア。普段は凛々しいくせに、妙なところでか弱いリュカ。もうあの二人が隣にいないと思うと、心に穴が空いた気分になった。


 「さあて、ようやく二人きりになれたな。ステラ、顔上げてこっち見てくれ」


 キスでもするつもりなら、今は最悪のタイミングだ。相手がカリンでも拒むつもりだった。


 唇を結んでカリンの顔を見上げる。


 「カリン…?」


 カリンは口元をゆがめ、嘲りの表情を浮かべている。まるで泣いているステラをバカにするかのようなその顔に、ステラの心がざわめき立った。おかしい。カリンがこんな顔するはずない。優しく介抱してくれた昨日のミアといい、本人らしからぬ言動が続いている。 


 カリンがナイフを抜き、ステラの首元に突き立てた。

 

 「ぐっ⁉」


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