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 部屋の外が暗い。一体何時間眠っていたのだろう。寝汗を大量にかいたらしく、肌着が背中にぴたりとくっついている。しみ出た汗は、ベッドのシーツも濡らしていた。


 「お、ようやく起きたか。おはよう、ステラ。つっても、もう夜中だけどな」

 

 カリンと額を合わせているうちに眠りに落ち、気が付けば夜中。ということは、少なくとも五時間ほどは眠っていたことになる。


 「そんな寝てたんだ…。ごめん、ベッドにすごい寝汗が」


 「気にすんなって。それより具合は?」


 熱に浮かされたような感覚は消えていた。少しまだ頭がぼうっとするが、だいぶ体調はマシになってる。


 「おかげでだいぶ良くなったよ。あ、あのさ、カリン」


 「ん?」


 「私寝てるとき、変じゃなかった?」


 「いや、何も?変ってどういうことだよ」


 「そ、それならいい。なんでもない!」


 寝顔を見られるのは別にいいし、これが初めてではない。ステラが気にしたのは、いびきをかいていなかったということだ。ミアが我慢の限界を迎え、別室で寝るようにと言われてしまったステラのいびき。自分で聞くことができないが、相当にうるさいのだろう。リュカも口にこそ出さないが、部屋を二つ取る事になった時、嬉しそうな顔をしていたのを見逃さなかった。二人の安眠を妨害してきたいびきをカリンの前でかいていたとしたら最悪だ。今すぐ塵になって消えたい。


 カリンは何も無いと言っているが、それは彼女なりの気遣いなのか。それとも本当に静かに寝ていたのか。真相は分からない。


 ステラの看病で疲れたのか、カリンはしきりに欠伸をしていた。


 「カリンも寝たら?私ならもう平気だし」


 「そうだなあ。じゃあ一寝入りするか」


 ベッドを譲ろうと立ち上がると、カリンに腕を捕まれた。


 「おいおい、どこ行くんだよ。一緒に寝るんだろ」


 「いや私はたっぷり寝たから」


 「どうせ今の時間なんて行くところないんだしさ。ほら来いよ。ちょっと狭いけど、ぎりぎり二人で寝られるだろ」


 今朝のミアとリュカを思い出した。あの二人は一つのベッドを一緒に使っていたが、かなり窮屈そうだった。カリンが泊っているこの宿のベッドは、それよりもさらに一回り小さい。


 「カリン一人で寝なよ。私はそのへん散歩でもしてくるから」


 「ダメだ。まだ熱が引いただけなんだし、体調が万全になるまでは休め」

 

 有無を言わせない強い力で引っ張られると、抵抗できない。ステラはベッドに引きずりこまれた。三年と四か月ぶりに感じるカリンの体温は、懐かしい暖かさだった。顔を向かい合わせた状態で寝るのは恥ずかしいので、カリンに背中を向ける。


 「なーんでそっち向くんだよぉ。こっち向いてくれよ、ステラ。おーい。あっ、こいつ無視するつもりだな。まったく、貞淑というか気が小さいというか、そういうとこ昔から変わんねえな」


 朝が訪れるまでの時間は、永遠のように感じた。カリンの寝息を聞きながら、日が昇るのを今か今かと待ちわびた。心臓の高鳴りを抑えるのに精一杯で、とても眠れるわけがない。ようやく小鳥が囀り始める頃になると、カリンが目を覚ました。


 「ふあ…良く寝た。ステラはちゃんと休めたか?」


 誰のせいで一晩中起きていたと思っている。欠伸を噛み殺して、ステラは頷いた。

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