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 「ステラ様、失礼を承知でお聞きします。この人一発殴ってよろしいですか」


 ミアをバカにされた事に相当腹を立てているようだ。体のサイズを小さいと揶揄うまでは我慢できたが、女性として魅力がないという言葉が、リュカの怒りの琴線に触れた。


 ステラが仲裁に入るよりも前に、カリンが立ち上がった。


 「おお、なんだやんのか?お前らの方こそ、ステラのことガサツだとか粗暴だとか言いやがったくせに。自分の恋人貶されたら怒るとか、ずいぶん都合のいい性格だなぁ?」


 それに関してはミアとリュカばかり責めるわけにもいかない。実際二人が普段見ているのは、酒癖が悪く暴力的なステラなのだから。


 「ほんっとに…、ステラ様はあなたのどこが良かったんでしょうね!」


 「言ってくれるじゃねえか。よし、表出ろ。殴りたきゃ殴らせてやるよ。ただし、実力で私に勝ったらな」


 二人の喧嘩は店内の注目を集めている。獣のように猛々しい勇者と、絵画のような美しさを持つ戦士。まさか互いの恋人を貶されて発生した争いだとは誰も思うまい。


 「ミア、二人を止めないと!」

 

 「リュカ様が私のためにあんなに怒ってくれてる。今とっても幸せな気分です」


 「バカ野郎が!言ってる場合か!」

 

 「あっ、いつものステラ様だ」


 しまった。慌てて口を噤み、恐る恐るカリンのほうを見た。幸いにもリュカとのにらみ合いに忙しく、今の発言は聞かれていなかったらしい。


 決闘の舞台に選ばれたのは、店から少し北に行ったところにある広場だった。対峙する二人の周りに見物客が集まってくる。もっと人目につかないところでやればいいものを、なぜ衆人環視のもとで行うのか。


 「リュカ、って言ったっけ?お前は剣を使えよ。私は素手でいい」


 カリンは腰に差した剣を地面に放り、体の前で拳を構えた。


 「舐めるのも大概にしてもらえますか。私はこれでも騎士団の副団長を務めていたんです。剣の腕は立つほうですよ。素手の相手となんて、勝負になりません」


 「へえ、騎士団。ステラ、それ本当なのか?」


 「うん、リュカは強いよ。私もこの前戦ったけど、単純な剣の腕じゃ敵わなかった」


 「ステラを負かすとは、なかなかやるじゃねえか。だけど私は素手で行く。その代わりお前、負けたら二度とステラを悪く言うなよ」


 「…ほんとにそれでいいんですね?つい力加減を間違えて、腕を斬ってしまうかもしれませんが」


 「いいから始めるぞ。かかってきな」


 昼の訪れを告げる教会の鐘。それがリュカとカリンの決闘開始の合図となった。


 リュカの太刀筋は絶妙に読みにくい。ステラが戦った時も、どこから攻撃が繰り出されるのか予測がつかなかった。迷っている間に重たい一撃が炸裂する。それがリュカの戦い方だ。


 しかし、どんなに強い攻撃も繰り出さなければ意味がない。カリンは重心を低くしてリュカの胴体に飛び掛かり、剣を持つ腕を殴りつけた。自分と密着している相手に剣を刺すのは、体勢的にも困難だ。さすがのリュカも反応できなかったようで、カリンを引き離そうと必死になっている。それが大きな隙を生んだ。

 

 カリンの頭突きが、リュカの顎に叩き込まれた。


 「がっ…」


 リュカが白目を剥いてのけ反ったところへ、腹に一撃。ステラの剛腕を上回る筋肉質な腕から繰り出された突きが、リュカにめり込んだ。


 勝負あり。決着までにかかった時間は、わずか数秒だった。

 

 「お前、よくそんなんでナイト気取ってんな。弱っちい。その実力じゃ、ちっこいのを守ってやれないだろうな」


 「リュカ様、しっかり!今治癒しますから!く、来るな化け物ぉ!」


 倒れたリュカに駆け寄ったミアが、片手で治癒魔法を使い、もう片手でカリンを追っ払おうと、しきりに腕を振った。


 「もう勝負はついたんだから、なんもしねえよ。けどこいつに負けるなんて、ステラもまだまだ修行が足りないな。私が鍛えなおしてやるよ。また二人で鍛錬しよう」


 「今はリュカ様の心配をしてください!ステラ様、なに嬉しそうにしてんですか!」

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