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 安堵と後悔の入り混じった涙は、なぜか甘い味がした。

 

 「不安にさせてごめんな。でもこうして再会できたんだ。誤解も解けたことだし、改めて私たち、やり直さねえか?」


 「逃げたこと、許してくれるの?」


 「許すも何も、別に怒ってねえよ。すげえ心配はしたけどな。ステラみたいな子が一人でいたら危険だ。さぞかし色んな男に声かけられたんじゃないか?」


 カリンのもとから逃げ出し、一人で旅を始めてからというもの、一度たりともそんな経験は無かった。道で酔いつぶれているステラに下卑た視線を向ける男はいたが、それは若い女の体が目当てなだけ。ステラに恋愛感情をもって接してきた男など、一人もいない。


 「まっさかあ。ステラ様がもてるわけないじゃないですか」


 再びミアの脛を蹴ろうとしたが、小賢しくも足を引っ込められてしまった。

 

 カリンは恋人という色眼鏡を通しているので、ステラのことをより美化して見ている節がある。しかしカリンの言うこともあながち的外れではない。一緒に旅をしていたころは、今と同じように前髪を下ろした見た目で、言動には粗暴さの欠片もなかった。困ったことに、それでは男が寄ってきてしまうのだ。カリンが守ってくれていた頃は良かったが、もう誰も男を追っ払ってくれる人はいない。だからステラは、髪を束ねて少しでも猛々しい雰囲気を出そうと努力した。言葉の話し方、所作、すべてカリンの真似をして、魅力のない女になろうとしたのだ。

 

 ミアたちの知るステラは、いわば作り物。最愛の人物であるカリンを模倣して作られた、偽りの人格だった。


 「おい、ちっこいの。お前さっきからずっとうるせえな。その減らず口利けねえようにしてやろうか」


 「そのちっこいのって呼び方、やめてもらえます?ミアと呼んでください」


 「パーティーに僧侶を入れるのはいいけど、なんでこんなやつなんだ?もっと使えそうなの、他にいただろ」


 「ミアとの出会いは、まあ偶然みたいな感じで」


 道中で魔物を軽々となぎ倒すステラを見て、勝手に盾として利用しながらこそこそ付いてきたミア。それが彼女との出会いだった。あの頃はステラを尊敬のまなざしで見上げ、勇者様と慕っていたというのに、今では生意気な口ばかりきくようになってしまった。どこで教育を間違えたというのだろう。


 「ステラ様、まず否定してください。あなたの仲間が、こんなやつ扱いされてるんですよ。ちょっと、なんで黙ってるんですか!」


 「ぴーぴーうるせえな、ちっこいの。お前さ、そもそも役に立つのか?見たところ大した魔力もないちんちくりんにしか思えないが」


 「怒りますよ!いえ、もう怒ってますが、さらに怒りますよ!」


 「おおう、怒れ怒れ。なんも怖かねえよ」


 小動物が獣に吠えるようなもので、ミアの抗議はカリンにまったく届いていない。相手にすらされていないと悟ったミアは、すっかりむくれてしまった。


 「あの、ミア…」

 

 「なんですか、話しかけないでください。ステラ様は私よりカリン様が大事なんでしょ。だって全然守ってくれないし!」


 「そういうわけじゃ」


 「ステラ様の乱暴なところも嫌いじゃなかったんですけどね。今のステラ様には何の魅力も感じません。あの時見た勇者の姿は幻だったのかも」

 

 一度拗ねたミアが機嫌を直すのには時間がかかる。これはまた面倒なことになった。


 「なんだよ、見た目だけじゃなくて中身もガキっぽいなあ。お前こそ、女としての魅力ゼロだよ」


 テーブルに亀裂が走った。もちろんミアにそんな力はない。ステラもカリンも拳を叩きつけたりなどしていない。とすれば、犯人は一人だ。

 

 「黙って聞いていれば…」


 リュカの額に青筋が浮かんでいる。こんな表情を見るのは初めてだった。

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