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51_マッツ支部長

じっ…………


「えっ……?!」

起き抜けに間近で目が合って驚いてしまった。

しかも、見慣れない顔だったので余計に驚いた。


「……なんだ、ナルちゃんか。

目が覚めちゃった?」

「ん……。

なので観察してました。」

「……取り敢えず、あっちで話そうか?」

いろいろと聞きたい事はあったが、すぐ横ではヴェロニカさんとセレナさん、そして他の皆も寝ている。

ボクらは少し離れた場所に移動した。


子供が早くに目が覚めるのは仕方ない。

ボクで良ければ、皆が起きるまでの話相手になろう。


「……それで、なんでボクを観察してたの?」

「クロ、様?は、わたしと歳が近いのに、セレナさん達のリーダーをしてる。

なんでかな、って。」

「「様」は要らないよ、クロで。」

「クロ。」

「はい。

で……、リーダーみたいな立ち位置なのは……、まぁ、成り行きかな。

今はボクがこうしたいと思った事に、皆が協力してくれている形だから、そう見えるのかもね。」

「……こう、したい?」

「うん。

今、とあるエルフ達と揉めてるんだ。

だから、仲間を守るために決着をつけたい、そんなとこかな。」

「……。」


ボンヤリと語ったせいか、ナルちゃんはピンときていないようだ。

まぁ、詳しく説明する必要は無いかな、話題を変えよう。


「……ナルちゃんは、何かやりたい事は無い?」

「え……、あの、ヒトを探したい、とか。」

おや、ちょっと意外だ。

ナルちゃんには探したいヒトが居るのか。


「へぇ……、それはベルモンドで?」

「さぁ……、分からなくて。

でも帝都で見たヒトが居るかも、で……。」

「そうなんだ。

ボクらは帝都から来たんだけど、聞いてみて良い?

名前とか。」

「あの──」


「おい、クロー!!

隠れてコソコソと二人きりで喋っているとか、良い度胸だな?」

ナルちゃんの言葉に被せるように、ヴェロニカさんが言ってきた。


「へ……?」

急なヴェロニカさんの剣幕に、一瞬思考が止まってしまった。


…………。


「──えっ?!

い、いや、違いますよ?!

皆を起こさないように配慮して隅に居ただけなんですけど?!

浮気とかそういうのじゃないですからね!」

「ホントか……?」

「でも、クロー君とナルちゃんって、歳も近いしお似合いに見えちゃうんですよね……。」


増えた?!

ヴェロニカさんだけでなく、セレナさんまで現れ、ボクに疑いの眼差しを向けてきた。


「エマオさんと話してた時も同じ事を言われましたけど、ボクは二人以外のヒトと浮気なんてする気無いですからね?

不安に思ってしまうという気持ちは否定しませんけど、そんな事は起き得ないと断言はしておきます。」

「……。」

「……分かった。」


そんなちょっとしたトラブルも起きたが、予定通りボクらはベルモンドの上町へと向かった。


**********


下町で聞いた通り、上町まで時間は掛かってしまった。

魔王教支部の場所を聞きつつ、やっと到着した今の時刻はもう正午を過ぎようかという時間だ。

そして、ようやっとボクらは魔王教ベルモンド支部を見付けた。

何故探し歩く必要があったかと言うと、エマオさんもザーレンさんも来た事が無かったそうだ。


ちなみに支部を訪れたのはボク、リック、エマオさん、ザーレンさん、レインさんの五名だ。

マッツ司祭はハイエルフの里の関係者である疑いがあるため、ヴェロニカさんを同行させるのは止めた。

そうなるとセレナさん、ティアナさん達も護衛兼ナルちゃんを見ておく要員として下町に残ってもらう事にしたのだった。


「御免!

帝都より訳あって査察に参った。

マッツ支部長は居られるか。」

「……これはザーレン殿。

そしてエマオ様まで。

御教主自らが、わざわざこのベルモンドまでおいでになるとは、どうされましたか?」


講堂の様な場所に入るなり、ザーレンさんはその場に居る全員に聞こえる様に声を張り上げた。

ザーレンさんの声にいち早く反応したのは、人族であるボクの感性から見ても壮年に見えるエルフであった。

声もどこか落ち着いた様子で、渋い美形中年といった感じである。

思った通り彼がマッツ支部長らしい。

こちらの司祭と話していたマッツ支部長に人払いを頼み、ボクらは彼と話す事にした。


「……それでご要件とは?

それと、そちらの二人は?」

「うむ、実はマッツ支部長、君に背任の疑いが浮上している。

それを直接問い質すため、エマオ様御自らがわざわざ足を運ばれたのだ。」

「背任とは、なんとも心外ですな。

私は信義に反する事などしてはおりませんが。」

マッツ支部長は自分に嫌疑が向けられていると聞いても落ち着いている。


「では、「翼の魔王」様奉納金については、全額余すこと無く魔王様にお渡ししている、と?」

「……何だね君は?

藪から棒に不躾な事を。」

ボクが横槍を入れると、マッツ支部長は視線だけこちらに向けて応じた。


「マッツ支部長、彼が告発者のクロ君だ。

「翼の魔王」様とも面識あるらしい。」

「……魔王様と?」

これまで表情を崩さなかったマッツ支部長が、僅かに眉をひそめる。


「はい。

ご紹介に預かりましたクロです。

魔王アリアさんと二度お会いした事があります。

お会いした印象では、贅沢をなさる方には見えませんでした。」

「……ただの二度、お会いしただけなのだろう?

それで相手の本性を全てが分かるわけでもあるまい。」


「ふぅん……。」


「──っ?!

君、いささか失礼ではないか?

いきなり感知系魔術を使うなど。」

「「……??」」


やっぱりエルフ、素の魔力感知能力は高いようだ。

ボクが『空間把握』と『魔力感知』を使うと、直ぐに反応して見せた。

それに気付かない皆はポカーンとしている。


「いえ、すっ恍けるタイプの方の様ですので、シレッと何かされる可能性もあります。

警戒するのは当然ですよ。

それにしても──」


「……ん?」


「気難しくて会話もままならない、ですか……。」

「……何を言うか。

初対面の者を相手に失礼とは思わんのかね。」

あ、ちょっとイライラしてきている気がする。

それでも表情と声のトーンに出さないのは流石と言おうか。


「おや?

もしや、貴方の事を言ったと思いましたか?

その様な自覚があるのですね。」

「む……?」

「今言ったのは、貴方が、「翼の魔王」様を形容した言葉ですよ。」

「……?!」


「ちなみに、ボクは「翼の魔王」様に対してその様な印象は持ちませんでした。

明るく快活で朗らかな方と思っています。

……しかし支部長殿には、それをそのまま伝えては困る事情があったのですよね?」

「……何が言いたい?」

「交渉し易い、話の通じる相手では、金額を上げる理由にはなりませんし、そんな気さくな魔王様の相手なんて誰にでも出来る、それでは貴方にとって都合が悪かったのです。

気難しい相手だと吹聴する事で、取り入る為に金が必要だという理由で奉納金の額を上げる、または維持することが出来る。

気難しい相手なのだから自分以外の者では対応出来ない、としておけば、他の者はおいそれと魔王様と対話しようと思わない。

結果、魔王様が気さくな方で、お金も大して要求しない方である事もバレない、という訳です。」


「……随分と妄言を語ってくれたものだ。

しかし、そもそもそんな事を私がする理由が無いと思うが?」


「理由なんて明白でしょう?

ボクの推測が正しければ貴方は、本来の奉納金の一部を自分の懐に入れる事が出来るじゃないですか。

魔王様は多額のお金を要求しないのですから、余った分は自由に出来る訳です。

そのお金を使って、主にコラペでの魔王教の活動を指示・支援する事も可能、という事ですね。」

「な……?!」


「ボクらはコラペとカダーを旅する中で、「魔王教」が邪教徒として、あるいは国賊の手先として活動しているのを見て来ました。

しかし、帝都の魔王教本部を見たら、そんな他国の現状とは打って変わって誠実で清廉な活動をしていたのです。

これはおそらく、何処かで教義を歪めて広めている者が居るのだと思いました。

……マッツ支部長、貴方ならそれが可能という訳です。」


「……なんとも馬鹿げた推測だ。

私は他国の様子など知らないし、魔王様へは誠実に対応している。

私の言葉が嘘だと言うなら証拠を出したまえ。」


「……証拠は、ありません。」

「であろう?

この私に罪を──」

「──しかし、証人なら居りますよ。」

「…………なに?」

ボクが「」


「ということで、もう降りて来て良いですよ、アリアさん。」

ボクは教会の高い講堂の天井付近を向いて声を掛けた。


「「──っ?!」」

ボクに釣られて視線を向けた一同は、天井に近い梁に腰掛けた人物を目にして驚いている。


「あ、そう?

なんか深刻そうな話をしてたから声を掛けられなかったんだよね。」

そう呑気に応えたのは、他ならぬ「翼の魔王」アリアさんであった。


うん、さっき用心のために使った感知系魔術に反応があって気付いていたんだよね、誰か居るって。

でも、そんな所に居る人物なんておおよそ予想できるよね。

マッツ支部長は表情には出さないけれど、内心は少なからず動揺していたらしい。

結果、魔王様に気付かなかったようだしね。

エルフの素の魔術感知能力なら、きっと気付けた筈だし。

マッツ支部長につきまして

 外見:マッツミケルセン 様

 cv.中田譲治 様

で脳内補完してお楽しみいただければ幸いです。

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