発見
「何をしているのですか?」
黒井と金持が顔を上げると、水差しを落とした徳兵衛の主遣いが入り口に立っていた。こぼれた水が、畳一面に水面を作り、二人の姿が逆さに映っていた。黒井と金持は情を交わしかけた自分たちの姿から目を逸らせずにいた。
「黒井さん、今夜、あの場所へ来なさい」
主遣いは、足音を強く響かせながら部屋を後にした。
「あかん、あかんあかんあかんあかん」
黒井は身を起こして、慌てて着物の襟を正した。
「黒井はん落ち着いて、」
「落ち着いていられるか、僕らは何度も掟を破ったんやぞ」
黒井は乱れた布団を、落ち着かない手つきで整えた。その様子を気にかけた金持も着物を正し、黒井を抱きしめた。
「落ち着いて黒井は……黒井さん、落ち着いて」
「…………」
黒井の鼻腔いっぱいに竜胆の香りが広がった。黒井の腕が金持の背に回ったとき、力いっぱい抱きしめ返した。
「苦しいわ、黒井はん」
「確かに、俺らは掟や関係を危うくさせとる。でも、俺は黒井はんに……」
黒井は過去のあの二人を思い出した。金持に回した腕を離し、肩を押して突き放した。
「……もう今日は、部屋に帰りなさい」
「……」
金持は何か言いかけた唇を結び、黙って部屋を出ていった。黒井はまた布団を丁寧に整えた。屈めた腰を上げたとき、まだ竜胆の香りが残っていた。




