第三話 最初の仕事
二話の内容を変更しています。
変更前を読んだ方は、改めて読み直していただけたらとと思います。
初めての依頼に、ぼくは薬草採取を選んだ。
「この薬草を十本、夕方までに採取してください。場所は草原から森の入口付近です。ただし、魔物が出ることもありますので、無理はしないでくださいね」
受付の女性に説明され、ぼくは元気よく返事をした。
街を出ると、草原には見たことのない植物がたくさん生えていた。
ぼくは依頼書に描かれた薬草の絵を見ながら、一つずつ探していった。
しかし、似たような草が多く、見分けるのに時間がかかる。
ようやく見つけたと思ったら別の植物だったり、根を傷つけてしまったり。
「うーん……こっちかな?」
何度も迷いながら、なんとか二十本ほど採取した。
夕方、街へ戻って受付に確認してもらうと、二十本のうち十本だけが正しい薬草だった。
「こちらの十本は納品できますね。依頼達成です」
「よ、よかった……!」
報酬を受け取ったぼくは、胸を撫で下ろした。
失敗はしたけれど、依頼は達成できた。
冒険者としての第一歩は、順調だ。
そう思っていた。
「サイカさん、今回は問題ありませんでしたが、森に入る場合は魔物への警戒が必要です。できれば、ほかの冒険者とパーティを組むことをお勧めします」
受付の女性は、優しく教えてくれた。
「パーティ、ですか……」
「はい。特に回復魔法を使える方は、仲間と協力することで力を発揮できますから」
ぼくは、少し考えた。
誰かと一緒に冒険する。
それは楽しそうだ。
でも、知らない人と組むのは少し怖い。
あの酒臭い四人組のことを思い出し、ぼくは首を振った。
「まずは、もう少し街に慣れてからにします!」
受付の女性は、微笑んでうなずいた。
その日から、ぼくは街中の依頼を中心に受けることにした。
荷物運び、倉庫の整理、商店の手伝い。
地味な仕事ばかりだったけれど、おかげで街の地理には詳しくなった。
そして、数日後。
冒険者組合の食堂で昼食を取っていたぼくは、再びあの四人組に遭遇した。
「おい、嬢ちゃん!」
ゴゾウが手を振ってきた。
ぼくは思わず身構えた。
「……何ですか?」
「お前、まだ街中の仕事ばっかりやってるのか?」
「そうですけど、何か問題でも?」
「いや、問題ってわけじゃねえが……」
ゴゾウは困ったように頭をかいた。
「森に行くなら、魔物のことくらい調べとけよ。薬草採取だって、場所によっちゃ魔物が出るんだからな」
「そんなこと、分かっています!」
「分かってるならいいんだが……」
「ゴゾウ、だから言い方!」
ロプニが頭を抱えた。
シミーは酒を飲みながら、ぼくを見た。
「まあ、街中の仕事で地理を覚えるのは悪くない。焦る必要はないぞ」
「……え?」
思いがけない言葉だった。
シミーは、面倒くさそうに続けた。
「自分の実力も分からないうちに森へ行くより、ずっとましだ。仕事を選ぶのは悪いことじゃない。自分にできることを知っておくのも冒険者の仕事だからな」
ワタールがうなずいた。
「そのとおり。あとは、街の外に出るなら帰る時間を決めておくこと。日が暮れる前に戻れないようなら、依頼を諦める判断も必要だ」
ぼくは、少しだけ驚いた。
この人たち、意外とまともなことを言う。
「……ありがとうございます」
小さく頭を下げた。
するとゴゾウが、にやりと笑った。
「おう! 分かったなら、酒でも飲んでいけ!」
「ぼく、まだ仕事中です!」
「なんだよ、付き合いが悪いな!」
「成人前じゃなくても、仕事中に酒を勧めるな!」
ロプニの怒鳴り声が食堂に響いた。
周囲から笑い声が上がる。
ぼくも、思わず笑ってしまった。
初めて会ったときは怖い人たちだと思ったけれど、少しだけ印象が変わった。
ただし、近くにいると面倒なのは間違いなさそうだった。




