第二話 琥珀色の歓迎
二話目になります。
あげた後に続きの内容と整合がある取れなかったので設定を内容を変えたので本文が変わってます。
村を出発して二日目の午後。
ぼくは、目的地の街にたどり着いた。
高い石壁に囲まれた街は、村とはまるで違っていた。
大きな荷馬車が行き交い、露店には見たこともない食べ物が並んでいる。武器を腰に下げた人や、見慣れない装備を身につけた人も大勢いた。
そのなかには、もちろん冒険者もいた。
「すごい……!」
思わず声が漏れた。
ここでなら、ぼくも冒険者になれる。
ぼくは安い宿を探して一泊し、翌朝、街の中心部にある冒険者組合へ向かった。
大きな建物の扉を開けた瞬間、喧騒が耳に飛び込んできた。
依頼を相談している人。
報酬を受け取っている人。
酒を飲みながら大声で笑っている人。
ぼくは胸を高鳴らせながら受付へ向かった。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「冒険者の登録をお願いします!」
受付の女性が書類を差し出した。
名前、年齢、使用できる武器や魔法。
ぼくは慣れない手つきで記入していった。
サイカ。十八歳。回復魔法が使えます。
「登録手続きはこれで完了です。ただし、初めて登録される方は、まず仮登録となります」
「仮登録?」
「はい。こちらの石板をお渡しします。街中の依頼や、鉄級下級相当の依頼を受けていただき、一定の実績を積んでください。五件の依頼のうち四件以上を達成すれば、鉄級下級への昇格審査を受けられます」
受付の女性は丁寧に説明してくれた。
「最初から難しい依頼を受けることはできません。冒険者としての経験を積むための制度です。無理をせず、少しずつ慣れていってくださいね」
ぼくは石板を受け取った。
まだ正式な鉄級下級ではない。
けれど、冒険者になるための第一歩を踏み出したことに変わりはない。
「はい! 頑張ります!」
そのときだった。
「おい、嬢ちゃん」
横から大きな声が飛んできた。
振り向くと、酒瓶を片手にした大男が立っていた。
その後ろには、剣士らしい男、魔法使いらしい男、短剣を腰に下げた男がいる。
四人とも顔が赤かった。
「お前、新人か?」
「は、はい。今日、登録したばかりですけど……」
「そうかそうか! 新人か!」
大男は、なぜか嬉しそうに笑った。
「なら、まずは酒だ!」
「……はい?」
「ゴゾウ、いきなり何を言ってるんだ」
剣士が呆れた声を出した。
「だってよ、ロプニ。こいつ、どう見ても世間知らずだろ。そんな奴が一人で森に行ったら、あっという間に魔物の餌だぞ」
「だったら普通に説明すればいいだろうが」
「説明? 酒を飲みながらのほうが頭に入る!」
「お前の頭に入ってるのは酒だけだろ」
魔法使いの男がため息をついた。
「シミー、お前も何か言えよ!」
「面倒だ。ワタール、あとは任せた」
「俺に振るなよ。……嬢ちゃん、武器は?」
斥候らしい男が、ぼくをじっと見た。
「ナイフなら持っています。それと、回復魔法が使えます!」
四人の表情が変わった。
「回復役?」
「おいおい、そりゃまずいだろ」
「まずいって、どういう意味ですか?」
「いや、だからだな……」
ゴゾウが言葉を探すように頭をかいた。
「新人の回復役が一人で森に行ったら危ねえだろ! お前、死にたいのか!」
「死にたくなんかありません!」
「だったら、もうちょっと考えろ!」
「ぼくだって考えてます!」
周囲の冒険者たちが、こちらを見始めた。
ぼくは四人に囲まれ、責められているような気分になった。
せっかく冒険者になろうとしているのに、どうしてこんなことを言われなければならないのだろう。
「もういいです!」
ぼくは声を上げた。
「ぼくは自分で考えて冒険者になるって決めたんです! 誰にも迷惑をかけるつもりはありません!」
四人は、ぽかんと口を開けた。
「お、おう……」
「いや、そういう意味じゃなくてだな……」
「ゴゾウ、だから言い方を考えろって言っただろ」
「俺のせいかよ!」
「全員のせいだろ」
ワタールが冷静に突っ込んだ。
そのやり取りを最後に、ぼくは受付へ向き直った。
四人が何者なのかは分からなかったけれど、少なくとも、ぼくが歓迎されていないことだけは分かった。
その場を離れるとき、背後から声が聞こえた。
「……あの嬢ちゃん、森に行くつもりだったよな?」
「回復役だって言ってたな」
「初日に死なれちゃ、酒がまずくなる」
「じゃあ、しばらく様子を見るか」
「お前ら、仕事の依頼を見ろよ。酒代がなくなるぞ」
ぼくは、その会話の意味を考えることもなく、掲示板へ向かった。
この四人が、後になって自分を何度も助けてくれることになるとは、夢にも思わなかった。
四人のパーティ名は「琥珀の雫」。
その由来は、彼らが酒を飲みながら口をそろえて言う言葉にある。
彼らにとって、酒はただの嗜好品ではなかった。
仕事を選ぶのも、報酬を気にするのも、面倒な依頼を避けるのも、すべては美味しい酒を飲むため。
ただし、その目的を達成するための仕事だけは、驚くほど真面目にこなす。
そして、酒が入ると、せっかくの親切心まで台無しにしてしまうのだった。




