第二十四話「止まらない警告」
翌朝。国王の名で、両家に対立の事実はないという声明が各地へ送られた。同時に、ガーダリン侯爵とディフォン公爵も共同で書状を出した。兵を増やす必要はない。街道の過剰な検問もやめる。疑問があれば直接問い合わせるように。
「これで収まればよいのですが」
マリアナが言う。
「収めてもらわないと困る」
父が答えた。さらに両家と関係の深い貴族たちも王宮へ呼ばれ、双方に争う意思がないことを直接確認した。最初は警戒していた者たちも、二人の当主が並んで話しているのを見て、ようやく兵を元の配置へ戻すことに同意した。
「これなら、ひとまず大丈夫そうですわね」
会議を終えたマリアナが言う。
「問題は、最初の情報がどこから出たかだけだ」
ディフォン公爵が答えた。
「そちらは政務院で調べています」
宰相が言った。その直後だった。
「失礼いたします!」
若い役人が駆け込んでくる。
「北西街道へ向けた新たな警戒通達が、今朝王都を出たことが判明しました」
部屋の空気が変わった。
「内容は?」
「ディフォン公爵家と関係の深い二家が兵を集めているため、ガーダリン侯爵家側は警戒を継続するように、と」
ディフォン公爵が立ち上がった。
「誰が出した?」
「王都政務院からの正式な通達とされています」
宰相が書状を受け取る。
「いつ王都を出た」
「本日の早朝です」
国王が警戒解除を決めたあとだった。マリアナは書状を見つめる。これまでのものなら、古い情報が残っていた可能性もある。けれど、これは違う。
「今朝の決定を知った上で出していますわね」
「ああ」
ラドルフも頷いた。宰相の表情から、いつもの穏やかさが消えた。
「政務院からの発送を一度すべて止めなさい。私が確認するまで、一通も出すな」
「はっ」
役人が走っていく。
「もう間違いではありませんわね」
マリアナが言った。
「この騒ぎを終わらせたくない方が、王都にいらっしゃる」
「それもかなり内側だ」
ガーダリン侯爵が言う。今朝決まったことを知り、その直後に正式な通達を出せる人間。旅先で何度も耳にした噂の始まりは、思っていたよりずっと近くにあるらしかった。




