第2話 人気で国が滅びるとは
その夜、公爵邸に集まった二人の前で、セバスが調査の結果を告げた。
「原因が判明いたしました」
「何だ」
「王国内の魔力消費量が、ここ半年で異常な増加を示しております」
「魔物の侵攻か?」
「いえ。国民の皆様による魔力放出です」
「……何?」
「悪役ごっこの際に、威圧感を演出するため、皆様が無意味に魔力を放出しておられるようで」
「どの程度だ」
「王国全体の魔力消費量の、約七割が」
「七割!?」
セバスは、淡々と資料をめくった。子どもたちは悪役の台詞を叫びながら魔力を放ち、衛兵は巡回中に意味もなく黒いオーラを纏っていた。商人は店の宣伝で演出を繰り返し、貴族たちは威厳を示すため、毎晩身体を光らせていた。老人の炊き出し団まで、「黒き魔力のスープ」と称して鍋に魔力を注いでいる。
「誰にも悪意はございません。ただ、全員が格好をつけておられるだけです」
「それが一番たちが悪い」
魔力脈は、使われた分だけ細っていく。その乱れが農地を汚し、魔物を活気づけ、魔導式の医療設備を狂わせていた。光る土も、頭痛も、相場の高騰も、すべてが一本の線でつながった。
ルシアンは額を押さえた。
「……国民全員が、悪役に憧れていたというのか」
「はい。大変な人気でございます」
「人気で国が滅びるとは、どういうことだ……」
カイルが、乾いた声で笑った。
「元をたどれば、悪役に憧れた俺たちが筆頭だな」
「なお、お二方の演出も、王都の消費量の上位に計上されております」
「黙れ、セバス」
「禁止令を出すか」
「出した瞬間、悪役ごっこは禁じられた悪事になる。国中が燃え上がるだけだ」
「根本の手当ては、あとだ。今は、目の前の飢えと魔物が先だ」
二人は、悪役ごっこの後始末を、ひとまず棚に上げた。




